産後うつが社会問題化する中、浜松市北区東三方町の木村産科・婦人科の付属施設として開設した産後ケアセンター「1010HOUSE(トトハウス)」が、妊産婦や静岡県内の医療関係者らの注目を集めている。出産直後に宿泊しながら新生活の不安緩和や育児相談を受けられる施設の立地は同院隣。妊娠、出産と合わせ、一貫した産後支援が可能で妊産婦からも好評を得ている。
 施設は個室5部屋を完備し、24時間体制で専門スタッフが常駐する。病院らしくない内観で、利用者がリラックスしながら休むことに専念できる環境を整えた。
 「以前の出産でも、ホルモンバランスの崩れや不眠などが重なり体調を崩すことがあった」。5月に第4子を出産し、同施設を利用していた外山舞さん(37)が振り返る。母親が出産による体の疲れや育児への不安に直面すると、産後うつの発症につながるケースがある。
 日本産婦人科医会によると、産後うつ病などの周産期のうつは、妊娠や出産、育児を契機に10〜15%の高頻度で発症する可能性があり、最悪の場合、自殺や児童虐待につながることもあるという。
 一方、昨年実施した厚生労働省の委託調査で、産後ケア事業を行っている市区町村は全国で26%と低迷。同会の前田津紀夫副会長=前田産科婦人科医院、焼津市=は「予算や人件費などの負担も多く、実施に踏み切れない機関は多い」と指摘する。
 産科婦人科と隣接して妊産婦を支援できる施設は県内ではまだ珍しい。産後ケアの普及を図ることも施設開設の目的の一つで、木村聡理事長(49)は「産後は誰もが不安を抱える。気軽に利用してもらい、明るい気持ちで子育てができるよう支援していきたい」と話した。

 ■母子支援 市町で差
 県内の各市町はそれぞれ産後の母子支援事業を行うが、内容は市町によって異なる。浜松市は、市内在住で家族らから家事や育児などの十分な援助が受けられない産後4カ月未満の母子が対象で、2019年度から従来の宿泊型、デイサービス型(1日)に加え、短時間のデイサービス型と訪問型の一部を負担する。
 長泉町では産後2カ月未満の母子が対象。2018年4月から宿泊型での支援を実施している。静岡市は「育児や体調への不安がある」「医療行為の必要がない」などの条件を満たした産後4カ月以内の市内在住の母子が利用できる。短時間のケアを利用する人が増加傾向にある。

引用元:
産後ケア、病院の隣で 浜松の産科・婦人科が宿泊施設(アットエス)