不妊症と聞いて、皆さんはどのようなことを想像するでしょうか? 日本産科婦人科学会は、不妊症を次のように定義しています。

 「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみないこと」

 この中の、「ある一定期間」について、アメリカ生殖医学会は「1年」としてきました。一方、日本産科婦人科学会は「2年程度」としてきましたが、2015年に「1年が一般的であるが、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない」と改めました。つまり、妊娠を希望する男女がそのための治療を必要とする場合には、妊娠が成立しない期間の長短に関わらず不妊症と判断して差し支えなく、検査や治療を始めるのに十分ということになります。

自宅でもできる検査、それって?

 検査の多くは病院で行いますが、自宅でもできる検査があります。それが、基礎体温です。

 女性の基礎体温は、生理になると下がり、排卵が起こると上がります。これを約28日周期で繰り返しています。基礎体温が低いところ(低温期)と高いところ(高温期)がはっきりしていることを2相性と言い、これが正常な状態です。体温がほとんど一定(1相性)の場合は排卵ができていない可能性があります。

 また、高温期が短い(10日未満)場合は排卵ができても着床(受精卵が子宮に定着すること)がうまくできていないかもしれません。基礎体温を測るだけで、これだけの情報を得ることができます。

30代後半の人、早めの受診を

 米国で行われた調査では、婚姻関係のある夫婦の17%が不妊であると報告されています。特に、女性の年齢と密接に関係しており、20代前半では5%程度の不妊率が40代以上では64%で自然妊娠が困難となると言われています。

 女性の卵巣の中にある卵子の数は限られており、増えることはありません。排卵が繰り返されると、その数はどんどん減っていきます。また、年齢を重ねることで卵子の質も落ちていくと言われています。

ご存じの通り、現在の日本では女性の社会進出に伴い、結婚する年齢が上がっています。年齢が上がると卵子の数が減り、質も落ちてしまい、妊娠しづらくなってしまいます。これらのことを考えると、不妊症の割合は今後も増えていくことが予想されます。特に30代後半以上で妊娠の希望がある人には、早めの産婦人科受診が勧められます。

「男性の精子数、40年間に半減」の報告も

 不妊症は、決して女性だけの問題ではありません。WHO(世界保健機関)では、不妊症カップルのうち男性のみに原因があるものが24%、女性のみに原因があるものが41%、男女ともに原因があるものが24%と発表しています。つまり、約半数は男性側にも原因があることを示しています。

 ヨーロッパでは、男性の精子数がこの40年間に半減したと報告されています。また、精子数は年齢とあまり関係ないと考えられてきましたが、最近の研究では加齢とともに精子を作る機能が低下していくことが分かってきました。

 精子数は妊娠率に直結するので、精子数や精子の運動率を調べる精液検査は不妊症検査の中でも重要視されます。残念なことに、不妊症を考えて受診するカップルの中には、精液検査の意義を理解できず、検査を受けることを了解してくれない人がときどきいます。不妊症の原因が分からなければ、治療に踏み切ることができません。不妊治療を成功させるには、2人の協力が必要不可欠です。そのためにも、ぜひ検査を受けていただきたいと思います。

 男女に関係なく、年齢が上がると妊娠しづらくなってしまいます。自然妊娠に限らず、不妊治療でも同じことが言えます。不妊治療を行っても必ず妊娠するというわけではありません。二人の年齢が若ければ若いほど、成功率は上がります。

 逆に、時間が経ってから治療を始めても、思うような結果にならないことが多くなってしまうかもしれません。もし、妊娠の希望が強いのならば、できるだけ早いうちに産婦人科の受診をお勧めします。


引用元:
不妊症は女性だけの問題か 男性も知るべき原因や治療法(asahi.com)