不妊を巡っては女性側の原因だけが注目されがちだ。しかし、男性側に何らかの原因がある割合が48%に上るとの調査結果を世界保健機関(WHO)が示している。男性に不妊に関する知識が不足していたり、自らの原因に向き合う不安から、診断が遅れ、治療を開始できない恐れがあるという。専門家は「適切な治療を受けることで赤ちゃんを授かる可能性がある」として、男性不妊症の専門医への受診を呼び掛けている。


男性不妊について説明する小堀准教授=24日、大阪市中央区の府立男女共同参画・青少年センター
■精子が減少
 「かなりの数の人で男性の不妊症の可能性があり得ると仮定できる」。獨協医科大埼玉医療センター泌尿器科・リプロダクションセンター(埼玉県越谷市)の小堀善友(よしとも)准教授(44)は24日、大阪市中央区の府立男女共同参画・青少年センターで行われた講演会でこう指摘した。

 小堀准教授によると、男性不妊の患者は国内で80万人に上ると仮定できるという。この要因を「精子が減ってきているのでは」と語る。

 西欧の不妊学会の雑誌の内容に触れ、「50年間で40%も精子が減ったのではないかという衝撃的なデータがある」と紹介した。

 また厚生労働省の男性不妊に関する研究班が、2015年に行った調査によると、男性の不妊原因は、精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」が82・4%に上った。このうち半数以上は原因が分からない「特発性」で、治療が行いにくいとされる。

 小堀准教授はこのことについて「一つ言えるのは、女性の卵子の老化が言われているが、精子も35歳を過ぎるとどんどん老化する。精液の量や濃度、運動率などの全てが年を取ると下がる」。治療には老化のストレスを下げるための生活習慣改善や適切な睡眠、禁煙などがいいと話す。

■早期発見に有効
 一方、男性不妊への社会の関心は徐々に高まっているが、男性自身は不妊クリニックに抵抗があり、行きたがらないという心理的な壁がある。「精液検査などわざわざ病院で受ける必要はない、時間もない」。こんな男性たちの声を小堀准教授は耳にしてきた。

 そこで、自宅でスマートフォンを使って簡単に自分の精子の状態を観察できる市販のキットの利用を提案。「きれいに見ることができる」(小堀准教授)といい、早期に男性不妊症を発見し、治療を進めることができるとメリットを挙げる。ただ誤った自己判断をする恐れもあり、インターネット上で専門家につなげるサービスが必要だとしている。

国の支援制度拡充
 厚生労働省によると、2017年度の全国の不妊専門相談センターの全体の相談件数は2万4830件で増加傾向にある。また男性不妊に関しては、19年度から精子を採取する手術を受けた場合の初回の助成額を15万円から女性と同じ30万円に拡充し、経済的な負担の軽減を図っている。

 大阪府不妊専門相談センターの18年度の電話相談は246件で、主訴が男性不妊のものは14件だった。同センターは電話06(6910)8655。

引用元:
男性不妊、専門医受診を 国内80万人、知識不足も(大阪日日新聞)