新型コロナウイルスの感染拡大によって、出産を迎える家庭が通常と異なる対応を迫られている。出産前後に必要な物を買いに行けない、出産や健診にパートナーの立ち会いが制限されるなど、思い描いていた妊娠・出産と現実とのギャップに戸惑う人も多い。コロナの影響下で出産に向き合うヒントを専門家に聞いた。 (今川綾音)


 「出産に立ち会ってもらい、パパになる自覚を促したかったのに」「赤ちゃんの服や抱っこひもは実物を見て選びたかった」


 出産育児に関するオンラインサロンを開き、アプリ上で相談にも乗る助産師の高杉絵理さん(38)のもとには、毎日のように妊娠中の女性から嘆きが寄せられる。東京都世田谷区の保健センターでも勤務(現在は育休中)する高杉さんは「受診のハードルが上がり、行政の相談窓口も利用しにくくなっている今、アプリ上での質問数は普段の三倍近くに増えている」と話す。


 高杉さんに、出産準備と心構えについて聞いた。


 まず物の準備。「焦って買わなくてもよい物もある」と言う。家族のサポートにもよるが、ベビーカーや抱っこひもは、赤ちゃんと外出しない生後一カ月間は必要ない場合も多い。「赤ちゃんの成長ぶりを見ながら、月齢の少し大きい子のいる先輩ママ・パパの意見を聞いて選ぶといい」


 逆に出産直後から大量に必要なのは、おむつとおしりふき。そして、見落としがちなのは母乳で育てる場合にママが使う物。「授乳用のブラとパジャマ、母乳の漏れを防ぐ授乳パッドは便利なのでぜひ準備して」


 赤ちゃんと過ごす日々を見据え、買い物にネットスーパーを使えるようにしておきたい。「当日配達か翌日かなど使い勝手はさまざま。出産前の余裕のあるうちに複数を実際に使って比べてみて」と助言する。


 次は心構え。高杉さんは「最近は『夫婦で子育てのスタートを切りたい』と健診や出産時にパートナーの立ち会いを希望する人が多く、かなわないのはつらいだろう」と思いやる。ただテレワーク導入などで、夫婦で過ごす時間が増えた家庭も多いはず。家事を一緒にしたり、赤ちゃんを迎えるために室内を整えたり、「出産立ち会いより長い時間を、夫婦一緒に楽しみながら過ごして」と話す。


 赤ちゃんを迎えるための知識を学ぶ両親(母親)学級も軒並み中止に。高杉さんは「分娩(ぶんべん)時に先が見えないと不安が募る。お産の流れだけは知っておいて」と勧める。ネット上で公開されているお産のドキュメンタリーを夫婦で見ておきたい。両親学級の動画も役立つ。(「出産ドキュメンタリー」「両親学級 動画」などで検索)


 外出自粛で運動不足の人には「家の中でできることはたくさんあります」。壁ふき・床ふきなどの掃除をはじめ、積んだ雑誌を利用した踏み台昇降、ネット上の動画を見ながらのマタニティーヨガなどを勧める。「人混みを避けた朝夕のウオーキングもOKです」


 高杉さんは「思い描いていた出産の形が実現できないのはショックだと思いますが、医療関係者も全力で支えるので一緒に乗り切りましょう」と話している。

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引用元:
立ち会い制限、両親学級中止…コロナ期の出産準備は? パートナーと楽しむ心で(東京新聞)