卵子の提供を受けて体外受精(IVF)を行う場合、凍結卵子を用いるより新鮮な卵子を用いる方が、良好な周産期アウトカムを得られる可能性が高いことを、米コロラド大学と米デューク大学の共同研究が明らかにした。研究の詳細は「Obstetrics & Gynecology」2月6日オンライン版に掲載された。


米疾病対策センター(CDC)によると、米国では、IVFにより生まれる子どもの割合は全出生の1〜2%を占め、ドナー卵子を使用する女性の数は、毎年2万4,000人以上に上るという。IVFを受ける多くの女性にとって、ドナー卵子は、不妊治療成功の確率を高める鍵になるという。しかし、良好な周産期アウトカム(単胎妊娠で妊娠37週以降に出生体重2,500〜4,000gで生まれた場合と定義)を得られやすいのは、新鮮ドナー卵子と凍結ドナー卵子のどちらを用いた場合なのかは明らかになっていない。

この点を明らかにすべく、研究論文の上席著者である米コロラド大学医学部生殖内分泌部門のAlex Polotsky氏らは、補助生殖医療協会(Society for Assisted Reproductive Technology)のデータを用いて、2012〜2015年に行われた3万6,925件のIVFについて解析した。これらのIVFでは、凍結卵子が8,381件(22.7%)で、新鮮な卵子が2万8,544件(77.3%)で使われていた。

受精卵の質や母親およびドナーの年齢で調整して分析した結果、良好な周産期アウトカムの率は、新鮮なドナー卵子群で24.1%であったのに対し、凍結ドナー卵子群では22.0%であった。また、新鮮ドナー卵子群では凍結ドナー卵子群に比べ、生児出産率が高く(47.7%対39.6%)、多胎出産率が低く(22.3%対31.2%)、早産率も低かった(27.6%対30.6%)。

こうした結果を受けて研究チームは、「IVFでは、多胎妊娠と、母体および胎児に影響を及ぼす合併症の発生を予防するために、単一胚移植が増えつつあるが、今回の結果はその流れを支持するものである」と結論付けている。また、Polotsky氏は「この知見を得たことで、これからは、新鮮なドナー卵子を使用し、複数胚移植ではなく単一胚移植を選択することが、母子の健康状態を保つための最良の選択であると自信をもって言える」と話している。

一方、論文の筆頭著者である米デューク大学産婦人科准教授のJennifer Eaton氏は、「この研究では、新鮮なドナー卵子を用いる方が、わずかながらも利点のあることが示された。しかし、凍結ドナー卵子には新鮮なドナー卵子に比べ、簡便さ、費用、スピードの点で利点がある。IVFを行う場合は、医師と患者の双方が、それぞれの卵子のリスクとベネフィットを理解することが重要だ。また、医師が患者とIVFについて相談する際は、この新たな知見と、既に分かっている凍結卵子の利点を比較検討するべきだ」と述べている。(HealthDay News 2020年2月13日)

引用元:
体外受精では新鮮なドナー卵子が良好な出生を招く(QLife Pro)