助産師が、産後間もない母親の自宅を訪問する「茨城県助産師なんでも出張相談」が5年目を迎えた。利用者数は延べ1051人(2018年度)。出産を取り扱う医療機関が地域偏在する中、開業助産師たちが地域ごとに分担し、母乳の出具合や産後の体調の相談に乗り、産後ケアに力を注いでいる。中には、「産後うつ」を早期発見し、必要な支援へつなげるケースもある。

「生後1カ月の子どもを連れて外出するのは首も据わっていないので大変。乳腺炎になり、痛くて我慢ができない」。9月初旬。生後1カ月の長女、もも子ちゃんを育てる鈴木晶子さん(28)は、水戸市内の自宅で、助産師の畠山みき子さん(51)から母乳マッサージを受けたり、育児について質問したり、約2時間のサービスを受けた。

出産後、すぐに乳腺炎になり、何度か長女を産んだ産婦人科へ通ったが、「助産師さんに自宅まで来てもらえるので助かる。(胸の)痛みが和らいだ。もう一度利用したい」とほほ笑んだ。

出張相談を担当するのは、経験豊富な開業助産師たち。44市町村を28人の助産師で担当する。畠山さんは、産婦のニーズを聞き、地域の助産師につなぐコーディネーター役も務めている。多い人では5、6市町村担当しているという。

中には、産後うつが疑われるケースもあり、「年間5、6件だが、本人の同意を経て、市町村へ連絡し、必要な支援につなげている」と畠山さんは話す

県医療政策課によると、出産を取り扱う医療機関(病院・診療所・助産所)は51施設(9月1日現在)。県内21市町で出産を取り扱う医療機関がなく、産後に授乳や母親自身の体調を相談できる医療機関が偏在しているのが現状だ。

訪問件数は、初年度の15年度は延べ1626人。16年度は1628人。17年度は1513人と減少傾向にあるが、県少子化対策課は「自宅近くに産科がない人もいる。産後は身体がつらい時期。助産師さんが自宅に来てもらえるのはお母さんの負担軽減になる」と話す。

畠山さんは「里帰りをしない産婦さんもいる。孤立化もある中で、質の高いケアでお母さんたちを支えたい」と意気込む。

問い合わせは(電)080(5962)1103(平日午前9時〜午後5時、祝日・年末年始を除く)。(鈴木聡美)

★助産師なんでも出張相談
2015年度に県が県助産師会に委託して始まった事業。主な対象者は、県内在住者で、産後3カ月未満までの赤ちゃんを育てる初産婦(里帰り出産者は含まない)。経産婦も可。電話予約後、開業助産師が訪問し、授乳や育児の相談に乗る。1回の訪問は約2時間。原則、1人1回の利用だが、必要に応じて2回まで利用できる。1回の自己負担料は千円。

引用元:
茨城県助産師出張相談が5年目 育児、産後ケアに力 18年度1051人利用 自宅訪問し負担軽減(茨城新聞)