子供を育てていると、独身時代以上に親と顔を合わせたり時には子供を預ける機会もありますよね。そんなとき、子育て経験があればあるほど祖母側は「育児はこうあるべし」と価値観を押し付けてくるケースもあります。

しかし、祖母の言い分と自分の考えをぶつけ合っても負のスパイラルに陥るだけです。今回は筆者が実際に経験した祖母世代との衝突を避けたエピソードをご紹介していきます。
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「お風呂上がりに白湯」という認識のズレ

今と昔で異なる育児方法はたくさんありますが、祖母世代とのギャップを感じることの一つに白湯を飲ませることがあるのではないでしょうか。一昔前は、お風呂上がりの乳児に白湯を飲ませる習慣がありましたが、今は母乳やミルクでの水分補給に重きを置いています。

筆者自身、3人の子供を出産した際や健診の時に「白湯を飲ませてください」と指示されたことはありませんでした。赤ちゃんの水分補給は母乳やミルクで、という子育て現役世代からすると、乳児に白湯を与える習慣は以前ほど一般的ではないのです。

第1子の出産では里帰り出産をしたこともあり、退院後の沐浴は母が手慣れた風に準備をしてくれました。その時、「白湯の準備をしなくては」と言い出したのです。

筆者は出産前の栄養士さんの指導や助産師さん、そして看護師さんの誰からも白湯に関して聞かされていませんでした。そこで、赤ちゃんに本当に必要なものなのか慌ててネットで検索したところ「赤ちゃんの水分補給は白湯より母乳とミルクが主流」というものばかり。退院時に手渡された育児書にも白湯に関しての記述はありません。

張り切って白湯の準備をしている母には言いにくかったものの、今と昔の違いや病院で全く説明をされていないことを伝えました。案の定、母は「当たり前すぎて看護師さんたちが言わないのでは」と不機嫌そうに返してきます。取り合えず、病院からもらった育児書とネット検索の結果を見せて昔との違いを示しました。

育児書はともかく、ネットサーフィンが好きな母は、パソコン画面でヒットした「白湯を無理に飲ませなくても大丈夫」という情報を目の当たりにし、ようやく現実を受け入れてくれたのです。


「抱っこ癖がつく」を吹き飛ばした子供の笑顔

今では親子の関係を築くためにも乳幼児期のスキンシップが重要視され推奨されています。しかし、祖母世代では泣いたからといってすぐに抱っこすると甘えん坊な子になるという、いわゆる「抱っこ癖がつく」という考えが主流でした。

第1子がまだまだ赤ちゃんだった頃に夫の実家へ帰省すると、ちょうど後追いが始まった時期と重なったこともあり筆者の姿が見えなくなると泣き始めます。泣くたびに筆者が抱いていると義母から「そんなに抱いていたら抱っこ癖がつくわよ」と指摘されたのです。

周囲のママさんと祖母世代との育児方法の違いを話し合う時、一番取り沙汰されていたのが抱っこ癖に関することでした。筆者はある程度覚悟はしていたものの、実際に言われると心にチクリときました。しかし、実母とは違い言葉で反論すると義母の面子を潰しかねません。そこで、筆者は賭けに出ました。

場所に慣れて人見知りがひと段落したのを見計らい、義母に抱っこしてもらった瞬間目が合ってニコっと笑ったのです。それを見た義母は「抱っこ癖がつく」という気持ちが吹き飛んだように嬉々としています。キャッと笑い声をあげる孫を抱っこしながら、「抱っこ癖がつくけど、この笑顔を見たら無理ね」と明るい口調で筆者に話しかけてきました。

このチャンスを逃すまいと、助産師さんからたくさん抱っこすることで親子や祖父母との愛情関係が築けるとアドバイスをもらったなどと説明しました。「抱っこ癖がつく」は過去の考え方であることを義母の機嫌が良い時にそれとなく伝えたのです。義母は筆者の言葉に耳を傾けてくれたのか、抱っこ癖に関する話はしなくなりました。
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「母乳は1歳になったら卒業」という圧力

母乳に関してだけは、実母と義母とでは大きな違いをみせていました。実母は母乳に関して寛容なのでストレスはなかったのですが、義母の前ではなるべく母乳の話をしないよう気を遣いました。

昔は早く卒乳させて離乳食に進むのをよしとしていたこともあり、義母は筆者の子供達が1歳前後になると毎回、「もう断乳したの?」「離乳食は進んでいる?」と質問してきます。また、義母の周囲ではママの復職に伴い早々に卒乳する子供が多く、母乳に関しては今も昔も変わらないと捉えていたようでした。

しかし今では、卒乳のタイミングはお母さんの復職や赤ちゃんが母乳に執着しなくなったらとタイミングは親子によって様々です。それを知らない義母は、子供が1歳を過ぎても母乳を飲んでいると知ると、義母は「本当におっぱいが好きな子なのね」と呆れた様子。

どう言えばいいか困り果てていたときに助け舟を出してくれたのが夫でした。一緒に育児をしていく中で昔と今の育児方法の違いを知り、卒乳を1歳に限定しない現代の子育てを理解していたのです。

夫が「今は赤ちゃんが離れるまで母乳を飲ます考えが主流だよ」「病院からも飲みたがっていたら1歳過ぎても飲ませてくださいと言われている」とさり気なく今の育児法を義母に伝え続けた結果、卒乳云々の話を口にすることがなくなりました。
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育児に関する常識は日々更新され続けている

祖母世代は子供を育て上げたという自負があるため、娘や嫁がしている育児に疑問を抱くこともありますし、自分の経験を踏まえて良かれと思って口を出すこともあります。しかし、現役時代から30年も経ち育児に関する科学的な研究や心理学などが比べ物にならないくらい発達しているのは否定できない事実です。

科学的見地に基づいた育児に関する知識は日々更新され、たとえば離乳食の時に親が噛んで細かくしたものを与えるなどは虫歯菌がうつる可能性もあるため、現在ではやらないように注意されるものです。新しい常識を上手に伝えつつ、子供の成長を一緒に見守るスタンスで双方の関係に亀裂が入らないようにしたいものですね。
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中山 まち子


引用元:
「育児の常識」のジェネレーションギャップは仕方ない。衝突をどう回避する?(Yahoo!ニュース)