50代以降で増えるがんが多いのに対して、子宮頸がんを発症するピークは、30〜40代。妊娠・出産の高齢化もあり、治療後に妊娠を希望する人もいる。一部の先進的な医療に取り組む病院では、「妊孕(にんよう)性温存手術」という子宮と腟をつなげて妊娠できる機能を残す手術がおこなわれている。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、妊孕性温存手術の実施施設を独自調査した。ここでは、慶応義塾大学病院産婦人科教授の青木大輔医師による解説を紹介する。

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 子宮頸がんは、子宮の入り口にできるため、がんが入り口の表面にある上皮内にとどまっていれば、腟から挿入した器具でがんを円錐状にくりぬく「円錐切除術」で、子宮を残すことができる。上皮内よりも深く進行している場合は、子宮を全摘するのが基本だが、将来妊娠を希望していて、がんの広がりが小さく、さらに浅ければ円錐切除術で子宮を残せることもある。

 一方、がんが5ミリ以上深く進行している場合は「広汎子宮全摘出術」で子宮や周囲の組織、骨盤リンパ節を広範囲で切除する。しかしこの場合でも一部の病院では、将来妊娠を強く希望する場合に「広汎性子宮頸部摘出術」という「妊孕性温存手術」を実施している。そこで本誌では今回、この手術の症例数を調査した。ガイドラインでは、この手術ができる条件として「IA2期またはIB1期」「がんの大きさが2センチ以下」「明らかなリンパ節転移がない」などを挙げている。どの病院も手術件数が多くないのは、条件が限られているためだ。

 広汎性子宮頸部摘出術は、がんがある頸部だけを摘出し、残った子宮と腟をつなげる。腟から器具を挿入して手術する「腟式」と開腹もしくは腹腔鏡で手術する「腹式」がある。

 広汎性子宮頸部摘出術を2002年から導入し、今回の調査で症例数が最も多い慶応義塾大学病院産婦人科教授の青木大輔医師はこう話す。

「広汎性子宮頸部摘出術を導入する病院は徐々に増えていますが、大切なのは、妊娠・出産までをケアする基盤が構築できていること。妊娠・出産を目指すための治療なので、手術をしただけでは意味がありません」

 この手術後は、頸管が狭くなるなどの理由で自然妊娠が難しくなるため、体外受精などの生殖補助医療が必要になる場合が多い。術後に妊娠を試みた場合の妊娠率は、30〜50%程度だ。また妊娠したとしても、手術によって頸部が短くなっているため、早産のリスクが高くなり、妊娠中に長く入院していなければならないことも多い。手術後に不妊治療や妊娠した場合の周産期管理までができるのか、自院でできなくても、その道筋ができているのかということが、妊孕性温存手術を受ける際の病院選びでは、大きな基準となる。

■術中に1〜2割は全摘に切り替わる

 また問題となるのが、再発のリスクだ。標準的な広汎子宮全摘出術と比較した治療効果は、明らかになっていないが、前述の条件下であれば再発率は変わらないとする報告が多い。

 広汎性子宮頸部摘出術を計画していても、手術中の病理検査で切除断端にがんが残っていたり、リンパ節転移が見つかったりした場合は、全摘術に変更する。その割合は約10〜20%だ。

「治療効果が証明されていないことや手術中に全摘に変更する可能性もあることなどを理解したうえで、治療を受けることが大切です」(青木医師)

 週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、広汎性子宮頸部摘出術を受けられる病院を一覧にし、手術数とともに掲載しているので、参考にしてほしい。

引用元:
子宮がんになっても妊娠できる機能を残す「子宮温存手術」とは?(アエラドット 朝日新聞出版)