11人に1人の女性が「乳がん」になり、この比率は年々上昇するといわれている。乳がんはセルフチェックで見つかる可能性が高いとされ、実際に半分以上が自分で気づき、病院へ行ったことで発見されたというデータもある。

 しかし、あいクリニック中沢院長の亀谷学さんは「しこり以外の兆候はわかりづらい」と指摘する。

「だから、しこりとして認識しづらいミリ単位の乳がんを見逃さないためにマンモグラフィー検査を受ける必要があります。また、しこり以外の兆候も覚えておいてほしい。例えば普通、初期の乳がんは痛みを伴いませんが、まれに押すと痛い『炎症性乳がん』もあります。乳頭や乳輪がただれてかゆみを伴う『乳房パジェット病』は湿疹などに似ていますが8割以上が乳がんを併発します。

 専門知識がない医師だと、湿疹などと診断されて見逃す可能性があります。乳房に関する症状で気になることがあれば、内科ではなく乳腺専門医で診てもらってください」(亀谷さん)

◆卵巣がん

 卵巣がんは乳がんなどほかのがんに比べてかかる人が少ないうえ、自治体のがん検診の対象からも外れているゆえに、発見が遅れてしまう可能性が高いという。亀谷さんが解説する。

「卵巣がんは、初期は無症状ですが進行すると、下腹部を触るとしこりがあったり、お腹が張る、トイレが近くなるなど膀胱炎のような症状が出たりする。膀胱炎であれば、排尿した時にツンとした痛みが走ったり、尿が濁ったり強くにおったりするうえ、放置すれば数日から1週間ほどで高熱が出て腎盂炎になります。このような経過がない場合は、婦人科で診てもらった方がいい」

◆子宮がん

 子宮頸がんは早期発見できれば5年生存率は9割を超え、子宮を残すこともできる。東京ミッドタウンクリニックの森山紀之さんが言う。

「兆候は、においの強いおりものと、不正出血です。子宮の下部にがんができるので、性行為で刺激されると傷ついて出血します。生理とは違って、性行為をした後に出血があれば、疑った方がいいでしょう」(森山さん)

 若い人がかかりやすい子宮頸がんと異なり、50〜60代で増えるのは、子宮体がんだ。こちらは特に、不正出血に気をつけたい。

「特に閉経後、おりものに血が混じっているなどの出血があれば、婦人科にかかった方がいい。生理と違ってわずかな出血が特徴で、下着にシミがつく程度でも疑いがある。特に、乳がんの治療や更年期障害でホルモン療法を受けている人、閉経が遅い人、出産未経験者などはリスクが高いので、おかしいと思ったらすぐに婦人科にかかってください」(亀谷さん)

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 兆候が頭に入っていても、いざ「もしかして…?」と思った時に行動が伴わなければ意味がない。その時に強い味方となるのが「定期検診」と「かかりつけ医」だ。

しかし女性の検診率は依然として低く、特に乳がんや子宮頸がんの検診受診率はアメリカやイギリス、韓国などと比べてもかなり低い。

「その理由の1つは、会社で検診を受ける機会のある男性に比べて、専業主婦やパート勤務も多い女性は受ける機会が少ないからでしょう。1年に1回は人間ドックを受けるのが理想ですが、最低でも自治体のがん検診をきちんと受けること。がんは早期発見できれば、助かる可能性が充分にあります。また、普段から体の状態を相談できるかかりつけの医師がいればその病院で検診を受けられるだけでなく、先生が専門外であったとしても、いい病院を紹介してもらうことができます」(森山さん)

“血や熱に弱い”といわれる男性に比べて、女性はちょっとした不調を「いつものことだから」と見逃してしまいがち。兆候を感じたら万が一のことを考えて、早めに病院に行くように心がけたい。

引用元:
早期発見が重要な乳がんと子宮がん他、見落としがちな兆候(女性セブン)