総務省統計局が、全国の10歳以上の世帯員約20万人を対象として実施した「平成28年社会生活基本調査」の結果によれば、平成28年時点で6歳未満の子どもを持つ夫・妻の週全体の育児時間は夫の49分にくらべて妻は3時間45分となっています。夫の育児時間は増加傾向にあるものの、まだまだ夫婦間の偏りは否めません。

ただし、今年から中小企業でも施行が開始された働き方改革関連法による残業時間減少などの効果で、夫の育児参加がぐっと進む可能性がでてきました。仕事中心の生活スタイルが変化し、子どもと向き合う時間が増える転機となりそうですね。そこで、今回は父親の積極的な育児参加を阻む父子間の不和を取り上げます。

なぜ子どもは母親を選ぶのか…父親の悲しい嘆き 

「着替えさせようとしたら『ママじゃないとやだ!』と泣かれた」、「リビングでテレビを見ていただけなのに『お父さん、あっち行って』と娘に言われた」。こんなせつない体験をしたパパは少なくないのではないでしょうか。

そもそも子どもがママ贔屓になるのは、父親とくらべて母親は圧倒的に子と過ごす時間が長いという要因があげられます。常に近くで子どもを見て世話をしていると、知らないうちに子どもの要求を察する能力が向上し、良好な関係を築く基礎が身につくからです。また、子どもの側もいつもそばにいてくれる母親に安心感や信頼感を抱き、自分を理解してくれる存在として認識します。

一方、多くの家庭では、仕事との兼ね合いで父親が子どもと接触する時間は限定的。平日子どもが起きている時間に帰宅できたとしても疲れていて遊んであげる余力がない、あるいは普段の様子を把握していないので子どもと何を話してよいか分からないというケースが見受けられます。つまり、親子間での人間的な相性云々の前に、余裕をもってお互いを理解する機会が少ないという問題が立ちはだかっているのです。

あなたが父親を嫌いになった理由は? 

一方子どもの立場からみて、父親の存在はどのように捉えられているのでしょうか。ズバリ『あなたが父親を嫌いになった理由』を聞いてみました。

・「学校であった出来事を家で話すと、とにかく批判的。最終的に上から目線の役に立たないお説教が始まり、不愉快になることが多いから」(中学2年生)

・「加齢臭がすごくて、父が入った後のお風呂は入れません。歯磨きの時間も短いし全体的に不潔な感じで、申し訳ないけど生理的に受け付けないです」(高校1年生)

・「とにかく仕事が忙しいが口癖で、家にいない。その割にたまの在宅の際は家族に対して偉そうな態度をとるので、憤りを感じていました」(中学1年生)

子の性別により、男女差による価値観の違いも大きく影響しているかもしれませんね。中高生のある時期に急に父親に嫌悪感を抱くケースは、思春期特有の反抗心という場合もあります。成長して昔を振り返り、「あの頃はお父さんのこと嫌いだったんだよね。」と笑いあえればよいのですが…。

テレワークで立場逆転。ワンオペ育児の大変さを実感した夫 

社会を深刻な状況に陥らせている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、テレワークを導入する企業が激増しました。学校の休校にともない、家族が家で顔を合わせる機会がぐっと増えたのではないでしょうか。家庭によっては在宅時間が夫婦で逆転したケースもあるようで、テレワーク中の父親が子どもの昼食を準備するといった家庭も多く見受けられます。

これまで妻に家庭のことを任せていた夫は子育てのノウハウを持ち合わせていないため、的の外れたアドバイスやしつけで子どもに疎ましがられてしまう場合があります。一口に育児といっても、「宿題を見てあげる」といった定番のものだけでなく、「具合が悪いと言われた場合の適切な処置」などバリエーションはさまざま。マニュアルがあるわけではないので、1つ1つこなしていく初期段階でしんどさを感じる夫も多いのではないでしょうか。普段これを1人で担っていた妻の偉大さに、あらためて気づく貴重な機会となったかもしれません。

妻の態度が円満の決め手?大事なのは夫を孤立させない姿勢

では、ここまでみてきた「子どもがママの方を選ぶ」状況をどう打破すればよいでしょうか。父と子の関係性を左右する重要な要素として母親の態度があげられます。たとえば、母親が子どもに対して夫に対する愚痴や不満を日常的に聞かせることは、子が父親を嫌ったり軽んじたりする大きな要因となります。

子どもは大好きな母親の言うことは真実だと信じたいので、実際に父親がそこまでひどい行動をとっていなくても母の言葉を鵜呑みにしてしまう場合が多いのです。また、良かれと思って「お父さんのおかげで、私たちは生活できているのよ!」と事あるごとに言い聞かせるのも、父親=お金を稼いでくる人の図式を植え付けてしまうことがあるため要注意です。

妻が人間として夫を尊敬し、子どもとの橋渡し的役割を担うことで夫が孤立することを防ぎ、家族の一体感を形成することができます。夫・妻が平等に家事育児を行う時代の到来にむけて、あらためて親子の関係性を見つめ直すのもよいかもしれません。

【参照】
総務省「平成 28 年社会生活基本調査 生活時間に関する結果」


引用元:
「あっち行って」なぜ子どもは母親を選ぶのか。父親の悲しい嘆き(LIMO<リーモ>)