体の外部に現れている外性器の生まれつきの形態異常(奇形)は男女ともに大変多いのですが、女性の子宮奇形も全体の5%程度に見られます。子宮奇形があっても普通に妊娠・出産できますが、不育症のリスク因子のひとつとされています。

 不育症とは、妊娠はできても、流産や死産、新生児死亡などを繰り返して子供を得られない状態をいいます。

 子宮奇形は自覚症状がほとんどないため、何かの理由で婦人科の検査を受けた時に偶然、発見されることが多いようです。子宮は普通、腟の入り口を頂点とすると子宮の内腔が逆三角形のような形をしていますが、子宮奇形は主に次のような種類があります。

◆「重複子宮」 独立した子宮が2つ存在している。腟が2つあることもある。
◆「双角子宮」 最も多いタイプで、子宮は1つだが内腔が2つに分かれていたり、内腔がハート形にくびれていたりする。
◆「弓状子宮」 子宮底部(内腔の上の部分)が少しくびれている。
◆「中隔子宮」 子宮は1つだが内腔が壁で仕切られている。
◆「単角子宮」 子宮の内腔が半分くらいないような形になる。

 なぜ、このような奇形が起こるのか。それは胎児期のごく初期の生殖器の分化が関係します。少し難しくなりますが、簡単に説明しましょう。

 ヒトの胚は、初めのうちは男女ともに「ミュラー管」と「ウォルフ管」という生殖管をそれぞれ2本ずつ持っています。

 女性の場合はその後、ウォルフ管が退化し、ミュラー管が発達します。そして2本のミュラー管は接近し合い、下の部分が癒合してY字状になります。これが女性器の原形で、下部の癒合した部分が子宮と腟の一部となり、上部の二股に分かれたところが卵管になるのです。この過程で癒合が不完全だったり、発達が途中で止まったりすることが奇形の原因とされています。

 一方、男性の場合はミュラー管が退化してウォルフ管が残ります。そして発達したウォルフ管は精巣上体(副睾丸)と輸精管となり、尿道と癒合するのです。また、外性器では女性のクリトリスの部分が男性のペニスの亀頭になり、女性の腟口にある小陰唇や大陰唇の裂け目が閉じられて、男性の陰嚢(いんのう)になります。このように生殖器は複雑な分化を経て作られるので、奇形が起こりやすいのです。それも、その人の個性ともいえるでしょう。子宮奇形は不育症や不妊症への影響が大きい場合には、手術で治療することができます。

(プライベートケアクリニック東京・尾上泰彦院長)

引用元:
子宮奇形は全体の5% 妊娠・出産はできるが「不育症」の原因に(日刊ゲンダイDIGITAL)