――不妊治療を始める平均年齢は、何歳だと思いますか?
周囲の女性に聞いてみたところ、30代後半から40代前半を挙げる声が多かった。しかし実際に不妊治療を始めている方の平均年齢は33歳。さらに20代に開始した方も14%。不妊治療は決して「アラフォー以上」の話題ではない。
ところが当事者にもっとも近いはずのアラサー女性ですら、その実態を知らない。なぜなら、不妊治療の当事者はそのことを伏せがちだからである。
当事者同士でないと語れない妊活
そもそも、夫婦の35%は子どもができずに悩んだ経験がある(参照:知られざる男性不妊、実は「あの行為」が妊娠を阻んでいた可能性)。18%は実際に不妊治療へ進む。
だが、そのことは驚くほど知られていない。「不妊治療をしよう」と覚悟を決めた女性が産婦人科へ赴いてから、初めて知ることも多いという。
“妊活”と、よりソフトな言葉に置き換わっても、現状は変わらない。その実情を30代の既婚女性はこう語る。
最初は、「あれ?」という違和感でしかないんですよ。子どもがそろそろできてもいいのにな、だって夜もしてるのにな、って。普通にしてたらできるだろう、って思ってたんですね。むしろ、妊娠しないようにばかり気をつけてきたし。それが1年たって、あれ……できないぞ? って思って。でもそれだけじゃ、病院まで行かないですよね。健康診断はオールAだったっていうのもあるし……もし自分のせいで不妊だったらどうしようって、不安に向き合うのも怖いですし。
この女性は最終的に産婦人科を受診。不妊治療を勧められたが、友人には話せなかったという。
なんかね、重い話題だなあって。聞いた方もズーンって、なるじゃないですか。だから言えなかったですね。話してもわかってもらえないだろうし、じゃあ、子持ちの友達から変に気を遣って慰められても嬉しく思えないっていうか……。そういう喜べない自分も嫌になるしね、ますますね。結婚してない友達に話して、「旦那さんがいるだけいいじゃん!」って思われたり、むしろマウンティングに見えちゃったらどうしよう、とか。
結局彼女は、情報源を医師とSNSに頼った。Twitterで妊活の当事者だけが知っているキーワードで探すと、「妊活垢(妊活、不妊治療について語る専用のアカウント)」がずらりと出てくる。そこで仲間同士励まし合うのだ。
だが、妊活仲間のうち何割かは、いずれ妊娠して卒業していく。逆に病んでしまい、妊活をあきらめる夫婦もいる。仲間同士で支え合うといいつつも、月に一度「妊娠していないしるし」が来るたびに心はアップダウンを繰り返す。
きちんと妊活を始めたのが、34歳のときだったんですね。だけど、もっと独身のうちから知っておきたかったです。「20代でも妊娠できないって普通にあるんだよ」とか、「若いうちに検査をしておけば、対策は全然間に合うんだよ」って。なんであの時に検査しなかったんだろう……って、後悔するよりもね。
私も、閉経が早まるリスクがあった
その言葉を聞いたのもあり、筆者も8月に検査を受けた。といっても、産婦人科へ行ったのではない。「F Check」という、自宅で卵巣年齢を診断できるキットを手に入れたのだ。卵子の数は生まれた段階で決まっており、そこから徐々に減っていくから増やすことはできない。
卵子の周りの細胞から出るホルモンであるAMHの値で、卵子の残数を推測することができる。そしてこの値が低いと、早期閉経のリスクがあるという。
筆者の実年齢は32歳。そして自宅検査の結果、私の卵巣年齢は42歳だった。残された卵子の少なさに、うっと声が出た。確かに若いころから激務で体を酷使してきたうえに、冷え性で交感神経も鈍い。適当な食生活で、運動もしていない。自業自得と言われればそれまでだが、いざ数字で突きつけられると、クラクラする。
妊活はむしろ、独身のうちから知っておこう
けれど確かに、今知ることができてよい結果だった。もし「今は仕事に集中したいから」と40代まで結婚も妊娠も考えず、いきなり数値を見たら後悔しただろう。人より残された期間が短いかもしれないよ、と知りながら仕事を選ぶのと、「何とかなるだろう」と考えて後回しにするのでは話が違う。
そして、若いうちであれば対策もとれる。まず、卵子凍結だ。いざ将来、体外受精をしようにも卵子が採取できなければ苦労は長引く。さらに、卵子の質は実年齢と関係する。いま採取した卵子と、10年後の卵子では質も変わるのだ。この検査結果がなければ「うーん、卵子凍結に40万円か……やめとこう」と、即座に諦めていただろう。
そして、検査結果は人生設計を考え直すチャンスになった。「本当に私は子どもが欲しいだろうか。実子でなくちゃいけないんだろうか。いま仕事に集中して、後からDINKS(子供をつくらない共働き夫婦)を選んだときに泣かないだろうか」と、さまざまな選択肢を考え始めた。
また、ちょうどいいタイミングで「独身でも読める妊活本」が世に出たこともある。これまで、妊活にまつわる書籍は当事者向けの内容が多く、独身にとっては本屋のレジへ持って行ったり、目を通したりするには心理的ハードルが高かった。そんな現状に悩んでいたのは、専門家も同じらしい。
ちょうど今年、妊活を考え始めた人が男女問わず”基礎知識のお勉強”として学べる『やさしく正しい 妊活大事典』が出版されている。内容は、体外受精の件数や、妊活のステップなどを医学的データを用いてやさしく図解したものが主となっており、"いつかは産みたいが、今は予定がない"人も読みやすい構成になっている。書籍や自宅検査キットなど、独身でも妊活を知りやすい土壌は整いつつある。
独身のうちにこそ、妊活は知っておくべきだ。そしてできれば、ブライダルチェック以前に、自分の体を知る意味で検査も受けておきたい。
引用元:
卵巣年齢が10歳も上…独身のうちに知るべき「30代不妊」の可能性 (現代ビジネス)