妊娠4週は、妊娠していなければ次の生理開始予定日ごろ。そろそろお⺟さんが「妊娠したのかな︖」と気づき始める時期です。ここでは妊娠4週の症状、お腹の中の⾚ちゃんの状態、この時期に気をつけたいことなどをご紹介していきます。


この記事の監修ドクター 産婦人科医 太田寛先生 アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

生理が遅れて妊娠に気が付く人も出てくる時期

妊娠週数は、妊娠前の最後の⽣理が始まった⽇を「妊娠0週0⽇」と数えます。つまり妊娠4週というのは、前回の⽣理が始まった⽇から28日後、次の⽣理が始まる予定の日からの週にあたります。このため、⽣理周期が28日で一定の⼈なら⽣理が遅れていることから「もしかして妊娠したのかな︖」と気づき始める時期です。
早い人ではつわりのような症状が出てくる場合も
妊娠4週になると、早い⼈では妊娠を知らせるさまざまなサイン(妊娠初期症状)が体に現れ始めます。つわりは、妊娠5週から現れることの多い症状ですが、早い人では4週から、吐き気を感じたりおう吐したりすることもあります。

そのほか、熱っぽさ、だるさ、眠気を感じたり、胸が張る、乳首が痛いなどの胸の症状を感じたりすることも。こうした、病気ではないけれども妊娠に伴い感じる不快な症状は、マイナートラブルと呼ばれています。

ただし、何ともない人も多いので、変わった症状がないから妊娠ではない、とは言えません。

妊娠4週の赤ちゃんの状態

妊娠8週未満の⾚ちゃんは「胎芽(たいが)」と呼ばれます。受精卵が着床した後の胎芽の時期は、赤ちゃんの主要な臓器が作られる器官形成期にあたります。
赤ちゃんを包む胎のうが見え始める
妊娠4週後半くらいから、医療機関での超音波検査で「胎のう」が確認できるようになります。胎のうとは赤ちゃんを覆っている袋のことで、直径2mm以上になると超音波検査で確認できるようになります[*1]。

超音波検査を含めた最初の診断は、産科のない婦人科でも受けることができます。妊娠しているかどうかは、薬局で売っている妊娠反応検査でまず確認しますが、医療機関では、胎のうが子宮内にあるかどうかを診断します。その診断は、経腟超音波検査といって、プローブという超音波を出す機械を腟に入れて子宮内を観察する方法で行います。その方法によって子宮の中の胎のうが確認できたら、子宮内の妊娠と診断されます。異所性妊娠(俗には子宮外妊娠)は、非常に危険なために、子宮内の妊娠であることの診断はとても大事です。

通常の妊娠の場合、妊娠4週で約80%、妊娠5週でほぼ100%の確率で、子宮内の胎のうを確認することができます[*1]。
赤ちゃんはまだ「胎芽」の状態
妊娠4週は、「胎児」になる前段階の「胎芽」の状態です。この時期は器官形成期の始まりにあたり、受精卵から段階が進んだ胚の中には「外胚葉」「中胚葉」「内胚葉」という3層の細胞の集団ができてきます。

外胚葉からは、体を保護し外界の情報を感じ取る皮膚や神経系(脳、脊髄、末梢神経系)が、内胚葉からは消化管(胃、肝臓、膵臓、小腸、大腸など)や肺、膀胱が、また中胚葉からは骨格、筋肉、血管、心臓、腎臓、尿路などのさまざまな構造が生じます。これらが妊娠8週で「胎児」になるまでに、次々と作られ始めます。

妊娠の判定はどうやってするの?

妊娠4週で「妊娠したかも?」と感じたら、まずは市販されている妊娠検査薬を使ってみましょう。妊娠検査薬が陽性にならなかったら、1週間ほど時間をおいて、もう一回検査してみましょう。医療機関で行う妊娠反応検査は、市販のものと基本的に同じで、特殊な妊娠反応検査があるわけではありません。そのため、まずは市販されている妊娠検査薬を使ってみて陽性反応が出てから産科や婦人科を受診するのがおすすめです。
妊娠検査薬は妊娠5週から使用可能
医療機関に行く前の、妊娠の可能性を知る方法が妊娠検査薬の使用です。しかし、妊娠検査薬だけでは、子宮の中に妊娠したかどうかはわかりません。そのため、妊娠検査薬で陽性になって、妊娠がわかったら、必ず医療機関を受診してください。

妊娠検査薬は、妊娠すると分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが尿中に出ているかどうかを調べます。hCGは、受精卵が着床するとできる胎盤絨毛細胞から分泌されるホルモンです。このホルモンは通常、妊娠していないときや男性では産生されないものなので、妊娠検査薬が反応して「陽性」を示した場合、妊娠したということになります。
病院での検査方法(超音波検査でわかること)
妊娠とは、受精卵が子宮に正常に着床することで始まります。しかし、子宮の中の正しい場所に妊娠したかどうかは、医療機関で超音波検査を受けないと確認できません。

妊娠4週後半くらいから、直径2mm以上になると経腟超音波検査で「胎のう」が確認できるようになります[*1]。超音波検査では白い輪に囲まれたちいさなリング状のものとして見えるのが胎のうですが、それが子宮の中に確認できたら、子宮内での妊娠が確定します。

また、5週後半くらいからは、赤ちゃんの心拍と、卵黄のう(赤ちゃんのための栄養が入っている袋)を確認することができることが多いです。

妊娠4週で気を付けたいこと

妊娠4週は、受精卵が子宮に着床することで妊娠が確定し、赤ちゃんの体の器官が作られ始める大切な時期。赤ちゃんが健康に育つためにお母さんができることや、気をつけたいことなどを見ていきましょう。
薬など、赤ちゃんに影響する可能性のあるものに注意する
妊娠4週に入ると、赤ちゃんの重要な器官が作られる時期が始まります。そのため、生活や行動には少し注意が必要です。

薬について

妊娠前から常用していた薬であっても、自己判断はせずに、必ず医師や薬剤師に相談してください。この時期の赤ちゃんに奇形を引き起こすことが報告されている薬には、血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)、白血病などのがんや関節リウマチの薬(メトトレキサート)、てんかんの薬(フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸)などがあります[*2]。

病院が遠方でかかりつけ医にすぐに相談できないときなどで、薬の影響が気になる人は、

「妊娠と薬情報センター」https://www.ncchd.go.jp/kusuri/ 

に相談することもできます。

X線の被ばくについて

X線(レントゲン)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査、マンモグラフィなどは、放射線の被ばくが心配になりますね。ただ、これまでの調査で、胎児に影響が出る線量(しきい線量)は100mGy以上[*3]と確認されています。受精後10日(妊娠3週末ごろ)までに被ばくしても奇形となることはないとされています[*4]。

また、受精後11日(妊娠4週ごろ)〜10週までの間は、50mGy未満の被ばくは奇形の確率を上昇させないとされています[*4]。腹部レントゲン撮影で、1回あたり1〜2mGyなので、通常の検査でこの量を超えて被ばくすることはまずありませんが、医療機関を受診するときは、妊娠の可能性があることを必ず医師に伝えてください。

アルコール、飲酒について

妊娠がわかったらアルコールは飲まないようにしましょう。しかし、みりんを使った料理や、菓子に含まれている洋酒など、食品に含まれている程度の少量については目くじらを立てる必要はありません。

タバコ、喫煙について

タバコは、心臓病や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病はもちろん、がんや認知症の原因になることが明らかになってきました。妊婦が喫煙することによっても、赤ちゃんに直接的に害をもたらすことがわかっています。喫煙は不妊率を増加させ、異所性妊娠(子宮外妊娠)発生率を2倍に高めるほか、流産率も増加させます。ヘビースモーカーは非喫煙者の2倍の流産率になるとも言われています[*5]。赤ちゃんのためにもお母さんのためにも、妊娠はよい機会ですので、ぜひ禁煙しましょう。

また、一緒に暮らすパートナーや家族の喫煙による受動喫煙でも母子ともに影響を受けることが明らかになっています。その人たちも禁煙しましょう。

最近は「電子タバコ」や「加熱式タバコ」を愛好する人も多いですが、これらもニコチンなどの体に影響する物質を含まないわけではありません[*6]。有害物質を含む以上、吸う本人はもちろん、受動喫煙でも影響がないとはいえず、胎児に対する影響についても、まだ研究されていないのでわからない、というのが現状です。今までのタバコと同様の悪影響があると考えて、妊婦さん本人や家族は禁煙したほうがいいでしょう。

なお、禁煙のための補助剤であるニコチンパッチは、体内にニコチンが入ってしまい危険なので、妊婦や授乳中のママは使用できません。タバコを吸えば、ニコチンパッチ以上のニコチンが入ってしまうので、おかしな話なのですが、毒性があるので使えないのです。

カフェインについて

カフェインに対する感受性は個人差が大きいので、一日摂取許容量はどの国でも設定されていません。しかし、無制限に飲んでよいとは言えません。

たとえばコーヒーなら、1日カップ1〜2杯程度を摂取する分には問題がないだろうと考えられています。お茶や紅茶なども同様です。

なお、エナジードリンクなどは、1本でコーヒー2杯分など、カフェインを高濃度に含むものが多くあります。摂取する場合は総量に気をつけて、摂取量が控えめになるように心がけてください[*7]。

風疹などの感染症予防について

妊娠中に感染すると胎児に影響する感染症はいくつかあります。

日本で現在大人に流行している風疹は、とくに妊娠初期に注意したい感染症です。お母さんが妊娠1ヶ月で風疹にかかった場合は50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%の確率で、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」にかかる可能性があるといわれています[*8]。先天性風疹症候群は生まれつき目や耳、心臓などに障害を持つ病気です。

妊娠中は風疹を防ぐワクチン接種ができないので、妊娠を希望している人は、妊娠前に接種しておくことが大切になります。同居する家族で風疹にかかったことのない人、かかったかどうかわからない人がいる場合は、ワクチン接種をしてもらうことも必要です。風疹ワクチンは一生で2回必要です。40歳以上の日本人男性は、一回もワクチンを受けていない人がほとんどなので、とてもリスクが高いです。必ず2回のワクチンを打ってもらうようにしましょう。

妊娠初期には妊娠健診で風疹の抗体価を調べますが、それが低いまたはない妊婦さんは、流行地域での不要な外出を控える、うがい・手洗いなどの感染予防をしっかり行うといった対策が必要になります。その場合はぜひ主治医とよく相談して、ベストな対策を心がけてください。

また、出産が終わったら、授乳している間に風疹のワクチンを打って、次回の妊娠に備えましょう。これは、今から妊娠する人に風疹を移さないためにも大事なことです。
少量の出血は、ほとんど問題ありません
妊娠中は、どの時期でも出血はしやすくなりますが、妊娠3〜4週のころは、受精卵の着床によっても出血することがあります。このような出血は着床出血と呼ばれています。

これは、胚盤胞から出る絨毛が子宮内膜にもぐり込むことで子宮内膜の血管が傷つき、少量の出血がみられる現象です。着床出血は、生理生理開始予定日の1週間前(妊娠3週)から生理予定日(妊娠4週)の間に起こる場合が多く、生理がきたと間違える人もいます。

着床出血による出血の場合、量はごくわずかで、7日以内には収まります。着床出血が初期の流産につながることはありません。 また、妊娠10週頃までに、8割程度の人が少量の出血や下腹部痛を経験します。非常に良くあることです。出血が少量で、眠れる程度の痛みなら、特に気にする必要はありません。流産の心配をする人が多いですが、この時期の流産は赤ちゃん側の問題であり、母親や医師が何をしても運命を変えられる可能性はほとんどありません。医療機関を受診してもしなくても、赤ちゃんの運命は変わりません。元気に大きくなるように祈るだけです。

ただし、200ml(コップ1杯)以上の出血量がある場合や、腹痛が眠れないほどひどい場合には、「異所性妊娠(子宮外妊娠)」などの危険な状態である可能性があります。こうした場合には、夜間、時間外であっても、すぐに医療機関を受診することが大切です。
葉酸を積極的に摂取しよう
本文妊娠中はどの栄養も過不足なく摂ってほしいのですが、特に妊娠初期の妊婦さんに積極的に摂ってほしいのが「葉酸」です。

1日0.4mg以上1mg未満を妊娠の1ヶ月以上前から妊娠12週頃まで、食事からの摂取に加えて、サプリメントなどの栄養機能食品、栄養補助食品などで補うことが推奨されています(食事からだけでは不足しがちなため)[*10]。

ただ、サプリメントで摂る場合、葉酸以外に複数の栄養素が一緒になっている製品で0.4mgの葉酸を摂ろうとすると、ビタミンAなどを摂りすぎる場合があることに注意しましょう。 葉酸にはたんぱく質やDNAの合成を助ける働きがあり、細胞がさかんに増殖する妊娠初期の胎児には必須の栄養素です。これが不足すると赤ちゃんが「神経管閉鎖障害」になるリスクがあるといわれています。神経管閉鎖障害とは、妊娠4〜5週に起こる先天異常で、胎児の脳や脊髄などのもとになる神経管という最初は板状の器官が、正常であれば成長過程で管状に閉じるはずがしっかりくっつかなかったために起こります。

神経管の下部でこの閉鎖障害が起こる「二分脊椎」では、下半身の運動障害や膀胱・直腸の機能障害が起こることがあります。また、閉鎖障害が神経管の上部で起こると、脳が形成不全となる「無脳症」になります。

葉酸は、この神経管閉鎖障害を予防するビタミンであることが、わかっています。もちろんお母さんにとっても、欠乏すると貧血につながるなど、体に無くてはならない栄養素です。とくに妊娠初期には意識的に摂るようにしてください。

葉酸が多く含まれている食品は、葉ものの野菜や果物、豆類などです。それらを日常的に多く食べるように心がけつつ、市販のサプリメントなどで足りない分を補うことが勧められています。なお、サプリメントで摂る場合は推奨されている量(0.4〜1mg)を守るようにし、過剰摂取には注意してください。

まとめ

妊娠4週は、お母さんにとっては妊娠がわかり始める時期であり、赤ちゃんにとっては重要な器官が作られ始める大切な時期です。お母さんによっては、マイナートラブルを感じ始める人もいれば、まったく感じない人もいますが、お腹の中ではものすごい変化が起こっています。薬や食品、嗜好品には、神経質にならない程度に気をつけつつ、心穏やかに過ごすことを心がけてください。

(文:石井悦子/監修:太田寛先生)




引用元:
【医師監修】妊娠4週はどんな時期? 初期症状と赤ちゃんの状態、起こりうるリスク(BIGLOBE ニュース)