美容のためではなく健康のための体重管理

年の始めにあたって、健康管理の基本である「体重管理」について確認しておこう。ビジネスマンの体重管理(ダイエット)については何度かとりあげてある【※1】ので、今回はビジネスウイメンの体重管理について書いてみたい。

ビジネスウイメンとりわけ若い女性の体重管理に関する情報提供は(少なくとも筆者の経験上では)きわめて難しい(というよりも、むなしい)。筆者のダイエット情報は、ひとえに「健康のための体重管理」に限定してある。「美容のための体重管理情報」ではない。しかし、若い女性には、美容のためのダイエットには興味があっても、健康のための体重管理には無頓着という人がけっこう多いので、読んでもらえないことが多いのだ。

しかし、このコラムの読者であるビジネスウイメンなら、美容のためだけではなく「健康のための体重管理も重要で興味もある」という女性が多いと期待して、情報提供したい。
20歳代の女性「やせ」は女性平均の2倍

前置きが長くなったが、最初にお伝えしたいのは、近年、若い女性に多く見られる「やせすぎ」の懸念だ。その人が「やせているか太っている」は単純に体重だけで判断してはいけない。体重が多くても身長が高ければ「太っている」とはいえない。肥満(やせ)の判断はBMI【※】を基準に考える。

『平成29年国民健康・栄養調査結果の概要』【※2】によると、日本人の「肥満」の割合は男性で約3割強、女性では2割強。逆に「やせ」の割合は男性が0・4割、女性は1割強。ところが年代別に見ると、20歳代(20〜29歳)女性の「やせ」は2割強と女性平均の約2倍になる。

「やせ」というのは単に“スタイルがいい”ということではなく、健康に懸念が生ずるために(わざわざ)このような分類をしてある。ここからは筆者の推測にすぎないが、若い女性は「健康に懸念があるにもかかわらず(そのことを知らずに)美容上の理由で体重を制限している」のではなかろうか。

【※1】
食べすぎかどうかを知るのにカロリー計算は不要(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7417)
糖質制限ダイエットがおすすめできない理由(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12359)
「お正月太り」解消ダイエットのコツ(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11507)
ダイエットの目標は「半年で3%」の減量(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14085)

【※】BMI(Body Mass Index:体格指数)は肥満の判定基準として用いられる指標。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出する。日本肥満学会では、BMIが18.5未満を「やせ」、25以上を「肥満」としている。

【※2】https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf

骨の丈夫さは20歳代までで決まる

最初の懸念は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に対する懸念だ。中高年以降になると骨の主成分が減少し、骨がスカスカになって(この表現が正確かどうかは別にして)些細なことで骨折しやすくなる。骨折をすると、寝たきりになったり、それが原因で認知症になったりしやすくなるので、とりわけ寿命が長い女性にとっては「老後の人生」に多大な悪影響を及ぼす。

若い女性は「それは聞いたことがあるけど、まだ先の話でしょ」と思っているかもしれないが、そうではない! 骨の丈夫さは20歳代で決まるらしいのだ。骨量(骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質)は20歳代でピークを迎える。ピークから先は、年齢を重ねるごとに少しずつ減少し続ける。そして、骨量が一定以下(骨粗鬆症)になると、骨折しやすくなる。

これを防ぐ方法は(主として)2つ。1つは「ピーク時の骨量」をできるだけ高くしておくこと。2つめは「減少速度」をできるだけユックリすること。30代以降に、骨量をピーク時よりも高くすること(増やすこと)は、現代の医学では不可能とされている。

ピーク時の骨量を高くするためには、10代から20代にかけて、骨の原料となるカルシウムやたんぱく質を充分にとり、骨の形成に欠かせないビタミンDをも充分にとる。そして、そのビタミンDがしっかりと作用するためには太陽に当たることが必要なので、日光浴も欠かさないこと。さらには、縄跳びやジョギングなど「重力のかかる運動」をすることも必要になる。

これらのことを、20歳代までに身につけ、なおかつ実践することが重要。しかし、スタイルを気にして必要以上のダイエットの結果、「やせ」の範疇に入ってしまうような食生活は、上にあげたカルシウム・たんぱく質・ビタミンDのいずれもが不足してしまう危険性が高い。先ほども書いたようにあとから取り戻すことはほとんど不可能に近いので、そうなる前に予防=「やせ」にならないような食生活を心がけなければならない。
過度のダイエットは赤ちゃんに悪影響を与える

若い女性の「やせ」に深く関係する2つめの懸念は、次世代つまり胎児への悪影響だ。昔は「小さく産んで大きく育てる」などといわれたこともあったが、近年、さまざまな理由で「出産時の体重がきわめて少ない」未熟児の誕生が増加している。

その原因の1つとして妊娠中の母親の「やせ」があげられている。母親としては「私は太らなくてもいいから(太らないようにしてるけど)お腹の赤ちゃんにだけは栄養がちゃんといってほしい」と願うのだろうが、なかなかそううまく(?)はいかない。もし全体の栄養量が少ない場合には、基本的には、栄養成分は優先的に母親に届く。

縁起でもない話をして恐縮だが、栄養不足のために(仮に)胎児に万が一のことがあっても母親が死ぬようなことは(ほとんど)ない。しかし、その逆に、母親が死ぬようなことがあれば、胎児は(ほとんどの場合)生きながらえることはできない。なので、栄養成分は(母親の思惑とは関係なく)母体のほうに優先的に届く。つまり、妊娠期のダイエットは、胎児の未発達に容易につながってしまう。

また、「やせ」の母親から産まれた子どもは、誕生時には普通の体重であっても、成長するに従って生活習慣病になりやすい、という研究もある【※3】。母親の胎内にいるときに低栄養状態になると、「栄養成分を効果的に摂取し、積極的に蓄えようとする体質」つまり太りやすい体質になるのではないかと推察されている。

自分の極端なダイエットが子どもの将来に悪影響を与える危険性があることを考えて、妊娠中の母親は適正体重を保つことに留意したい。

【※3】https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-06-002.html

太りすぎよりもやせすぎのほうが危険

では、実際には、ビジネスウイメンはどの程度の体重が好ましいのだろうか(美容上ではなく、あくまでも健康上の観点から)。女性と男性ではほんの少し数値が異なるのだが、一般的に寿命との関係でいうと(日本人の場合)BMI=22前後が、最も長生きする、と長い間いわれてきた。そのため、BMI=22を「理想体重」ということもある。

しかし、そのデータにはガンが考慮されていなかったなどの弱点も見つかり、近年では、やや異なる数値が用いられるようになった。その1つに、国立がん研究センター発表した大規模研究がある【※4】。これは、1つの研究ではなく、多くの研究をまとめたものだ(メタアナリシスという)。

対象となっているのは主として40歳以上の男女だが、BMIと寿命との関係では、「22がいい」というワンポイントの指摘ではなく、死亡率が最も低いのは、男性も女性も「BMIが21から27」であると「幅」で示してある。ここで気がついてほしいことは、上限の27という数値。これまでは健康にいいBMIの上限は25であった(糖尿病や高血圧症の学会が推奨するBMIの上限は、今でも25)。
自分のBMIだけは確認しておこう!

さらに、加えてもう1つの新しい注意点として、BMI27よりも上(肥満)の人よりも、BMI21よりも下(やせ)の人のほうが危険率が高いという事実があげられる。とりわけ女性の場合はその傾向がつよい、つまり太りすぎよりもやせすぎに注意するほうがいいということになる。

このデータはかなり信頼度が高いものだが、これを知ったからといってすぐにビジネスウイメンがダイエットを止めるとは考えにくい。ただし、1つだけ確実に実行してほしいことがある。それは、ダイエットをする・しないにかかわわらず、妊娠する可能性がある・ないにかかわらず、将来の骨折を心配する・しないにかかわらず、「自分のBMIだけは知っておいてほしい」ということ。自分の「肥満ややせの程度」を客観的に知らずに、食事制限をしたり偏りを正そうとしたりしても、健康的な結果が得られない。それどころか、逆に大きなリスクを背負ってしまうかもしれない。まずは「知ること」からスタートしよう!

スマホさえあれば簡単に計算できるのでもう一度書いておく。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

【※4】https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/2830.html


引用元:
やせすぎ女性の「健康リスク」とは?(Wedge)