新型コロナウイルスが広がり、子どもたちも普段とは違う生活を余儀なくされています。いま起きていることを子どもにどれぐらい伝えたらいいのか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。世界では、国のトップが子どもたちに直接伝えようという動きもあります。

拡大する写真・図版
カナダのジャスティン・トルドー首相(右端)と家族

「みんな一緒、乗り切れるよ」カナダ首相
 「こんにちは、首相。僕はモハメッド、来月で11歳になります。僕たちは夏前に学校に戻れると思いますか」

 カナダのテレビ局「CBC」が制作している子ども向けニュース番組「CBCキッズニュース」は4月5日、全国の子どもから寄せられた質問をジャスティン・トルドー首相(48)に直接投げかけるプログラムを放映した(https://www.cbc.ca/kidsnews/post/watch-justin-trudeau-answers-kids-questions-about-the-coronavirus別ウインドウで開きます)。

 質問を募ったところ、1日で約4千件が寄せられたという。6歳の女の子は「ホームレスの人たちはどこに行けばウイルスから身を守れますか?」、北部に住む5歳の男の子は「ここは寒いけど、コロナウイルスはこんなに寒いところでも生き残れますか?」と問いかけた。

 トルドー首相は「学校にいつ戻れるか」との問いには「とても良い質問だね。僕の子どもたちも、いつも聞くんだ」と伝え、こう答えた。

ここから続き
 「正確にいつになるのかは誰にも分からない。でも、家にとどまり、支え合って、人とは2メートルの距離を取ることをしていれば安全だ、ということは分かっているんだ。モハメッド君がそれをしてくれていること、僕は分かっているよ」

 「手を洗う時に頭の中でどんな歌を歌っていますか?」と尋ねられ、手を洗うしぐさをしながら「ハッピーバースデー」と歌う一場面も。最後は「みんな一生懸命取り組んでいる。離れてはいるけど、みんな一緒に取り組んでいるから、乗り切れるよ」と呼びかけた。

 トルドー首相の妻ソフィーさんは3月12日に新型コロナウイルスに感染していることが確認され、首相は自主隔離した。

「少し怖いと思っても大丈夫。でも」ノルウェー首相
 ノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相も、子どもからの質問に直接答える場を設けた。

拡大する写真・図版
ノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相

 同国のオンライン英字紙「ザ・ノルディックページ」などによると、首相は3月16日、大人の記者は入れない会見を開き、全国の子どもから寄せられた質問に答えた。同紙によると、冒頭で「コロナを少し怖いと思っても大丈夫。でも、多くの人にとっては危険ではないんですよ」と呼びかけたという。

 質問は同国の子ども向けテレビと子ども向け新聞を通じて寄せられた。「誕生日会を開いてもいい?」「ワクチンができるまでにどれぐらいかかるの?」といったもので、首相は「もしクラスの誰かが誕生日なら、電話して『ハッピーバースデー』を歌ってあげて!」と伝えた。

 「助けるために私に何ができる?」という質問には「あなたが家にいることで、他の人が病気にならないように助けになっているんだよ」と答えた。

不安受け止め、親子で考える
 九州産業大学の窪田由紀教授(臨床心理学)はこれらの取り組みを「素晴らしい」と評価する。

 「日本では、親の病気などネガティブに捉えられがちな情報を、子どもに真剣に伝える文化が育っていない」。だが、可能な限りの情報を子どもに伝え、その上で「不安を受け止め、今何ができるかを考えたほうが、親子双方にとって良い」という。

 世界保健機関(WHO)も「うそをつかず、子どもの年齢に適した方法でコロナウイルスについて話す」ことを推奨し、こう呼びかける。「もし子どもたちが心配しているならば、話し合って一緒に対処することで不安をやわらげられるでしょう」(山本奈朱香)

引用元:
君の行動が助けになるよ 各国のトップ、子どもへの言葉(朝日新聞)