近年、日本女性の間で罹患率が増加している乳がん。検診は20、30代から必要なのでしょうか? 実際にがんが発見されたら、どんな治療をすれば良いですか?順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都文京区)の齊藤光江教授(乳腺科)にお話を伺いました。

痛みで教えてくれるような優しい病気ではない

――乳がんは遺伝によってなることが多い病気なのでしょうか。 がん=遺伝というイメージを持つ方もいるようですが。

がん=遺伝という考えは間違いで、遺伝が原因であることは意外と少ないです。他にもウイルスや、タバコなどいくつか疑われる原因があって、がんの種類ごとに違います。乳がんは遺伝が要因であることが比較的多いと言われますが、それでも1割程度で、他9割はそれ以外の要因からなる病気です。「うちの家系は乳がんの人がいないから大丈夫」というような考えは間違いです。また、胸の痛みで発生を教えてくれるような、優しい病気ではないことも覚えておいてほしいです。自覚症状ではわかりませんから、早期発見のためには検査を受けることが大切になってきます。

――乳がん検診は、若い世代でも受けた方がいいですか?

乳がん検診は40代以上が推奨されていますが、30代でも不安を感じる方や今の胸の状態を知っておきたいという方は、自己投資として1年に1回は超音波検査を含む人間ドックを受けられたらいいと思います。セルフチェックも大切ですね。

ただ、注意しなければいけないことは、若い世代はマンモグラフィー検査を受けても早期発見が難しいということです。

胸の中の母乳をつくる部分である乳腺組織の密度は、年齢によって違います。50歳を過ぎると乳腺組織が減って、脂肪が増えていく。マンモグラフィーでは乳腺組織は白っぽく、脂肪は黒っぽく写ります。がんは白く写るため、脂肪が多く全体が黒っぽく写る胸だと発見しやすいです。

しかし、20代や30代の胸は乳腺組織が多く占めていて、どんなに太っている人でも乳腺に比べて脂肪の比率は少ないため、胸は白く写ります。白く写る胸に、白く写るガンは見つけにくい。白い雪の上に白いお餅を探すようなものです。

すなわち、20代や30代はデンスブレスト(高濃度乳房)という、乳腺組織の密度が特に濃いタイプの方が多いのです。この場合、乳腺全体がほぼ真っ白く写ってしまい、がんがとても見つかりにくいです。

確定的なことは言えませんが、こうした理由から、若い方はマンモグラフィーよりも、超音波検査を受けるのがベターかと思われます。写シコリがあった場合や、がんが疑われるような兆候が出てきた場合は、マンモグラフィー検査も行うことになるでしょう。

40代の場合は、すごく難しいですね。まだ胸は充実しており20代30代とあまり変わらない。しかし、このくらいの年齢からがんが増えてくるので、超音波検査もマンモグラフィーも両方受けることをお勧めしたいと思います。

がんの発見時期には「地域格差」がある

――ガンの早期発見に地域格差があると聞きましたが。

そうですね。がんが発見された時にどの程度進行しているかどうかには、地域格差がかなりあります。当院(=順天堂大学医学部附属順天堂医院)では乳がんでも早期に発見される方が多いです。ここは都心の真ん中にある病院で、周辺でも検査の啓発が進んでいるためだと思われます。会社の人間ドッグや主婦検診で見つかって早期に見つかる方が圧倒的に多く、がん細胞の広がりが小さい「0期」が約20%です。

しかし、同じ系列の病院でも、順天堂大学医学部附属静岡病院(伊豆の国市)では進行がんが多いんです。会社勤めではない方が多い地域では、自分から検査を受ける機会が少ない場合や、啓発が進んでいない場合もあり、がんが進行してから受診するケースが多いのが現状です。検査を受ける機会が少ない方でも、セルフチェックや検査を積極的に活用していただきたいです。


引用元:
「うちの家系は乳がんの人がいないから大丈夫」は本当か(telling,)