冬はノロウイルスに注意が必要な季節ですね。
ノロウイルスは一年を通して発生していますが、なぜ冬は流行しやすいのでしょう。ウイルスは、生体外で生存する期間が長くなるほど、感染が広がりやすくなります。
ノロウイルスの生体外の生存期間は、気温が低いほど長くなり、最低でも1週間は生存します。この時期に流行するインフルエンザウイルスの生体外の生存期間が、約1日であることを考えると、ノロウイルスの強い生命力がうかがえます。また、冬の乾燥した空気はウイルスが浮遊しやすくなります。
ノロウイルスの感染経路、症状
発症に必要なウイルスの数は、感染症によって違います。多くの食中毒のウイルスは増殖してから発症しますが、ノロウイルスは非常に感染力が強いため、ウイルスが体内に入るだけで感染が成立すると考えてもよいでしょう。保育園、幼稚園、小学校などの集団生活では、子ども同士の触れ合いが多いのは 微笑ほほえ ましいですが、感染症が広がりやすく、よく話題になります。そんなノロウイルスは、基本的には経口感染しますが、その経路は、食中毒、接触感染、 飛沫ひまつ 感染、 塵埃じんあい 感染の四つがあります。
〈1〉ノロウイルスを保有する生や加熱不十分な 牡蠣かき などの二枚貝を食べた時などの食中毒
〈2〉ノロウイルス感染者の 嘔吐おうと 物や便に触れることからの接触感染
〈3〉嘔吐物や便が飛び散ることからの飛沫感染
〈4〉嘔吐物や便が付着したものが乾燥して、浮遊したウイルスを吸い込むことによる塵埃感染
どんなに予防に気を付けていても感染してしまうことがあるので、家庭内でもケアできるように、症状を知っておきましょう。
ノロウイルスに感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、1〜2日です。
感染すると小腸でウイルスが増殖し、激しい吐き気と嘔吐、下痢、腹痛、37度から38度の軽度の発熱など、感染性胃腸炎の症状がでます。これらの症状は2〜3日で回復することがほとんどです。ただ、便からのノロウイルスの排出期間はとても長く、感染してから2週間ほど、長い時は1か月も続くことがあります。
我が家でも、子どもが急な嘔吐や下痢症状を起こしたことがあります。また、子どもには症状がなく、私だけ胃腸炎になることもありました。あまりのつらさに、二度とかかりたくないと思うほどでした。どちらの時も、数分前まで元気だったのに、何の前触れもなく突然症状が表れました。
そして、第2子の妊娠中に、2歳の第1子が胃腸炎で体調を崩したことがありました。子どもを看病しながら、自身への感染を予防するのは、とくに気を使いました。ママがノロウイルスに感染しても、胎児への直接の影響はありません。しかし、育児中は休めないことが多く、回復に時間がかかってしまうためです。身近に、援助をお願いできるパパや他の家族がいない時は本当につらいです。家事や掃除は後回しにできても、子どものご飯やおむつ交換などの排せつの援助をやらないわけにはいきません。非常に感染力が強いため、子どもとママが同時に体調を崩す可能性もあります。ぐずる子どもに抱っこを求められても、思うように体が動かず、なだめるだけで精いっぱいになってしまい、お互いに体力、気力ともに消耗することもありました。
ノロウイルスに感染した経験のある人は、身を守る大切さを改めて感じることが多いようです。
まず、食事からの経口感染を防ぐ必要があります。
牡蠣は栄養がとても豊富で、妊娠初期に特に重要な葉酸も含まれています。とてもおいしいのですが、やはり妊娠中は生で食べるのは避けた方がよいでしょう。
また、接触感染を防ぐために、普段から手を清潔に保つことが大切です。
特にトイレの後や外から家に帰ってきた時は、しっかりと、せっけんで手洗いして汚れを落として、その後に消毒すると効果的でしょう。
従来、ノロウイルスに対してアルコール消毒は効果がないと言われてきましたが、最近では、濃度が高く酸性にしたアルコールには一定の消毒効果が期待できるともいわれています。ただし、アルコールに対して抵抗性が高いことは間違いないので、有効性を示す製品を選択し、正しい使用法で使うことが重要です。
また、身近な人が感染してしまった時の接触感染の予防のために、消毒液とバケツ、手袋、マスク、ペーパータオルも事前に用意しておくと、いざという時に役立ちます。
ノロウイルスの消毒には、哺乳瓶の消毒液や食器用の漂白剤に含まれている次亜塩素酸ナトリウムが効果的です。
安価で購入しやすく、汚染されたシーツや洋服など、家庭内で広範囲を消毒するのに最適です。ただ、次亜塩素酸ナトリウムは強いアルカリ性のため、濃度が濃いとたんぱく質を溶かしてしまいます。反対に、濃度が薄いと消毒効果が弱くなりますし、熱によって分解される性質があるため、希釈液を作るときに熱湯と混ぜると消毒効果が弱くなる恐れがあるので注意が必要です。また、次亜塩素酸ナトリウムは酸との混合で塩素ガスが発生します。酸性のアルコールや、他の酸性の洗剤と混ざらないように、取り扱いには十分注意しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムを消毒に適した濃度に希釈するのには500ミリ・リットルのペットボトルがあると便利です。ペットボトルの蓋は約5ミリ・リットルの容量があります。商品によって違いがありますが、食器用の漂白剤として普及している濃度約5%の原液を蓋2杯分と500ミリ・リットルの水に加えると、嘔吐物や便が付着したものの消毒に有効な濃度0.1%の消毒液になります。
トイレや床の消毒には、原液を蓋の半分と500ミリ・リットルの水に加えた濃度0.02%の消毒液を作ることができます。濃度0.02%の消毒液でも皮膚が荒れてしまいますので、希釈液を作る時や、消毒作業をする時は、手袋を着けたほうがいいですね。希釈液はおもちゃの消毒にも使えますが、2歳頃までの乳幼児は口に入れることがあるので、消毒後のおもちゃは水で洗った方が安心できます。
消毒する際、ペーパータオルなどできちんと汚れを拭き取ってから消毒しないと効果が期待できません。身近な人が嘔吐をしている時だけでなく、汚れを処理している時にも飛沫感染がおこる可能性があるので、マスクを着けるようにしましょう。室内では、空気が乾燥することによるウイルスの浮遊を防ぐために、加湿器を利用するのもいいでしょう。空気感染のリスクを減らすことができそうです。
次亜塩素酸ナトリウムには漂白効果があるため、制服など、色が濃く買い換えられない物の消毒には使えないかもしれませんね。その場合は、85度以上の熱湯で1分以上加熱するのも消毒効果が期待できます。その際は、水やお湯のしぶきを吸い込まないように注意してくださいね。
ノロウイルスが重症化することもある 乳幼児は二次性乳糖不耐症となるケースもある
ノロウイルスは健康な大人なら回復することがほとんどですが、子どもや高齢者ではまれに嘔吐したものによって窒息したり、肺炎を起こしたりすることがあります。体調を崩して寝る時には、なるべく顔を横に向けるようにした方がよいでしょう。
また、嘔吐や下痢が数時間続くと、水分をとりにくい乳幼児や高齢者ほど脱水症状になりやすいため、少量ずつ頻繁に水分摂取を促す必要があります。尿量の減少や、ぐったりしている時は迅速に受診しましょう。
おなかの調子が戻るまでは、食物繊維や脂肪分など、おなかに負担のかかるものは避けて、おかゆやスープなど軟らかいものから普段の食事に戻したほうがよさそうです。特に乳幼児は、自分の状態を言葉にして伝えられないことがあるため、しばらくは便の様子も観察した方がいいでしょう。トイレが自立してからは、子どもが自分で流してしまう前に、大人が便を観察するタイミングを逃さないようにした方がよさそうです。「ママやパパが確認するまで、トイレのお水を流すのをちょっと待ってね。」と事前に声をかけておくのもいいかもしれませんね。
もし、乳幼児期に胃腸炎発症から2週間以上経過しても下痢が続くときは、二次性の乳糖不耐症となっている可能性がありますので、主治医の先生に相談しましょう。
たとえ、感染しても、一日も早く治して、流行の時期を乗り越えたいですね。
(新見千雅・日本気象協会 気象予報士)
監修 鈴木孝太・愛知医科大学医学部教授(衛生学講座)
引用元:
ノロウイルスに注意…感染予防に必要なこと、感染したときの消毒液の作り方(読売新聞)