今日(10月1日)から増税。その前に駆け込みで自宅のリフォームを検討したという人も、少なからずいただろう。信州大学などの研究グループは、自宅のリフォームに関連した気になる研究結果を発表した。「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した妊婦およそ6万7,000人のデータを用いて、妊娠中の増改築を含む自宅の内装工事や職業上の有機溶剤の使用と子供の先天異常との関連を調べたところ、妊娠中に自宅の内装工事を行った母親から生まれた男児で、外性器に異常が生じるリスクが高まることが明らかになったという。詳細は、Sci Rep(2019; 9: 11564)。

エコチル調査の参加妊婦6万7,000人超を解析

 先天異常の発生に関しては、これまでにさまざまな職業的あるいは環境的な要因が関与していると指摘されている。器官形成期に当たる妊娠初期(3〜8週)の化学物質への曝露が、胎児の先天異常に影響しうるとの報告がある。また、曝露時期だけでなく、曝露量によっても発生する先天異常の種類が異なる可能性がある。

 海外では、内装工事に使用される有機溶剤への妊婦の曝露が、出生児の先天異常のリスクになるとの報告がある一方で、関連性はないとする報告もあり、一貫した結論は得られていない。そして、これまでに日本では、妊婦の有機溶剤への曝露が出生児の先天異常に及ぼす影響についての研究は行われていない。

 そこで研究グループは今回、妊娠中の自宅内装工事および職業上の有機溶剤やホルムアルデヒドへの曝露が、子供の先天異常の発生にどのような影響を及ぼすかについて検討した。解析対象は、エコチル調査に参加した妊婦6万7,503人(出生児:男児3万4,342人、女児3万3,161人)。先天異常発生の関連因子となりうる妊婦の年齢、妊娠前の体格指数(BMI)、妊婦本人と配偶者の喫煙歴、飲酒歴、教育歴、世帯収入、妊娠中の母体合併症などを調整後に分析を行った。

 今回の対象に含まれた有機溶剤は、シンナー、試験・分析・抽出用溶剤、ドライクリーニング用洗剤、染み抜き溶剤、ペイント塗料、除光液など。検討した先天異常は、生後1カ月までに診断された先天性心疾患、口唇口蓋裂、男児の外性器異常(停留精巣、尿道下裂)、四肢形成異常(多指、裂指、合指など)、消化管閉鎖(食道閉鎖、十二指腸閉鎖、鎖肛など)だった。妊娠に気付いてからの自宅内装工事の有無と、職業上の有機溶剤やホルムアルデヒドの使用状況(半日以上の使用が1カ月に1回以上あるか)については、妊娠中期または後期に行った自己記入式質問用紙への回答を用いた。
妊娠中の内装工事で男児の外性器異常が1.81倍に

 妊娠中に自宅内装工事が行われたのは2,106人で、職業上、有機溶剤やホルムアルデヒドを使用していたのは6,305人だった。発生した先天異常は、先天性心疾患が756人、口唇口蓋裂が160人、男児の外性器異常が253人、四肢形成異常が176人、消化管閉鎖が45人だった。

 解析の結果、妊娠中に自宅の内装工事が行われた母親から出生した子供は、行われなかった母親から出生した子供に比べて、男児の外性器異常の発生率が1.81倍と明らかに高かった。

 研究グループは「停留精巣は1歳くらいまでに自然軽快することもある。今回の研究では出生時のデータを用いたため、発生リスクを過大評価している可能性がある」とコメントしている。

 男児の外性器異常以外の先天異常に関しては、妊娠中の自宅内装工事の有無との間に明らかな関連は見られなかった。また、妊娠中の職業上の有機溶剤やホルムアルデヒドへの曝露と、先天異常の発生との間にも関連は確認されなかった。
正確な曝露量が分かる生体試料による研究へ

 研究グループは、研究の限界として次の2点を挙げている。まず、妊娠中のどの時期に自宅の内装工事が行われたかに関しては情報を収集しておらず、胎児の器官形成時期の曝露であったか否かについて検討できていない点。もう1つは、内装工事に使用される化学物質の種類は多く、どの物質がどの程度(量や頻度)影響しているかについて評価していない点だ。研究グループは「これらを考慮した研究が必要だろう」としている。

 最後に研究グループは「従来の研究は、今回同様に質問用紙への記入、面接、電話インタビューなどによる情報収集が大半であった。しかし最近では、停留精巣、尿道下裂に関して、胎盤や血液、母乳などの生体試料を用いた研究が実施され始めている。今後は、曝露量をより正確に反映する生体試料を分析し、化学物質と先天異常との関係を検討したい」との意向を示している。

引用元:
妊娠中のリフォームは男児のリスク!?(kenko100.jp)