発育がゆっくりなダウン症の赤ちゃんの保護者向けに、愛知県は25日から、子育て手帳「+Happyしあわせのたね」を無料で配布する。月齢ごとの平均的な身長や体重などが記載されている通常の母子手帳と違い、一人一人の成長に合わせて記録ができるようにしてあるのが特徴。ダウン症の子に的を絞った手帳の配布は全国の自治体では初めて。他の子と比べることなく、ゆとりを持って育児ができると期待されている。

 各自治体が作る母子手帳は「首がすわった」「つかまり立ちをした」「歩く」といった項目に、月齢の目安が記されていて、達成できたかどうかを親が書き込むようになっている。しかし、ダウン症児の保護者がそれとわが子の成長を比べた場合、「これもできない」「やっぱり遅れている」と焦りや心配のもとに。中には孤立感を深め、ひきこもってしまう人もいるという。

 子育て手帳では、その子が何かを初めてできた年月日を「記念日」として書き入れられるように工夫。同じページには「順番は気にしないで、ゆっくり見守ってあげましょう」という言葉も添えた。また、先輩ママの声を参考に、ダウン症児の特徴や育て方、療育方法などを具体的に紹介。将来、障害年金の受け取り手続きの際に必要な受診歴を書き込める欄もある。

 手帳は、東海地方を中心に活動するダウン症児の親のサークル「21+Happy」が4年がかりで作った。サークル代表の佐橋由利衣さん(46)=愛知県江南市=もダウン症の長男弘晃君(12)を育てている。「成長はゆっくりでも、その子が生まれてきたことを喜んでほしいし、仲間がいることも伝えたい」との思いを込めたという。

 2017年に日本ダウン症協会(東京)が発行したところ、全国から欲しいという声が殺到し、これまでに8000部以上を配った。「より多くの人に届けて」という親たちの声を受け、佐橋さんらが江南市を通じて愛知県に相談。推計によると、県内では年間90〜100人のダウン症の赤ちゃんが生まれている。1年近く話し合いを続けた結果、「育児不安の解消に役立つ」と、県が配布を決めた。佐橋さんは「これが全国の自治体に広がるきっかけになれば」と期待する。

 手帳はB6判61ページ。市区町村の保健センターや子育て支援センターなどを通じて申し込むと、地域の保健師が自宅を訪問して配布する。日本ダウン症協会のホームページから、内容をダウンロードすることもできる。 (花井康子、写真も)


引用元:
ダウン症児の保護者向け子育て手帳配布 愛知県が全国初(中日新聞)