子宮頸がんにかかる女性が増え続け、若年化も進んでいる。対策としてヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンの接種や子宮がん検診の受診率向上が重要とされているが、なかなか進まないのが現状だ。こうした中、「がんとセックス〜パートナーと考える子宮頸がん〜」と題したセミナーが都内で開かれ、司会役を務めた中川恵一・東京大学医学部付属病院放射線科准教授は「原因はセックスによる感染。女性だけでなく男性も正しい知識をもつことが大切だ」と強調し、性交渉の低年齢化に伴う子宮頸がんの拡大に警鐘を鳴らした。

 ◇子どもを産めない体に

 子宮頸がんは性交を介したHPVが主な原因で女性だけでなく男性も感染する。HPVは性交経験のある女性の7〜8割が一度は感染する、ごくありふれたものだが、「女性ですら(感染経路を)知っている人は少なく、ましてや男性はゼロに等しい」のが実状だ。

 HPVに感染した女性のうち持続感染した人の約1割が前がん病変になる。早期発見ならほぼ100%完治するが、進行すると子宮全摘出になり、命を落とすこともある。日本全国では年間約1万1千人が子宮頸がんと診断され、約3千人が死亡している。

 性交開始の低年齢化が進行し、20〜30代で発症する女性が増加。その一方で晩婚・晩産化が進んでいる。若い年齢で子宮頸がんを発症すると妊娠、出産を経験する前に子どもを授かる可能性を断たれることになる。

◇夫の前で涙が止まらず

 今回のセミナーに参加した重田かおるさんは2008年に46歳で検診を受けた際、子宮頸がんがみつかった。突然のことで頭の中が大混乱になり、待合室で涙が止まらなかったという。さらに手術の説明を受けると、「子宮だけでなく卵巣も取ると聞いて衝撃を受けた」。

 それでも、「生きるためには仕方ないと言い聞かせ、気持ちを落ち着かせたが、術後の副作用や後遺症でより不安になった」。夫に知られたくないと思ったが、帰宅すると「夫の前でも涙が止まらなかった」と、当時のつらさを語る。

 そうした事態を防ぐためには、HPV予防ワクチンの接種と子宮がん検診による早期発見が重要とされている。

◇0.3%に急低下

 HPVワクチンは定期接種を開始した2013年当初、接種率が約70%と高かったが、副反応に関する報道などの影響もあって積極的な勧奨が中止されると0.3%に急低下した。

 子宮がん検診の受診率も4割以下と低い。中川氏は「このままではワクチンを接種した学年だけ子宮頸がんがガクッと減り、また元に戻るという由々しき事態が起こる。世界中の研究者が固唾をのんで見守っている」と、現状を憂えた。

 スウェーデンやイギリスなど諸外国では約8割がワクチンを接種しており、中川氏は「欧米では子宮頸がんが過去のがんになると言われている」と指摘。「日本だけ患者数が増えている。異常な事態だ」とした。
 ◇HPVで陰茎がん、中咽頭がん

 HPVは子宮頸がん以外にも、外陰がん、陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんなど、多くのがんの原因になり、男性にもワクチン接種は有効な予防策だ。

 フィンランドの最近の報告では、HPVに関連して発生する浸潤がん(進行がん)がワクチン接種した人ではまったく発生していないという。

 ◇長かった手術主流の時代

 子宮頸がんの治療法には、手術、放射線、化学療法がある。中川氏は「世界標準のガイドラインでは放射線療法が推奨され、欧米では2期の子宮頸がんの8割に放射線治療が行われている」と指摘。日本でも近年は約6割に放射線治療を中心とした治療が行われているが、手術が主流の時代が長かった。

 子宮頸がんを発症した重田さんは「手術でこんなにたくさん切りたくない、傷も残るし、後遺症も怖い」と感じ、夫と共に治療法の情報を集めた。放射線治療でも手術と同じ効果があると知り、最終的に化学療法を組み合わせた放射線化学療法の治療を受けた。

 現在は登山を楽しんだり、子宮がんの患者会の活動に参加したりするなど、充実した生活を送っている。
 ◇患者自身も情報収集を

 中川氏は「(手術と放射線治療の)治癒率は同等だが、手術後はリンパ浮腫、排尿障害などが起こりやすいことを考えると、放射線治療という選択肢を考えてもよいのではないか」と指摘した。

 子宮頸がんの予防、早期発見、治療選択を適切に行うためには正しい知識が不可欠。婦人科系疾患の予防啓発を行う一般社団法人シンクパールの難波美智代代表理事はセミナーで「子宮頸がんは妊娠や出産の可能性、人生の希望を奪う深刻な病気。私自身も子宮を失った。同じような苦しみをもつ女性を一人でも少なくしたいと願っている」とした。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

引用元:
若年化が進む子宮頸がん  性交で男女にHPV感染(時事通信)