や国民病ともいえるがん。自分には関係ない病気だと思っていても、周囲にがん経験者がいるということも珍しくありません。かつては、不治の病というイメージが強かったがんですが、現在は治る病気になってきているようです。今回は、ファイナンシャルプランナーの平原直樹(所属:ブロードマインド株式会社)が「国立がん研究センター 最新がん統計」をもとにがんの現状について解説いたします。
■一生涯でがんになる確率は?
一生涯で、がんになる方(罹患する方)の割合をご存知でしょうか?なんと、男性は62%、女性は47%と非常に高い割合となっています。女性もほぼ半数の方が一生涯のうちにがんを経験することになりますし、男性に至ってはがんにならない方の方が少ないという状況です。
ちなみに、部位別でみてみると男性に多いがんは、胃、肺、大腸、前立腺の順番となっています。一方、女性で多いがんは、乳房、大腸、胃、肺の順となっており、男女でがんになる部位が異なるということがわかります。
なお、がんになる方の割合は、男女ともに年々増加しています。
1975年と2015年を比較すると、男女全体で1975年206,702人 → 2015年903,914人となっています。がんの罹患者数は約4.37倍になっているということですね。
男女別でみると、下記のようになっており、男女で比較すると男性の方の方が罹患率は増加しているようです。
(男性)1975年 110,782人 → 2015年 517,536人 (約4.67倍)
(女性)1975年 95,920人 → 2015年 386,378人 (約4.03倍)
(参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
では、なぜこれほどがんになる方が増えているのでしょうか?
食事の欧米化や運動が少なくなったなど、生活習慣の変化が大きいといわれていますが、忘れてはいけないのが長寿化の影響です。一般的にがんは高齢になるほど罹患率が上がります。つまり、長寿化が進んだ結果、がんになる可能性も増えているということですね。
さて、がんになる方が増えているということは、がんで死亡してしまう方も増えているのでしょうか?
上記と同じ期間で比較してみると、男女全体では1975年:136,383人→2015年:370,346人(約2.71倍)と、がんで死亡してしまった方は増えてしまっています。男女別でみると、下記のようになっています。
(男性)1975年 76,922人 → 2015年 219,508人 (約2.85倍)
(女性)1975年 59,461人 → 2015年 150,838人 (約2.54倍)
(参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
これだけ医療が発展しているのに、死亡者数が増えるのはおかしい!と感じた方もいるかと思いますが、落ち着いて数字をみてみましょう。がんになる方が増えたので、がんで死亡した方も増えていますが、がんで死亡した方の割合(死亡率)は下がっています。
がん罹患者は1975年⇒2015年で約4.37倍の増加ですが、がん死亡者は1975→2015年で約2.71倍の増加となっています。この数字を見ると、実際にがんで死亡した方の割合(死亡率)は下がっていることがわかりますね。「がんは治せる病気になっている」という話も耳にすることが増えましたが、数字でも確認することができますね。
■現役時代は女性の方ががんになるリスクが高い!?
前述のように、男女で比較すると男性の方ががんになるリスクが高いことがわかります。しかしながら、年代別で区切るとまた違った見え方になるのです。
がんの罹患者を現職時代(20歳-64歳)で区切ってみてみましょう。
(男)1975年 51,777人 → 2015年 113,130人(約2.18倍)
(女)1975年 52,947人 → 2015年 129,417人(約2.44倍)
なんと現職時代で比較すると、男性と比較して女性の罹患率がより高いことがわかります。つまり、現職時代で考えれば、女性の方がよりがんのリスクが高いということです。これは、女性の部位別で1位となった乳がんが、高齢期(65歳以上)よりも現職期の方が罹患率が高いことが大きな要因です。
実際に2015年のデータで、現職期(20歳〜64歳)と高齢期(65歳以上)を比較してみましょう。
現職期(20歳〜64歳)の乳がん罹患者:48,869人
高齢期(65歳以上)の乳がん罹患者: 38,180人
第2位の大腸がんと比較すると、この特徴が顕著にわかります。
現職期(20歳〜64歳)の大腸がん罹患者:13,973人
高齢期(65歳以上)の大腸がん罹患者: 46,069人
高齢期の方が、圧倒的に大腸がんの罹患者数が多いことがわかりますね。
(参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
現職時代にがんに罹患してしまった場合、仕事と並行しながら治療をすることになります。入院時はもちろん、通院の度に会社を休むことも予想されますね。次回は治療と仕事の両立について、解説いたします。
引用元:
がんになりやすいのは男性、女性どちらが多いの?(Sodan)