この春に改定された、離乳食に関する国の指針「授乳・離乳の支援ガイド」について、前回はアレルギー予防の観点から書きました。今回は、ベビーフードの活用や十倍がゆについて書いていきます。

 以前、芸能人のママがベビーフードを使うことへの葛藤をブログに書き、話題になりました。今でも手作りの食事こそ最高で、ベビーフードを買って与えることをよくないと考える人もいます。でも、手作りの料理がレトルトや瓶詰めよりも格段に栄養価が高いわけではありません。手作りならば安全性が高いというわけでもありません。

離乳食で悩む親は7割超
 授乳・離乳の支援ガイドには、ベビーフードの活用や注意点などについてもまとめられています。国が行っている乳幼児栄養調査で、離乳食について何かしらの困ったことがあると回答した保護者が7割以上だったそうです。なかでも「作るのが負担、大変」と回答した保護者の割合は最も高く、ガイドでは「手作りが好ましいが、ベビーフード等の加工食品を上手に使用することにより、保護者の負担が少しでも軽減するのであれば、それも一つの方法である」と述べられています。

 ガイドに盛り込まれた「ベビーフードの利点と課題」という項目を見ると、メリットとしては、食品数や調理形態が豊かになったり、手作りをする際の見本となったり、離乳食の取り合わせの参考になったりするとあります。たとえば、鉄分の補給源として、手作りではなかなか取り入れにくいレバーを使った製品もあり、活用できます。

 一方で、留意点として、ベビーフードだけで1食をそろえようという場合は、原材料を見て食材が偏らないようにしたり、果物を添えたりといった工夫をすることも挙げられています。  

 ベビーフードはなにより手軽で、ただでさえやることが多く、待ったなしにいろいろと要求する乳児を相手に非常に助かります。親が楽をすることイコール罪悪ではありません。食事に手をかけるあまり、子どもの相手ができなかったら本末転倒です。


 ガイドにベビーフードの利点について書かれたことはとても画期的だと思います。ただ、「手作りが好ましい」とあるのは少し気になりました。おなかが空いて一刻も早くどうにかしてほしい乳児には、待つ時間が少ないベビーフードが、より好ましいかもしれませんし、親にとってもストレスが減ります。

理想にとらわれすぎずに
 離乳食といえばよく聞くのが「十倍がゆから始める」ということですね。育児書や保護者たちに聞くところによると、みんな十倍がゆから開始していますが、授乳・離乳の支援ガイドに十倍がゆという言葉は出てきません。最初は「つぶしがゆ」で始め、徐々に粗つぶしにしていくとあります。

 一方でWHOの「補完食」(母乳以外に与える食事のこと)の手引きには、スプーンから容易に流れ落ちない程度の濃さのおかゆを与えると書いてあります。本来、離乳食は、母乳やミルクと同じくらいのカロリーを持つものを食べさせないといけません。この手引きでは、薄く水っぽいおかゆは母乳よりも栄養素が少なく、必要量を満たせないとも書かれ、おかゆのカロリーを増やすために油脂や砂糖を足すことも勧めてられています。

 海外では離乳食の早期に肉の脂身をしゃぶらせる国もありますし、最初に与える主食も地域によって穀物やイモのような根菜、デンプンの多いバナナやパンの木の実のような果実類など多様です。

 味になれさせるという意味で、初期に十倍がゆをあげることはいいですが、薄すぎてカロリーが少ないので、水分ばかりでおなかがいっぱいになってしまわないように気をつけましょう。のみ込みやすいポタージュ状にしてあれば、初めからもっと濃いおかゆを食べさせるのもいいですし、そもそもおかゆを嫌がって食べないというお子さんもいると思います。エネルギーが足りているかを考慮しながら、食事の幅を広げていきましょう。  

 子どもには最善のものを与えたいと思うのはどんな親でも同じでしょう。ただ、離乳食を進めていくうえで、子どもが食べなかったり、手作りが大変だったりと、様々な苦労や悩みがあります。離乳食の目的は、液体からだけでなく固形のものからも消化不良を起こさずに栄養が取れるようになることですから、手段によらず食べることを進めていきましょう。原理原則や理想にこだわりすぎずに、少しでも楽しく育児をしていってほしいと思います。 

引用元:
子どもが泣いていても、離乳食は手作りするべき?(朝日新聞)