「自分を許す」子育て習慣とはいったい何か
忙しい月曜日の朝。自分の仕事支度をし、子どもたちにご飯を食べさせて、やっと保育園へ! と思って振り向くと、子どもが牛乳をこぼしている……。そんなとき、よくないとわかっていてもついイライラしてしまうもの。家事、仕事、子育てなど、やらなければならないことは山積み状態でも時間は限られていて、イライラや不安は募る一方。そうした状態を解決するために最も必要なのは何か──。『神トーーク「伝え方しだい」で人生は思い通り』などメンタルやトーク術の著書を持つ星渉氏に聞きました。
子育てで自己嫌悪にならないためには
子育ての悩みはご家庭によってさまざまですが、そのなかでも共通する悩みとして「イラっとしてつい子どもにあたってしまう」が多いのも事実。
ついつい大声で怒鳴ってしまったり、言わなくてもいい一言を口にしてしまったり。しかもその後に「あんなに怒る必要はなかったのに……」「あそこまで言わなければよかった……」と、自己嫌悪に陥ってしまう。そうして、自分が思い描いていた「理想の母親像・父親像」とは、まったく違う現状に落ち込んでしまうという人も多いでしょう。
一方で、子どもたちも理不尽に怒られてばかりでは、どんどん自信をなくして萎縮してしまう。そう、子育てにおけるイライラというのは「親子ともに自己肯定感を下げてしまう悪循環」ともいえるのです。
では、そんなイライラをなくすためには、どうすればいいのでしょうか。ここで一緒に考えていきましょう。
実はイライラのようなネガティブな感情は、人間が生存するうえで必要なものでもあるのです。なぜなら、イライラや不安は、脳の「アラーム機能」と考えられているからです。
例えば、何かトラブルが発生したときに「こんなことが起きているけど大丈夫?」「対処したほうがいいんじゃない?」と、私たちに事細かに知らせてくれているというわけです。
ですから、無理に消そうとすると、脳は「マイナスの出来事に気がついていない」と判断し、そのアラームのボリュームをあげていきます。つまり、イライラや不安は「消そうとすることで増幅されていく」のです。
また、脳のクセもこれに拍車をかけます。
「○○しない」と決めると、そのことをしたくなる、という特性が脳にはあります。試してみましょう。今から1分間、ゾウのことを考えないようにしてください。
……どうでしょう。頭にゾウが浮かんできて、それを消すのに苦労したのではないでしょうか。「○○しない」という決意は実行するのが難しいことがわかっています。そのため、例えばダイエットでは、「甘いものを食べない」ではなく、「健康的な食事をとる」と決めたほうが成功率は高くなります。「○○しない」という決意は、かえってそのことに脳が執着する原因になってしまうのです。
幸せな子育ては「自分を許す」ことから始まる
イライラがなくならないとしたら、私たちはどうしたらいいのでしょうか。
自分に対して「イライラしていい」という許可を出すことです。逆説的ですが、「イライラしていい」と自分に許可を出した瞬間に、イライラはぐっと減っていきます。このような許可を出すと、「イライラという感情があることに気づいているんだ」と脳が判断するため、イライラのアラームが増幅するのを防ぐことができるからです。
そしてこの許可を出す行為は、自分自身を許す「自己受容」にもつながります。自分を受け入れることができれば、それは気持ちの余裕にもつながりますから、イライラが膨らむこともないでしょう。
真面目な人ほど子育てが始まると、初めてのことばかりで「うまくいかない自分」を責めがちです。しかし、幸せな子育てを実現するためには「親自身が幸せであること」がとても大事な要素だと私は考えています。
最初からすべてがうまくできる人なんていないわけですから、まずは「自分を許す」ことから始めてみてはいかがでしょうか。そのために、非常に簡単で効果的なのが「鏡に映る自分にねぎらいの言葉をかけてあげる」ことです。
新しい習慣をつくるときには、今やっている習慣につけ加えるのがポイント。例えば歯磨きの後にやってみるなど、ぜひとも今日から実践してみてください。
私たちは往々にして、「存在しない理想の子ども」と自分の子どもを比べてしまいます。
親が起こす前に自分で目覚め、こぼさずにご飯を食べ、自分で服を着て、忘れ物がないかチェックをし、出発時間5分前に靴を履いている……。そんなすごい子どもは、なかなかいないはず(笑)。しかし、親の中の無意識の期待値は、それくらいまで上がっています。
このように期待値が高すぎると、「子どものできないこと」ばかりが目につくようになってしまいます。するとそれに応じてイライラも増えてしまうのです。
では、期待値をコントロールするには具体的に何をすればいいのでしょうか。
それは、日常における当たり前のなかで「ありがたい」と思えることを探す習慣をつけること。これは、「スリーグッドシングス」と呼ばれ、心理学の観点から効果が証明されています。まずは1日3つありがたいことを探すのをゲーム感覚でやってみましょう。
「子どもが夜にちゃんと寝てくれてありがたい」「健康でありがたい」「毎日笑顔をみせてくれてありがたい」など、当たり前のなかに「ありがたい」を見つけられるようになると、期待値は下がり、イライラする回数も減っていきます。
さらに効果的なのは、お子さんや家族みんなで1日3つお互いに「ありがたい」と思えることを見つけて発表しあうと感謝の輪が広がり家族の幸福度が高まるでしょう。
「イライラ」をキャラクター化し、体から取り出す
最後にちょっとテクニック的なことをお伝えします。
「イライラの感情」をビジュアルでイメージし、それにあらかじめ名前をつけておきます。つまり「キャラクター化する」わけです。
例えば、色はオレンジで、ギザギザの輪郭を持つ生物、名前は「イララちゃん」など。イライラしたら、その「イララちゃん」を思い出し、吐く息とともに「体から出す」ことをイメージします。
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これは認知心理学の用語で解説すると「メタ認知」の活用です。メタ認知とは、簡単に言えば「自分を客観的に観察すること」。これができると、感情のコントロールがうまくなります。イライラの感情を自分から取り出し、客観的に観察することで、冷静になれるのです。
また、このキャラクター化は、脳に「私はイライラがあるのを認識している」という信号を伝えることにもつながるため、イライラのアラームが鳴り響くこともありません。
まとめると、イライラや不安は感じていいと許可を出してあげてください。次にそれらを冷静にコントロールして、第三者的な視点から自分を眺めるようなイメージで外に出さないようにすればいいわけです。
またイライラや不安は、他人との比較が原因になることもあります。そのため、誰かが決めたような理想の子育てや家族像を追い求めるのでなく、あなた自身やお子さんが幸せだと感じる毎日を過ごすために、という視点で考えてみてはいかがでしょうか。
引用元:
子どもについ怒って自己嫌悪に陥る人への対処(東洋経済オンライン)