その女性は「すべての病気は回復過程であり、必ずしも苦痛を伴うものではない」と考えた。そこに新鮮な空気や陽光、清潔さ、食事の世話などが欠けると、痛みや苦しみが生じる。そうした知識や注意力を持つことが看護する者の責任である▼「白衣の天使」ことナイチンゲールの理論だ。19世紀半ば、クリミア戦争の不衛生な野戦病院を経験して得た実践的な知識を著書「看護覚え書(がき)」にまとめた▼今年は彼女の生誕200年にあたる。その記念にと、国際看護師協会が提案して、世界保健機関(WHO)は2020年を「国際看護師・助産師年」と決めた。WHOは母子や高齢者のケアに欠かせない看護師・助産師を30年までに9百万人増やす目標を掲げる▼ナイチンゲールは自らを犠牲にするような献身的看護には否定的で、経済的支援の重要性も説いた。地域医療の担い手不足に悩む今の日本にとって大事な視点だろう▼道は昨年、看護師、准看護師、保健師、助産師の「看護職員」を25年までに7500人確保する必要があるとの推計をまとめた。高齢者の増加に伴い、在宅・介護分野の需要が大幅に増えるとみている▼大病院が集中する都市部より、地方が厳しい。人材育成や就労環境改善など課題は尽きない。必要なのは予算に裏付けられた実効性ある政策だ。病気の本質を見つめる看護職員の存在意義をよく考えるべき年であろう。

引用元:
看護師・助産師の年(北海道新聞)