東大医学部卒の医者ママである森田麻里子医師は、自身の息子が毎日6時間寝ぐずりを続ける日々が続いたそうです。そこで睡眠に関する医学研究を徹底的に調査し、1本のメソッドにまとめて実践したところ、なんと息子が3日で即寝体質に!
そんな夢のような寝かしつけの方法を徹底的にわかりやすくまとめた新刊『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』には、夜泣きに悩むご家庭なら必ず知っておきたい知識が満載です。「寝かしつけが手厚すぎると逆に夜泣きが増える」といった意外な事実から、「保育園での多すぎるお昼寝、少なすぎるお昼寝への対処法」「最適な寝かしつけタイミングがわかる8つのサイン」といったすぐに使えるノウハウまで網羅。そんな本書の中から、一部を特別に無料で公開します。

離乳食開始の目安は
生後5〜6ヵ月ころ

 離乳食を始める時期と睡眠については、新しい研究結果が出ています。離乳食の開始は遅らせないほうがよいでしょう。

 2018年にロンドン大学の研究者が発表した論文では、離乳食を早く始めたほうが赤ちゃんが寝つきやすいという結果が出ています(*1)。

 これはアレルギーについての研究に付随して行われた調査です。1225人の生後3ヵ月の赤ちゃんをランダムに2グループに分け、一方のグループは生後3ヵ月から、もう一方のグループは生後6ヵ月から離乳食を与えました。

 すると、生後3ヵ月から離乳食を与えたグループのほうが、最大で16.6分長く眠り、夜泣きの回数も少ない傾向にあったのです。

 とはいえ、生後3ヵ月から離乳食を始めるのは、現在の常識から考えてもちょっと早すぎるように思います。生後3ヵ月ですと、口の中に入った固形物を舌で押し出す反射がまだ残っている時期です。

世界保健機関(WHO)も生後6ヵ月からの離乳食を推奨していますし、日本のガイドラインでも生後5〜6ヵ月からとされています。

 離乳食を早く始めるというよりは、開始を遅らせず、生後5ヵ月頃から試してみるのがよいでしょう。

*1 Perkin MR, Bahnson HT, Logan K, Marrs T, Radulovic S, Craven J, Flohr C, Lack G (2018) Association of Early Introduction of Solids With Infant Sleep: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial, JAMA Pediatr; 172(8): e180739.
イギリスの生後3ヵ月の赤ちゃん1225人を対象としたランダム化比較試験。離乳食開始時期とアレルギーの関係を知るために行われた、ランダム化比較試験のデータを用いて解析された。赤ちゃんを2グループに分け、一方のグループは生後3ヵ月から、もう一方のグループは生後6ヵ月から離乳食を与えたうえで、3歳まで追跡した。すると、生後3ヵ月から離乳食を与えたグループのほうが追跡期間を通して睡眠時間が長く、その差は期間の平均で7.3分、生後6ヵ月のときには最大で16.6分だった。夜泣きの回数も、生後3ヵ月から離乳食を与えたグループのほうが、追跡期間中の平均で9.1%少なかった。

著者について
監修者 星野恭子(ほしの・きょうこ)
医療法人社団昌仁醫修会 瀬川記念小児神経学クリニック理事長。
東邦大学医学部卒業。2000年旧瀬川小児神経学クリニック研修中に「子どもの早起きをすすめる会」を結成。2005年早稲田大学にて時計遺伝子を研究。全国での講演や地方自治体のパンフレット作成啓発活動に協力2013年に文部科学大臣表彰。2017年より現職。2018年第28回日本外来小児科学会において乳児の睡眠と発達についての演題で優秀演題賞受賞。日本小児神経学会評議員日本睡眠学会評議員。

著者 森田麻里子(もりた・まりこ)
昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤医師小児睡眠コンサルタント。
東京大学医学部卒業。亀田総合病院にて初期研修後仙台厚生病院南相馬市立総合病院にて勤務。2017年に第一子を出産し現在は小児睡眠コンサルタントとして夜泣きに悩む家族にアドバイスを行っている。
自身の息子が生後2ヵ月半になったころから毎日6時間寝ぐずりを続ける日々が続いたため睡眠に関する医学研究を徹底的に調査。1本のメソッドにまとめて実践したところ息子が3日間で即寝体質に。このとき考案したメソッドをもとに小児睡眠コンサルタントとして活動を開始し現在に至る。
ハフポスト日経DUALなどメディア執筆多数。AERA dot.でエビデンスに基づく育児や子どもの医療情報について連載中。

個人差を超えて
赤ちゃんの睡眠について
言えること

 はじめまして。森田麻里子(もりた・まりこ)と申します。この度、『医者が教える 赤ちゃん快眠メソッド』を上梓しました。

 育児という分野は、とかく精神論や個人の経験談だけで語られがちです。もちろん、今すぐマネできる具体的なノウハウは大切なのですが、個人差も大きいので、どうしても赤ちゃんによって向き不向きが出てしまいます。

 そこで本書では、経験談にとどまらず、多くの赤ちゃんに普遍的に効果のある方法を追究しました。医学書や論文では、個人差や、結果のかたよりの影響を取り除く方法がある程度確立しています。

 このような方法で証明された根拠を「エビデンス」といいます。本書で紹介している睡眠トラブル解決法は、可能な限りエビデンスに基づいています。といっても、本文の中ではむずかしい言葉はいっさい出てきませんので、安心してください。

根拠のない根性論育児が
ママ・パパを追いつめる

根拠のない育児論・育児方法を押しつけられることで、ママ・パパの助けになるどころか、追いつめてしまうことがあります。だからこそ、エビデンスが大切なのです。

 育児に関する情報は、ネットにも、本や雑誌にもあふれています。でも、その情報がどのくらいの根拠に基づいているのか書いてあるものは、ほとんどありません。その結果、単なる個人の意見なのに、あたかもそれが育児の原則だと勘違いされてしまうのです。

 もちろん本当に必要ながまんであれば、しかたないことはあります。でも、根拠のない通説を真に受けてがまんをしたり、「赤ちゃんが寝つかないのは私の愛情が足りないからだ」と罪悪感を持ったりすることに、ママ・パパのメリットはありません。単なる負担にしかならないのです。

 もちろん、エビデンスだって万能なものではありません。テーマによっては、現実的に研究できないことがあります。研究をするには膨大な労力や時間、お金が必要です。それに見合う結果が出る可能性が低いと、率先して研究をする人がおらず、研究が進みません。

 それでは、知りたいと思ったことについて研究が行われていなかったら、どうすればよいでしょうか? ママ・パパは育児から逃げることはできません。試行錯誤しながら、極端な話サイコロを振ってでも、なんとかそのご家庭での答えを見つけていかなければいけないのです。

経験からの知恵は、ここで初めて役に立ちます。私は、個人の経験や体験談を否定するつもりはありません。個人の経験談を参考にするのが悪いわけではなく、研究結果からの結論と経験談からの知恵に、優先順位をつけて使い分けすることが大切なのです。

 このような考えから、たとえエビデンスの観点からは不十分だったとしても、現時点ではおそらくこうしたほうがよいだろうという私の経験からの知恵も、本書では併せてお伝えしています。人間の体についての知識、さまざまな研究や文献からの知識、私のクライアントさんに関わる中で積み重なった経験から、ママ・パパの毎日の生活に役立てていただけることもあるからです。

 本書がひとりでも多くのママ・パパのお役に立つならば、これ以上の喜びはありません。




引用元:
離乳食を早く始めると赤ちゃんが寝つきやすくなる(ダイアモンドオンライン)