市立加西病院(兵庫県加西市北条町横尾1)は、来年2月から分娩医療を休止する、と発表した。産婦人科の常勤医2人のうち1人が今年12月末で退職することになり、補充のめどが立たないため。休止によって市内で出産できる助産院はあるものの医療機関はゼロになる見通しで、今後も医師確保による再開を目指す。婦人科や妊娠初期の診療は続ける。(森 信弘)

 同病院によると、2018年度の産婦人科での出産は210件。既に来年2月ごろ出産予定の妊婦が診察に来ており、早めに対応するため休止を決めた。休止以降の出産予定者には、同県姫路市など近隣の医療機関を紹介する。

 同科では18年末に常勤医3人のうち1人が退職。緊急の帝王切開への対応など安全面を考えて休止も検討したが、市内唯一の分娩ができる医療機関であることなどから、常勤医2人の負担は増えるが、受け入れを続けてきた。

 来年3月に定年を迎える医師の退職が自己都合により12月末に早まった。全国的に産科医不足が問題になる中、同病院は公募などで採用を目指してきたが、現時点で見つかっていない。

 同病院の産婦人科は、06年にも神戸大から派遣された常勤医2人が他病院に移り、分娩を休止。07年11月、病棟を改造して「マタニティセンター」を開設して再開していた。06年の休止以降、産婦人科の常勤医は同大から派遣されていないという。

 北嶋直人・同病院事業管理者兼院長は「何とか常勤医2名態勢で市内の分娩機能を担ってきたが、苦渋の決断をするに至った。理解と協力をお願いしたい」などとするコメントを発表した。

■市の関係者や市民らからショックの声 移住・定住促進へ悪影響の懸念も

 分娩の受け入れ休止が決まった市立加西病院。市の関係者や市民らは一様にショックを受け、移住・定住促進への影響を懸念する声も聞かれた。

 ママの働き方応援隊北播磨校加西学級代表の馬渡友樹子さん(34)は6年前、里帰りして同病院で長男を産み、そのまま定住した。「産後も個室でゆったり過ごせて、スタッフの印象も良かったのに」と残念がる。「やはり近くで産めるのはいい。今後、加西に住もうと考える際のマイナスになるのでは」と心配する。

 分娩可能な医療機関が1カ所しかないのは、加西市の課題だった。2015年に策定した市地域創生戦略のアクションプランでも「産婦人科医院などの誘致」を掲げていた。同市ふるさと創造部の千石剛部長(55)は「これで、移住定住促進の手綱を緩めることにはならない」としながら「休止が弱みになるのは事実で、開業医確保など改善に努力したい」と強調した。

 「分娩は続くと思っていたのにショック」と話すのは「加西病院サポーターの会」副代表の熊谷佳代さん(76)。同病院は2006年にいったん分娩を中止し、07年に再開した経緯があり「再開に向けた運動を考えていきたい」と話した。

 同病院は16、17年度と市一般会計からの追加繰り出しを受けるなど経営が悪化し、現在は改善の取り組みを続け、将来構想の検討も進めている。事務局の片岡建雄総務課長(57)は「分娩が再開できるよう、なんとか医師を誘致したい」と力を込めた。

引用元:
加西市内の分娩医療機関ゼロに 加西病院が受け入れ休止へ(神戸新聞NEXT)