日本における子宮頸がんの動向を解析

大阪大学は2月4日、大阪府がん登録のデータを用いて日本における子宮頸がんの動向を解析し、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の八木麻未特任研究員(常勤)、上田豊講師(産科学婦人科学)らの研究グループによるもの。研究成果は「Cancer Research」オンライン版に公開されている。

日本では、子宮頸がん検診の受診率が非常に低く、またHPVワクチンの積極的勧奨は一時中止され、5年間以上が経過している。子宮頸がんの将来の罹患率や死亡者数を減少させるためにも、日本における子宮頸がんの疫学的傾向を理解することが重要と考えられる。

近年、子宮頸がんが増加していることは知られているが、子宮頸がんの種類別、年齢層別、進行ステージ別、治療方法別の罹患率や生存率の推移といった詳細な解析はこれまで行われていない。また、子宮頸がんの治療に同時放射線化学療法(CCRT)が導入されたが、治療成績の長期的な傾向や詳細な解析が、十分には行われていなかった。

限局性の若年患者には放射性治療が効きにくい可能性

研究グループは、1976〜2012年の間に登録された大阪府がん登録のデータを利用して、子宮頸がんの種類別、年齢層別、進行ステージ別、治療方法別の罹患率を解析。その結果から、10万人あたりの年齢調整罹患率は1976年から有意に減少していたが、2000年以降は増加に転じていることが観察された。次に、扁平上皮がんと腺がんの年齢層別の年齢調整罹患率を調べたところ、近年、扁平上皮がん、腺がんとも増加に転じているが、検診での発見が難しく治療抵抗性のある腺がんは、30歳代以下の若年層で一貫して増加していることが判明した。

また、サバイバー生存率を調べたところ、診断から1年生きることができた場合の5年生存率、診断から2年生きることができた場合の5年生存率と生存年数が上がるにつれ、サバイバー生存率は有意に上昇していた。さらに、がんのステージ別に調べてみると、子宮頸部に臓器に限定される「限局性」および、隣接する臓器にがんが広がっている「隣接臓器浸潤」のケースでは、10年相対生存率が2003年以降に著しく改善。この結果は、1999年以降のCCRTの導入や2000年以降の治療ガイドラインの普及が有効であったと推察されるという。一方、がんの遠隔転移を伴うような進行した子宮頸がんのケースでは、有意な予後の改善は認められなかった。この限局性のケースにおいて、主治療として手術が行われた群では、年齢による相対生存率の違いは見られなかったが、放射線を含む治療が行われた群では、若年層では相対生存率が低い傾向にあった。この結果から、若年層は放射線治療が効きにくいことが示唆されたとしている。

今回の研究により、子宮頸がんが近年増加していることが明らかとなった。今後、子宮頸がん検診およびHPVワクチンの普及が期待される。また、子宮頸がんの治療において、若年層では治療抵抗性の腺がんが特に増加しており、加えてがんの遠隔転移といった進行症例において予後の改善が認められなかったことから、治療のさらなる改善が必要であると思われる。さらに、若年層では子宮頸がんの治療法として手術より放射線治療が効きにくいとことが判明し、これらの結果は今後治療選択を行う上での有益な情報になると考えられる。(


引用元:
日本の子宮頸がん罹患率、2000年を境に増加し続けていることが判明−阪大(QLifePro医療ニュース)