2012年9月、右胸にがんが再発していると告知され、すぐに切除する手術を受けた。ホルモン治療を続けたが、13年秋、 三度みたび 、がんが見つかった。

 再発を繰り返し、「命のことも考えていかなければいけない状況にある」と感じた。主治医は右の乳房を全摘し、同時に再建する手術を提案した。

 45年間、苦楽を共にしてきた体の一部を、自分が生きるために取り去らなければならない。右胸に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになり、主治医の前で初めて泣いた。だが、「娘のために責任を持って生きていかなければ。死ぬわけにはいかない。ずっとそばにいてあげたい」。すぐに決断した。

 全摘手術を12月末に行うことが決まると、娘が銭湯に行きたがっていたことを思い出した。

 「右胸がなくなったら、人前で裸になる勇気は持てないかもしれない」。手術の5日ほど前、手をつないで銭湯に出かけた。娘は広い風呂に入れてうれしそうで、その様子を見ているだけで楽しかった。「時間が止まってほしいという思いでした。楽しくもあり、悲しくもある思い出です」

 手術前日に入院した。その日の夜、病室で一人、鏡に向かい、右胸にそっと触れた。

 「ありがとう、さようなら」――。そう言って、別れを告げた。

引用元:
[女優 生稲晃子さん]乳がん(3)再発繰り返し 全摘へ(読売新聞)