長野県須坂市、小布施町、高山村の須高地域3市町村が取り組む母子保健システム「須坂モデル」が全国から注目を集めている。保健師が中心となり、妊娠した母親全員と面接を行い、気になるケースには医師や保健師など職種を超えて連携して支援。妊娠中から産後数年までの切れ目のない「伴走支援」が、10人に1人がなるとされる「産後うつ」の予防や、子どもへの虐待防止につながっている。【坂根真理】
6月13日。県立信州医療センター(須坂市)の一室で、地域の産婦人科医、助産師、小児科医、保健師、須坂市健康づくり課の担当者ら約15人がテーブルを囲み、ケース会議を開いていた。
会議では、うつ病になった過去があったり、未成年で妊娠したりした母親の様子などを情報交換しながら、それぞれのケースにどのようなアプローチや支援が必要かを話し合い、支援の方針を打ち立てている。
同市の母子保健コーディネーター、大峡(おおば)好美さん(39)は「支援が行き届くようになってきたように思う。母親がつらくなりすぎて自殺未遂に至るようなことが起こる前に、『少し困ったな』というところから手助けができるのがいい」と話す。
同市は、2014年から本格的に須坂モデルに取り組んでいる。保健師が中心となり、妊娠届を提出した母親全員と面接をしたり、国際的に普及している「エジンバラ産後うつ病質問票」(EPDS)などを用いて母親の精神状態や妊娠、出産時の家族の協力態勢の有無を把握したりして、フォローが必要な母親を見つけ出す。
育児への不安感や、EPDSの点数が高い母親には、自宅を訪問して相談に乗ったり、専門医の受診を促したりしてきた。結果、産後うつなどのリスクがある母親を早い段階で見つけ、専門的な支援につなげることができるようになった。18年は、同市の妊婦357人のうち、電話や訪問など継続的に相談を行ったのは約半数の179人に上った。
今年1月、国立成育医療研究センター(東京)は須坂モデルの有効性を調査した結果を国際学術誌で発表。須坂モデルの開始前と開始後を比較したところ、開始後の方が産後うつになりにくいことが分かったという。これもあって全国から注目を集め、行政視察や研修会での報告の依頼が同市に相次いでいる。
同センター乳幼児メンタルヘルス診療部長の立花良之医師は「保健師がすべての妊婦さんに会う仕組みを作り、それがお母さんのメンタルヘルスの向上につながっている。妊娠した初期の段階で、『何か困ったことがあればこの人たちに言えばいいんだな』と顔の見える関係性を作ることが重要だ。その後も切れ目のないサポートが虐待防止につながっている」と話した。
エジンバラ産後うつ病質問票の内容
「過去7日間にあなたが感じたことに最も近い答えは?」
(肯定〜否定の4段階の答えから一つ選び、合計点数に応じて対象者の状態を判断する)
(1)笑うことができたし、物事の面白い面も分かった
(2)物事を楽しみにして待った
(3)物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた
(4)はっきりした理由もないのに不安になったり、心配したりした
(5)はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた
(6)することがたくさんあって大変だった
(7)不幸せな気分なので、眠りにくかった
(8)悲しくなったり、惨めになったりした
(9)不幸せな気分だったので、泣いていた
(10)自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた
引用元:
産後うつ予防 妊娠中から切れ目ない支援「須坂モデル」に注目(毎日新聞)