政府は不妊治療に対する支援制度を二〇二一年度にも拡充する方針を固めた。助成増額や所得制限の緩和を検討する。二〇年度に治療費用などを調査し、支援拡充の具体策を決める見通し。複数の政府関係者が明らかにした。一九年の出生数が推計八十六万四千人と過去最少になったことを受け、支援強化が必要だと判断した。 (川田篤志)

 政府は近く取りまとめる第四次少子化社会対策大綱に「不妊治療に関する実態把握を行い、男女を問わず不妊に悩む方への支援に取り組む」と盛り込む。公表後、パブリックコメントを経て五月下旬にも閣議決定する。大綱は二五年までの少子化対策の指針となる。

 不妊治療の助成制度は政府が〇四年度に導入。現在は初回で最大三十万円、二回目以降は十五万円を最大六回まで補助する。治療開始時に妻が四十三歳未満の夫婦が対象で、夫婦の合計所得が七百三十万円未満であることが条件。一七年度の支給実績は約十四万件。

 二回目以降の助成額十五万円は、一九九八年に国が患者約八百人から聞き取った治療一回の平均費用三十万円の半額に当たる。当事者から「現在の実態と懸け離れている」と再調査を求める声が上がっていた。

 体外受精、顕微鏡で確認しながら精子を卵子に注入する顕微授精といった「特定不妊治療」は保険の適用外。不妊治療者を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」が一八年に調査したところ、43%が体外受精一回の平均額を「五十万円以上」と回答。一〇年の16%から二・五倍に増えた。四人に一人は所得制限で国の補助の対象外となったという。

 Fineの松本亜樹子理事長は「若い世代ほど費用が高額で治療をあきらめてしまうカップルが多い。少子化は待ったなしの課題。治療の選択肢が広がる制度改正にすぐにつなげてほしい」と本紙に語った。

<少子化と不妊治療> 1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2018年に1・42。国立社会保障・人口問題研究所の15年の調査によると、不妊治療を経験した夫婦は5・5組に1組。日本産科婦人科学会の集計では、体外受精や顕微授精など「生殖補助医療」で生まれた新生児は17年に約5万6000人で、17年までの累計で58万人。

引用元:
不妊治療 支援拡充 21年度にも 助成増額・所得制限緩和へ(東京新聞)