きびしい話になりますが、不妊治療を受けても授からないこともあります。治療を断念せざるを得ないカップルもいます。最近、「妊活うつ」という言葉が聞かれますが、不妊治療中や不妊治療後に気分が落ち込んでしまうのは決してめずらしいことではないようです。治療後のメンタルヘルスについて、認定不妊カウンセラーの笛吹和代さんと考えていきます。
治療後の落ち込みはめずらしいことではない
不妊治療に足を踏み入れた時点で、多かれ少なかれストレスとのつきあいが始まっています。不妊治療そのものがストレス因子といっても、過言ではありません。
多くの人は、はじめはタイミング法からスタートし、そこまで深刻に考えずに不妊治療が始まります。不妊治療さえすれば、すぐにでも授かるだろうと思っている人も少なくありません。人によりますが、一般的にはそれが半年から1年ほど続きます。その間に、徐々にやはり授かれないのでは?と不安が増していく人もいます。その後、人工授精、体外受精へと進みますが、このステップアップのたびに、ストレスの度合いも上がっていくことでしょう。
体外受精を1〜3回まで受けると、一般的には1年から1年半かかります。この間は不妊治療にどっぷり専念、いわばハマッているような状態です。メンタルに影響が出たとしても不思議ではありませんね。私自身の経験から、個人的には、治療にどっぷり専念するのは1年、長くても2年ぐらいが限度ではないかと思っています。
みなさんにお伝えしたいのは、治療後に気分が落ち込むのは決してめずらしいことでも、ましてや異常なことでもないということです。もちろん個人差はあります。その人の人生観や人生計画によって、かなり大きな差が出るようです。
不妊治療終了後のメンタルヘルスを考える
治療終了後のつらい時期。何でもひとりで抱え込まないことが大切。
体外受精1〜2回の人と、それ以上の人の違い
ここでは体外受精まで行ったけれど授からなかった、というケースについてお話します。私が受ける相談の中にも、妊娠を断念された方からの切実なご相談があります。
年齢的な面もありますが、治療の区切りをつけるタイミングによっても差があります。体外受精を2〜3回で区切った人と、4回以上受けてやっと区切った人。特に5回、6回、それ以上となると、「次こそは」「次こそは」とギャンブル性を帯びてやめられなくなってしまった人も少なくありません。それでも断念しなければならなかった、となった場合の残念さ、無念さは、想像を超えるものがあります。
また、金銭的な問題で1回や2回で断念する人もいます。不妊妊治療が保険適用であればもう少しチャレンジできたのに……と悔しさを滲ませる方もいます。自分たちで終わりを決めなければいけない不妊治療。周りが想像する以上に、壮絶な葛藤が自分の中で繰り広げられるのです。
不妊治療は自由診療。始めるのも終わらせるのも自分たち。治療を始めるにあたり、ここまでイメージするのはなかなかむずかしいことだと思います。また、不妊治療の結果としてあり得ることなのに、この点が医療的にも社会的にも見過ごされているというような感もあります。次回も、治療終了後の落ち込み対策についてお話します。
不妊治療を終わりにする、それ自体が精神的に影響を与えるもの。治療終了後に気持ちが落ちることは、決してめずらしくも異常でもありません。“こんなに落ち込む自分はふつうじゃない”と自分を責めないことが大事です。
(教えてくれた人/笛吹和代さん)
働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。
引用元:
不妊治療終了後のメンタルヘルスを考える(suits-woman)