妊娠はするものの、流産や死産を繰り返す「不育症」。社会的な認知度が低く、専門医も乏しい中、出産前にわが子を失ってしまう当事者は深い悲しみに包まれ、孤立しがちだ。当事者グループ「不育症そだってねっと」が実施した全国規模のアンケートで、そんな苦悩が浮き彫りになった。今、求められる支援とは−。
アンケートは不育症に悩む人々の声を社会に届けようと、全国に拠点を持つ同グループが昨年12月〜今年4月に実施。インターネット上で23項目を尋ね、367人が回答を寄せた。
当事者たちは希望に満ちた妊娠生活から一転、赤ちゃんとの別れに直面する。つらかったこと(複数回答)を問うと、「自己嫌悪」が285人(78%)で最多。次いで「出産できた人へのねたみ」「家族への申し訳なさ」などが目立った。
言われてつらかった言葉は「また次頑張ろう」「まだ若いから大丈夫」「何が悪かったの?」「早く元気になって」など。周囲の励ましが当事者を傷つけかねない状況がうかがえた。
夫に求めることとして「流産した子どもを忘れないでほしい」「妊娠が恐怖でしかない。死産したときは『もう子どもはいらない』と言ってほしかった」などが挙がった。わが子への愛着を感じながらも、妊娠すること自体が不安になる複雑な感情がにじむ。
不育症に関しては公的医療保険適用外の検査や治療が多く、専門相談窓口や治療費助成もまだまだ少ない。無事に出産していた人は回答者の7割。出産までにかかった治療費・薬代は「3万円以下」(58人)が最も多かったものの、「10万〜20万円」も49人、「100万円以上」を費やした人も25人いた。
行政に求めるサポートは検査費、治療費の助成や保険適用が約9割を占めた。他に「産婦人科医や助産師に知識を身に付けてほしい」「専門病院の増加」などの要望もあった。同グループの工藤智子代表=神奈川県=は「わが子を授かることができないのは不妊症と同じ。国や行政には、もっと支援に力を入れてほしい」と求めた。
●毎年数万人に可能性「早期検査を」 詠田医師
不育症にはどんな原因や治療法があるのか。福岡市で不妊専門クリニックを開く詠田由美医師に聞いた。
−不育症の定義は。
「2回以上の流産や死産がある場合を指す。ただし、妊娠検査薬で陽性反応が出ていても、子宮に胎のうを確認できない生化学的流産は回数に含めない」
−不育症になる人の割合は。
「流産そのものは全妊娠の10〜15%の割合で発生するが、2、3回と繰り返す可能性は極めて低く、妊娠を継続できない何らかの原因があると考えられる。正確な数は分かっていないが、毎年妊娠する人のうち数万人に不育症の恐れがあるとされている」
−主な原因は。
「最も多いのは受精卵の染色体異常だ。卵子や精子のいずれかで染色体の一部が入れ替わるなどのケースがある。女性の年齢が上がると発生率も上がる。20代で5割、30代で6〜7割、40代で9割超の流産は、染色体異常によるものだ」
「このほか、先天性の子宮奇形、黄体ホルモンの分泌が不足する黄体機能不全、甲状腺の機能異常、子宮内膜の血管に血栓ができやすい体質など、さまざまな原因がある」
−無事に赤ちゃんを出産する方法はあるのか。
「染色体異常の場合、着床前診断で流産する可能性が低い受精卵を選び、体外受精する方法がある。ほかの原因も適切な診断と治療を受ければ、最終的に8割以上が出産に至っている。出産を望むなら、1回の流産でも早めに検査を受けてほしい」
●「当事者の心身、傷つけぬ社会に」 流産を3度経験、福岡市の大本さん
授かった命を何度も失う不育症の女性は、どんな心境に陥るのか。3度の流産を経験した主婦、大本絢子さん(37)=福岡市中央区=は「身も心もぼろぼろになりました」と振り返る。
大本さんが初めて妊娠したのは32歳のころ。微熱が続き、産婦人科でエコー検査を受けると、子宮内に胎児が入る胎のうを確認できた。生理不順だったので「こんなに早く妊娠できるなんて」と喜んだ。赤ちゃんの心拍を確かめると、すぐ同僚や友人にも報告した。
ところが、妊娠10週目に入るころ、職場で突然、不正出血があった。早退して病院に急いだが、診察時にはすでに胎児の心拍は止まっていた。胎のうの小さな黒い影を、心からいとおしんでいた大本さん。ショックで感情が追いつかず、涙も出ないまま、医師の説明を上の空で聞いた。
流産の喪失感は、じわじわと強まった。病院から戻ると夫婦で号泣し、翌日は仕事も休んだ。寝付けなくなり、「重い荷物を持ったのが悪かった」などと後悔する日々。「なんで私だけ生きているの? 空に帰ったあの子の元へ行きたい」と思い詰めた。
その後、不妊症や不育症の専門医に診てもらったが、2回続けて流産した。「人間として欠陥品」と自らを責め、フェイスブックや年賀状で知人の出産報告を見ると胸が苦しくなった。
治療中は毎月、妊娠検査薬の結果を見ては落ち込んだ。妊娠を期待して1カ月以上先の予定は入れずにいたため、余計に気分が沈んだ。思い切って旅行や趣味のテニスを楽しむように心掛けたら「子どもがいなくても、幸せだと思える人生にしよう」と考え方が変わった。妊活を休んでいると、36歳で再び妊娠した。
妊娠5カ月の安定期を超えても死産となる例もある。不安は尽きず、仕事を辞めて安静に過ごした。そして昨年9月、長女を出産した。
「不育症への理解はほとんどなく、勤務先の長期療養制度も使えなかった。流産は誰にでも起こると軽く考えがちだけど、不育症には治療や支援が必要。当事者の心身を傷つけない社会になってほしい」。切実に願っている。
引用元:
西日本新聞 妊娠しても・・・繰り返す流産 「不育症」 孤立する当事者 複雑な感情、全国アンケで浮き彫り 公的支援求める声も