世界中で拡大し続ける、新型コロナウイルスによる感染症。老若男女問わず、さまざまな人への感染が確認されており、不安が広がっていますが、特に妊娠中の女性は、おなかの中の赤ちゃんへの影響が心配だと思います。

 妊婦に向けた情報が少ない現状もあり、ネット上では「もし感染したら出産はどうなるんだろう」「妊婦健診があるけど、病院に行くと感染しそうで怖い」「やっぱり薬は飲めない?」「とにかく毎日不安でいっぱい」など、さまざまな不安・心配の声が上がっています。

 新型コロナウイルスが妊婦に及ぼし得る影響や、安心して過ごすためのポイントについて、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。
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過度な心配は不要、通常の注意を

Q.現時点で、日本国内における妊婦の新型コロナウイルス感染確認事例はあるのでしょうか。

尾西さん「3月19日時点では、実際に妊婦さんが新型コロナウイルスに感染し、赤ちゃんへの影響があったという国内のデータがまだなく、詳しいお話ができないのが現状です。日本産婦人科感染症学会は、妊娠初期・中期に流早産をきたす可能性は高くなく、現在のところ、胎児奇形の報告もないと発表しています。

また、中国・武漢で、新型コロナウイルスに感染した妊婦さんが健康な赤ちゃんを出産した例が9例あること、3月6日に、韓国の大邸市で新型コロナウイルスに感染した妊婦さんから生まれた赤ちゃんが陰性だったことから、中国の保健当局は、新型コロナウイルスの母から子への垂直感染(胎盤や産道、母乳での感染)はないとみています。

一方、中国の中山大学付属病院は、感染した妊婦10人のうち9人は健康な赤ちゃんが生まれたものの、重症の妊婦から生まれた1人が死産となったことを、感染症の専門誌(ジャーナル・オブ・インフェクション電子版)で発表しています」

Q.新型コロナウイルスによる感染症について、実際の産婦人科医院の現場の様子はどうでしょうか。

尾西さん「妊婦さんの場合、やはり『自分が感染した場合に赤ちゃんへの影響が心配』という声がよく聞かれますが、先述のような発表もあることから、過度に不安になる必要はありません。

ただし、一般的に妊娠中は免疫力が低下するため、インフルエンザなどを含む感染症にかかりやすく、また、かかった場合に重症化しやすくなります。そのため、病院では手指の消毒をお願いしたり、待合室の椅子やドアを通常より頻繁に消毒したりしています。妊婦健診の間隔を通常よりも空けるなどの対応をしているところもあります。

ただ、悪いことばかりではなく、仕事が休みやテレワークになったことで、妊婦健診に一緒に来られるパパが増えています」

Q.もし、妊婦が新型コロナによる感染症を発症した場合、母体や胎児、出産に何らかの影響が出る可能性がありますか。

尾西さん「妊娠末期(分娩前)に新型コロナウイルスに感染した場合は、一般の病院ではなく指定医療機関で分娩(ぶんべん)することになります。赤ちゃん、感染した母親の両方のウイルス検査が陰性と確認できるまで、面会や授乳はできません」

Q.新型コロナに感染すると、発熱や咳(せき)、喉の痛みなど風邪のような症状が出ることが確認されており、新型コロナか風邪かの判別は難しいようです。妊婦にこのような症状が出た場合や感染が心配な場合、どうすればよいでしょうか。

尾西さん「37.5度以上の発熱や倦怠(けんたい)感が2日以上続く場合、帰国者・接触者相談センターに連絡し、必要な場合は指示された医療機関を受診してください。なお、通常は『4日以上』ですが、妊婦さんの場合は『2日以上』となっています。複数の医療機関を受診することは避けましょう。

また、3月6日よりPCR検査が保険適応となっていますが、一般の産婦人科ではまだ検査できない状況です」

安心して過ごすために…

Q.「妊婦健診があるが、病院に行くと感染しそうで怖い」という妊婦さんも少なくないようです。

尾西さん「発熱や咳の症状がある人について、産婦人科では、まず帰国者・接触者相談センターに連絡していただき、直接受診しないようにして院内感染が起こらないよう心掛けています。そのため、基本的には健康な妊婦さんの受診のみとなり、風邪などの症状がある患者さんも診る内科よりは、感染リスクは少ないと思います。

ただ、ここまで広がってくると、どこでうつされてもおかしくないので、街での買い物や電車内と同様のリスクはあると思います。不安な場合は、妊婦健診の間隔を少し空けることも可能ですが、適度な間隔で胎児の様子を見る必要はあるので、かかりつけの病院で相談しましょう。

現時点では、いつになったら終息するか分からない状態なので、妊婦健診に行かずに自己判断で終息を待つのはやめましょう。また、不正出血や腹痛、破水感があるときは迷わず、かかりつけの産婦人科に連絡しましょう」

Q.妊婦に求められる新型コロナの予防策とは。

尾西さん「『妊婦さん用の特別の予防策』というものはありません。日本産婦人科医会では、妊婦さんでも一般の人と変わりなく、『人混みを避ける』『こまめに手洗い・消毒(アルコールなど)』を行うように推奨しています。

また、ビュッフェタイプの食事を避ける、不要な外出は控えるなど、身近でできることをしましょう。万が一、家庭内に感染者や感染疑いのある人がいるときは、できる限り別室で過ごし、タオルの共用を避けるなどの予防策も取りましょう」

Q.新型コロナの感染が広がる現状に、「とにかく不安で仕方ない」「予防をしていても怖い」という妊婦さんが多いようです。妊娠中の生活をできるだけ安心して過ごすためのアドバイスをお願いします。

尾西さん「おなかの赤ちゃんのためにも、まずは妊婦さん自身が落ち着いて行動することが最も大切です。

『不安だから』と、トイレットペーパーを買いにさまざまなところに出掛けていては本末転倒です。100パーセントの予防策というものはありませんが、不要な外出を控えたり、宅配を利用したり、家族に買い物をお願いしたりするなど、なるべくリスクを減らせるようにできることから予防していきましょう。

感染拡大防止のため、妊婦さんや家族の感染の有無にかかわらず、立ち会い分娩や面会が制限されている病院もあります。残念に思われる人もいるかもしれませんが、妊婦さんがなるべく安心して過ごせるように、との配慮なので協力していきましょう」


引用元:
新型コロナ、不安な妊婦さんへ 感染で赤ちゃんに影響は? 安心して過ごすには?(Yahoo!ニュース)