【4月6日 AFP】初めてのわが子の誕生から10日間、スペインの首都マドリードに住むバネッサ・ムロ(Vanesa Muro)さん(34)は息子に近付くことも許されなかった。その後、ようやく家に連れ帰ることができたが、ムロさんも夫もまだ手袋なしでは息子に触れることができない。新型コロナウイルスの検査で陽性だったため、隔離期間を過ごしていた夫婦は今も手袋をしている。

 マドリードの自宅で取材に応じたムロさんは、「とてもつらい」と語った。「息子は私の指を握るけれど、かわいそうに、つかんでいるのは私の指ではなく手袋です。でも、これで(隔離期間が)1日減ったと思うことにしている。そうでもしないと気分が落ち込んでしまうから」


 新型コロナウイルスの流行で、スペインではイタリアに次いで多い1万人を超える死者が出ている。中でもマドリードの流行は深刻だ。

 ムロさんは3月16日に帝王切開での出産を予定していたが、祖母が新型ウイルスにかかったことで状況は一変した。ムロさん夫婦が毎日会っていた祖母はその後、亡くなった。

 検査でムロさん夫婦の陽性結果が出たのは3月12日。夫はムロさんを連れてラパス大学病院(La Paz University Hospital)へ駆け込んだ。しかし夫は入院できず、ムロさんだけを救急外来に託した。夫婦は次の日にムロさんの帝王切開術を行う決心をした。

■最も長かった90分間

「色々な感情が入り交じって怖かった」とムロさんは言う。子どもに移してしまうかもしれないという不安に加え、夫の立ち会いなしで手術を受けることにも神経質になっていた。防護服で全身を覆った医師たちに手術を受けるのも異様な感じだったという。

 家では夫のオスカル・カリージョ(Oscar Carrillo)さんが、やはり葛藤していた。妻が手術を受けていることを知りながら、今どうなっているのか分からなかった。「人生の中でも最も長い90分間だった」とカリージョさんは話した。

■いつか悪夢として過ぎ去って

 息子のオリベル(Oliver)ちゃんは、体重3600グラムで無事生まれた。しかしそのまま保育器に入れられ、新型ウイルスの検査で陰性と判定されるまで他の新生児たちから隔離された。母親のムロさんだけが48時間後に帰宅させられた。

 マスクと手袋をした夫婦がオリベルちゃんを家に連れ帰ることができたのは、生後10日目だった。「小さなチャンピオン、一緒に家に帰ろうね」。感極まる再会の際、ムロさんが初めて息子にかけた言葉だ。「まるでその日に生まれたみたいだった」

 14日間の隔離期間は終わっていたが、検査キットの不足で陰性を確認できないため、ムロさん夫婦はまだ手袋とマスクをしている。カリージョさんは「今も手袋をはめた状態でしか息子に触れていない…早く隔離を終えて子どもに触り、キスしたい」と語った。

 親として新米の2人は、家族の助けを頼ることもできない。ムロさんの両親は近くに住んでいるが、スペインは都市封鎖下にあるため、遠く離れて暮らしているようだとカリージョさんは嘆いた。

「今はつらいけど、私たちは乗り切ってみせる」とムロさん。「あっという間にオリベルは生後1か月になるし、私たちも外出できるようになる。オリベルも祖父母や叔母さん、叔父さんの顔を見ることができる。つらかったことはすべて悪夢として過ぎ去ってくれるでしょう」 (c)AFP/Benjamin BOULY RAMES

引用元:
手袋で触れるわが子…新型ウイルス陽性の女性が無事出産 スペイン(AFP BB NEWS)