不妊治療を人工知能(AI)で支援する事業が広がる見通しになってきた。晩婚化などで治療件数が増えているためで、みらかホールディングスは顕微授精と呼ぶ体外受精で使う精子の状態をAIで判定する技術を開発。2〜3年内の実用化を目指す。オリンパスも同様の技術を2020年中に開発し、専用の顕微鏡と合わせて販売する計画だ。胚培養士と呼ぶ専門職の作業の効率と精度を高められる技術として採用を働きかける。

みらかホールディングス子会社のみらか中央研究所(東京都八王子市)は、胚培養士が顕微授精に適した精子を見つける作業を支援するAIを開発した。顕微鏡で拡大観察した精子の形が正常かどうかを自動で判定。卵子に注入して受精させる精子を短時間で見つけられるようにする。

亀田総合病院(千葉県鴨川市)と不妊治療専門の亀田IVFクリニック幕張(千葉市)が開発に協力した。過去の顕微授精で撮影した約1000枚の精子の画像を活用。管理胚培養士と呼ぶ特に優れた技量が認められた胚培養士の判定を正解とし、深層学習(ディープラーニング)という手法でAIに学ばせた。

開発したAIは頭部や尾などの形が異常な精子を89%の精度で異常と判定。判定の根拠とした部位も示せた。

通常の顕微授精では、胚培養士の経験を頼りに精子の状態を判定。数個分の卵子に注入する精子を探すのに数時間かかることもあり、胚培養士の技量のばらつきも大きい。亀田IVFクリニック幕張の川井清考院長は「AIを使えば胚培養士の負担をかなり軽くできる。技術水準の底上げにもつながる」と話す。

今後は学習データの量を増やすなどして、AIの判定精度をさらに高める。顕微授精を支援するソフトウエアとして2〜3年内に事業化する狙いだ。精子の形に加えて動きが正常かどうかを判定できるようにすることも目指す。

一方、オリンパスも東京慈恵会医科大学と同様の技術を開発している。1000件の顕微授精の症例から最大1万件分の学習データを作り、精子の形や動きを総合的に評価できるAIを実現するという。20年末までに開発する。

日本では不妊治療の受診や体外受精の件数が増えている。16年には国内の新生児の約6%が体外受精で生まれた。一方、胚培養士は1200人ほどで、管理胚培養士に限ると十数人にとどまる。体外受精の効率化や技術の底上げが課題となっている。

国際的にも、米調査会社マーケッツアンドマーケッツによると不妊治療関連の市場は18年の15億ドル(約1600億円)から23年には22億ドルに拡大する見通し。AIなど先進技術の適用が追い風を生む公算が大きい。


引用元:
オリンパスなど、男性不妊治療をAIで支援 (日本経済新聞)