目次

● 【妊娠中に起きやすいおしっこのマイナートラブル】


おしっこが近い!「頻尿」


おしっこが残っている!?「残尿」

● 【妊婦は膀胱炎になりやすい?】


尿路感染症とは?


妊婦は症状がなくても治療が必要?


早期治療を!

● 【尿路感染症の症状と治療】


膀胱炎の症状と治療


腎盂腎炎 の症状と治療

● 【膀胱炎にならないために日常生活で気をつけること】

● まとめ









この記事の執筆・監修ドクター

松峯美貴先生


医学博士、東峯婦人クリニック副院長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(ともに東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします!どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/




【妊娠中に起きやすいおしっこのマイナートラブル】


次の2つが妊娠中に起こりやすい代表的な泌尿器系のマイナートラブルです。こまめにトイレに行けるスケジュールを工夫するなど、生活上の工夫で対処しましょう。


■おしっこが近い!「頻尿」


妊娠中は母体の体重増加や赤ちゃんへの血液供給が必要になり、体を巡る血液の量が増えます。すると腎臓がろ過する血液量も増えることとなり、ろ過されて出る水分(原尿)も多くなって尿の量が増えるため、トイレが近くなります。


■おしっこが残っている!?「残尿」


膀胱は風船のような構造です。尿がたまると膨らみ、筋肉がしぼんで尿を排出します。しかし妊娠中は分泌量が増しているプロゲステロンなどの影響で膀胱の周囲の筋肉が緩み、膀胱を収縮させる機能が低下するため、尿を出しきれず、残尿が起こります。

これらは妊娠による生理的な体の変化で起こることですが、膀胱炎などの「尿路感染症」の症状である可能性もあります。生理的な変化が原因であれば出産後には回復しますが、尿路感染症が原因の場合は注意が必要です。



【妊婦は膀胱炎になりやすい?】


妊娠中は、膀胱炎をはじめとする「尿路感染症」になりやすいとされています。それは次の3つの原因があります 。

@ 尿の逆流
腎臓から膀胱へ尿を運ぶ「尿管」は腰の内側を通っています。妊娠が進むにつれ大きくなっていく子宮が尿管を圧迫すると、尿管の中の尿の流れが滞り、膀胱から尿管への逆流が起こることがあり、細菌感染のリスクが増えてしまいます。また 、ホルモンの影響で尿管の状態が変化することでも、逆流しやすくなっています。

A 膣内の環境の変化
妊娠していないときは常在菌(デーデルライン桿菌)が腟内を強い酸性に保ち、雑菌などが増殖するのを防いでいます(腟の自浄作用)。しかし妊娠中はこの菌が減少するため、腟内で細菌が増殖し、隣の尿道口に入り込みやすい状態になります。

B 残尿
先に述べた残尿も膀胱炎の原因のひとつです。適度に温かく、さまざまな栄養素も含む残尿は、「細菌が増えやすい環境」が整っているのです。


■尿路感染症とは?


名前の通り尿路(尿道〜腎臓の間)で起こる感染症で、大腸菌が原因菌であることが多いです。

細菌感染は尿道から膀胱、尿管を経て腎臓に進み、炎症が膀胱で起きていると「膀胱炎」、腎臓および腎盂で起きていると「腎盂腎炎(じんうじんえん)」と呼ばれます。

病気の有無は尿検査でわかり、必要に応じて超音波検査も行うことがあります。





■妊婦は症状がなくても治療が必要?


妊婦の15%[*1]に起こっているとされる「無症候性細菌尿」は、膀胱炎や腎盂腎炎の原因となります。特に無症候性細菌尿から腎盂腎炎の発症リスクは、妊娠していない時に比べ、20〜30倍も高まります[*2] 。

この細菌尿は「無症候性」とあるとおり自覚できるような症状がなく、初期の妊婦健診で行われる尿検査でわかることが多いです。

妊娠していない場合はほとんど治療を行いませんが、妊娠中は無症候性細菌尿を治療することで腎盂腎炎を20〜40%程度予防できるとされ[*2] 、積極的な治療が勧められています。



■早期治療を!


尿路感染症は早期発見・早期治療が大切です。感染が腎臓に及ぶ腎盂腎炎になってしまうと母体に発熱などの全身症状が出て、敗血症性ショック(細菌感染による重大な臓器の障害)、切迫早産、前期破水のリスクとなってしまうので、次に紹介する症状があったら早めに受診してください。


【尿路感染症の症状と治療】


■膀胱炎の症状と治療


「膀胱炎」は排尿痛(おしっこをする時や後にお腹や尿道などが痛む)、頻尿、尿の白濁(白くにごる)、残尿感(おしっこが残っている感じ)などの症状があります。
治療は、医師が赤ちゃんへの影響を考慮して選ぶ処方薬(抗菌薬)を服用します。



■腎盂腎炎 の症状と治療


腎盂腎炎は「有熱性尿路感染症(ゆうねつせいにょうろかんせんしょう)」とも言われ、高熱が出るのが特徴的です。ほかに膀胱炎と同じような症状や倦怠感(だるさ)、片側または両側の後背部痛などが見られます。
治療には入院が必要になることもあります。



【膀胱炎にならないために日常生活で気をつけること】



そもそも女性は尿道口と肛門の位置が近いという泌尿器の構造から妊娠中に限らず尿路感染症になりやすいので、次のような点に日ごろから気をつけて予防しましょう。

・おしっこはがまんしない
尿の滞り(うっ滞)を防ぐためにも、行きたくなったらがまんをせずトイレに行きましょう。排尿すると尿と一緒に細菌も排出されます。そのためにも、水分を過不足なくとりましょう。

・トイレでは前から後ろに拭く
原因菌のほとんどが大腸菌なので、肛門側からではなく尿道側から肛門方向へ拭きましょう。

・清潔を保つ
下着やおりものシートなど肌が触れるものと、素肌の清潔を保ちましょう。体は入浴時に全身を洗えば、特別に腟内洗浄などをする必要はありません。

・刺激のある食品を控える
香辛料やカフェインを多く含む食品、アルコールなど刺激が強いとされる食品をとりすぎないようにしましょう 。




まとめ


女性は泌尿器の構造から膀胱炎などの尿路感染症になりやすいうえ、さらに妊娠中はより尿路感染症になりやすい状態です。膀胱炎などの予防や重症化予防のためには妊婦健診などで尿検査を受けることが大切で、加えて排尿のトラブルや不快な症状がある場合には、なるべく早めに主治医に相談して、必要な治療を受けましょう。


(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです


参考文献
[*1]MSDマニュアル「妊娠中の尿路感染症」
・「臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド? いまのトレンドを逃さずチェック! 」, 医学書院, 2018.
・病気がみえるVol.10産科 第4版 , メディックメディア, 2018.




※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます


※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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引用元:
【医師監修】妊婦は膀胱炎になりやすい!症状と予防のためにできること〔マイナビウーマン)