働く女性の増加とともに、注目されてきた言葉がある。

妊活。

妊娠についての知識を身につけ、体調管理を心がけたり、出産を考慮に入れた人生設計を考えたりすることをいう(デジタル大辞泉より)。スマホで精子チェックができるサービス「Seem」は、4月18日に東京・丸の内で「ふたりの妊活」メディア向けセミナーを開いた。

女性が主導しているというイメージが強い妊活だが、世界保健機構(WHO)の調査によると、不妊の原因の約半数は男性にあるという。これからは「ふたりで妊活」を当たり前にしたい。そんな思いをSeem開発者であり、Forbes JAPANオフィシャルコラムニストの入澤諒は冒頭で話した。

セミナーでは、産婦人科医の宋美玄が「ふたりの妊活」のすすめについて講演。宋は丸の内エリアで働く女性が多く通う丸の内の森レディースクリニックで、妊活に悩む女性と日々向き合っている。

彼女が提唱するこれからの妊活の形をデータとともに、セミナーで語った。(以下、宋談)

妊活でいわれてきた「女性のタイムリミット」

平成30年に女性の就業率は約7割になり、女性もライフステージに関わらず働き続けるような時代になっています。女性の平均初婚年齢も今は30歳近くになっており、共働き世帯も増え、専業主婦世帯の倍以上になりました。これは不景気の時代に男性だけが働くことが難しくなってきたというのも一因です。しかし、女性の社会進出は「生殖」という面からみるといいことばかりではありません。

将来産みたい子供の数は昔からあまり変わらないにも関わらず、子どもをつくり始める年齢は男女ともに年々遅くなっています。つまり、欲しい子供の数に至らないままの人が増えているということになります。

キャリアを積み、まだまだ結婚や育児のお金がないという時に、年齢の問題が重なるというのが妊活世代の抱える悩みなのではないでしょうか。

また、卵子についていえば数と質の問題があります。お腹の中にいた時は何百万という卵子がありましたが、思春期が始まる頃には2、30万個くらいに減っています。そのあとは子供を産もうと、ピルを飲もうと毎月1000個くらいの卵子が年齢とともに死んでしまいます。

メディアでもよく取り上げられますが、卵子の質も年齢とともに低下します。30代頃から単調に質は低下していき、妊活に影響を与えます。逆に言えば、女性の身体が年齢を重ねても、体外受精などで年齢の低い卵子を使用すれば妊娠は可能ということになります。

このように妊活には残念ながらタイムリミットがあるということは皆さんもよく知っていると思います。

「男性にタイムリミットはない」という勘違い

一方で芸能人が60歳でもお父さんになったなどのニュースを見て、男女の間でも「男はいつまででも大丈夫だよね」と思っている方も多くいます。しかし、加齢とともに精子の状態も悪くなります。

女性ほど大きな影響はありませんが、男性も年齢とともに妊娠をさせづらくなります。精液の量も減るし、精子の運動率も減ります。たくさんお子さんがいらっしゃる方でも、年齢が上がると精液の所見が悪くて不妊治療をされた方もいます。

つまり、タイムリミットは男女ともにあるということです。

男性の検査では、出した精液を顕微鏡で見て、ちゃんと卵管の中を泳ぎ切れるような運動率であるか、濃度は足りているかなどの検査なので、身体の負担は女性と比べると少ないです。しかし、病院で容器をもらって提出するというのは精神的に大きな負担のようで、相手が精液検査を受けてくれないまま時間が経って今度は女性の方が高齢と言われる年になってしまうというのはよくある光景です。


講演に聞き入るメディア関係者

妊活は「ふたり」でやろう

妊活は女性が一人でやるものではなく、夫婦で協力していくことが大事です。妊活の時間短縮にもなりますし、夫婦関係にも良い影響があります。今まで妊活というと、女性が基礎体温を測ったり、排卵日を予測したり、「あなた、今日がチャンスよ」と言って夫に「うざがられ」たり、体にいいものを食べたりという女性主導のイメージでした。

しかし、WHOの調査では半分くらい男性側にも原因があると発表されました。この原因は精子だけではなく、勃起や射精など性機能にも関係すると言われています。そして、男性の100人に1人が無精子症と言われています。男性と女性がふたりで向き合う必要があります。

また、妊活ジェンダーギャップ調査の抜粋なんですが、やはり妊活はいいことばかりではありません。生理がくるたびにがっかりしたり、がっかりした妻の姿を見て、夫がプレッシャーを感じたり……。これらの困難に夫婦で一緒に取り組むことで、めでたく授かった場合、育児をするときも両方が当事者意識を持ちやすくなります。そうした未来を見据えても、夫婦で妊活に参画するのがいいかなと思います。

引用元:
「男性に妊活のタイムリミットはない」という勘違い(Forbes)