風疹の流行を食い止めようと、厚生労働省が始めた取り組みが進んでいない。感染者の多い中年男性は、抗体検査と予防接種を無料で受けられる仕組みだが、出足が鈍い。

 この病気が問題視されるのは、妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんに白内障や難聴、心臓の病気が出やすいからだ。「先天性風疹症候群(CRS)」と呼ばれる。今年は既に3例の報告がある。

 風疹は2013年に大流行した。昨年夏から再び増え始め、今年は2176人が診断された。全体の8割が男性で、その半数は40歳以上だ。

 中年男性に多い理由は、今年4月現在で40〜57歳の男性が、一度も公的な予防接種を受けていないことにある。子ども時代に風疹にかかって免疫を獲得した年長者や、制度によって予防接種を受けた人たちに比べると、抗体を持つ人の割合が低く感染しやすい。今回の流行は、中年男性が家庭や職場、取引先で意図せず広げている可能性が高い。

 厚労省の取り組みは3年がかりだ。約1500万人いるこの世代の男性全員に無料クーポンを順次郵送し、対処を勧める。今年度は40〜47歳の646万人が対象だ。だが、6月末までの3カ月間に抗体検査を受けたのは5%の34万人にとどまる。

 働き盛りで検査を受ける時間的余裕がない人もいるだろう。各企業の定期健康診断で、血液検査の項目に組み込む方法が有効だ。自治体によってはクーポンが届いていない人や女性にも抗体検査費用を助成する制度を用意している。

 感染症を制御できる予防接種は、公衆衛生を保つための有効な手段だ。今回の対策には、初年度だけで国・地方合わせて60億円の公費が投じられる。貴重な機会を生かしたい。

 日本が風疹を克服できるか、海外も注目する。米政府は妊婦に対し、日本への渡航を控えるよう勧告した。東京五輪・パラリンピックが開かれる来年夏までこうした状態が続けば、国際的な信用にもかかわる。

 自分の健康を守り、他人の健康を損なわないという責任は誰にもある。今は元気でも、自分が感染することで家族や生まれてくる孫が被害を受けるとしたらどうだろう。想像力を働かせ、具体的な行動につなげてもらいたい。

引用元:
中年男性の風疹 感染広げぬ責任果たそう(毎日新聞)