【日本人で良かった!公的医療保険】

 米国在住の50代の日本人女性Aさんが乳がんを宣告され、治療に奔走する話の続きです。ようやく、定評がある地域の病院で、がん検診の再検査を受けられることになったAさんでしたが、そのあとがまた大変でした。

 再検査担当の医師が実施したマンモグラフィーで悪性の疑いがあり、悪性度を調べる組織検査を追加されました。その結果、手術が必要だということになり、今度は担当医から乳腺外科医を紹介され、その話し合いでようやく治療方針が決まりました。精密検査の造影MRIを自ら手続きし、結果もウェブで自ら確認しました。先生方の連携がちゃんとしているか見えないので自分でどんどん動かなくてはいけません。どうやら治療が必要そうなので、乳腺外科医の先生の連絡を待っていましたが、連絡は一向に来ない。ここはきっとうかうかしてはいられないのだと勘が働き、自分から外科医に電話し、手術を予約しました。

 結局、手術は3回受けることになりました。毎回手術範囲を最小にしようとするのはありがたいのですが、それでも、手術時間を含めた病院滞在時間がわずか3時間ということには国による差を実感します。しかも、病院へのお迎えや夜の付き添いが必要になり、1人暮らしのAさんはお友達に頼み込んで迎えに来てもらい、泊めてもらいました。最初の2回はいずれも「断端陽性」、要するに取り切れていないという結果でした。そこで3回目の手術は全摘を勧められ、形成外科医も登場することになりました。

 今度の手術は当日入院の翌朝退院。3回とも、手術前ちょこっと言葉を交わすだけで、手術後に外科医に会う、というシーンはありません。退院のときは看護師さんと雑談しながら、なんだかヘアサロンに髪を切りに来たくらいの簡単な退院です。退院時にはまだ体に廃液のための管が入ってます。朝晩2回、自分で廃液量を測定して記録し、診察に持っていく。水曜日に手術して、翌月曜日の診察ではまだ廃液量が多くて抜管できず、木曜日になってやっと抜管。その翌週の木曜日からは、もう乳房再建のために食塩水の注入を開始するというタフなスケジュールです。これらのプロセスの間、ほぼひとりで、病院を訪れ、あれこれと交渉し、サバイバルに乗り切ることになるのです。

 Aさんには「もしかすると、自分が加入している保険ではなく、もっと少し高い保険なら、患者が自ら調べるのでなく、専門知識を持った誰かがやってくれるかもしれないのかな」という思いがよぎったそうですが、米国では、そうでもない話をよく聞きます。


引用元:
米国の乳がん治療の実際 検査も手術も自分で予約しなければ進まない(Yahoo!JAPANニュース)