子宮頚がんは年間約2900人が死亡し、20〜40代の女性に増えているがんだ。子宮頚がんについて、NTT東日本関東病院産婦人科主任医長の近藤一成医師に聞いた。

 子宮頚がんのほとんどは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因。非処女の50〜80%は生涯で一度、感染機会があると考えられている。

「HPVに感染すると“異形成”という状態を経て、子宮頚がんになります。異形成は軽度、中等度、高度とあり、このうち高度が前がん病変であり、前がん病変の一部が進行して、子宮頚がんに至ります」

 検診などで異形成の段階で見つかった場合、3〜6カ月ごとの定期検診で前がん病変に進行しないかチェックする。前がん病変またはごく早期のがんなら、子宮頚部を円錐状に切除する円錐切除術だ。進行がんであれば、子宮全摘や放射線治療・抗がん剤治療になる。

「円錐切除術は子宮温存も可能ですが、不正出血や将来の妊娠時の流産や早産のリスクを高めます。さらに進行がんでは予後は良くなく、排尿障害、下肢のリンパ浮腫などの術後の後遺症がある。産婦人科医の大半は、子宮頚がん対策には子宮頚がんワクチン接種が不可欠だと考えています」

■ワクチン接種は全世界で続々と導入されている

 日本では子宮頚がんワクチンは現在、定期接種であるものの、「積極的勧奨」はされていない。接種後に慢性疼痛や運動障害などの症状が報告されたからだ。そのため、自治体から個人への個別通知で予防接種を勧めておらず、子宮頚がんワクチンの存在自体を知らない人も多い。WHOが推奨し、全世界で予防接種プログラムを導入する国が相次いでいる一方で、日本は稀有な存在だ。

 検診で早期発見に努めればいいのでは……という声もある。

「しかし早期発見で円錐切除術がOKだとしても、前述の通り、リスクがある。初期の異形成ではがんになるかも分からないのに、定期検査を受け続けなければならない。より問題は、子宮頚がんには扁平上皮がんと腺がんがあり、近年増えている腺がんは、検診では早期発見が困難といわれている。子宮頚がんの検診には限界があると考えざるを得ないのです」

 検診での早期発見は2次予防であり、必ず治療を伴う。一方、子宮頚がんの1次予防は、HPVの感染を防ぐことだ。

「1次予防と2次予防を混同してはいけない。感染しなければ前がん病変ができず、子宮頚がんにもならない。ワクチン接種でHPV感染と前がん病変発生を予防できることは、大規模な臨床試験で証明されています。いち早く定期接種プログラムを開始した欧米では、HPV感染率、前がん病変発生率が大幅減少。感染から子宮頚がんになるまでは人によって大きく異なりますが、接種開始20年以降は、欧米では子宮頚がんは希少がんになる可能性が大きい」

 気になるのは、安全性だ。名古屋市の疫学調査では、ワクチン接種後に報告された多様な症状はワクチン接種とほとんどが関連していないという結果がはっきり出ている。厚労省の全国疫学調査でも、ワクチン接種歴がない方にも、接種歴のある方に報告されていたものと同様の症状が一定数見られた。

「つまり、ワクチン接種で報道されているような副反応があきらかに増えているとは、言えないと考えています」

 まずは正しい知識を。ネットで日本産科婦人科学会の解説を見ることができるし、区役所や市役所にはパンフレットが置いてある。若い女性の将来の健康のために。

 子宮頚がんワクチンは現在、小6〜高1の女児は無料で接種できる定期接種。希望者は、各地区の保健センターでワクチン接種の問診票を請求する必要がある。無料の対象年齢以外も、有料だが接種が推奨される。

引用元:
20〜40代に増加中「子宮頸がん」早期発見でも喜べない理由(日刊ゲンダイ ヘルスケア+)