来春、第1子が誕生するハリー王子とメーガン妃。発表があった際に注目を浴びたのはベビーの名前や性別だけでなく、母となるメーガン妃の年齢。今回が初産となる妃は現在37歳であるため、彼女の妊孕性(にんようせい)については王子と結婚する前から議論の対象とされてきた。現代では晩婚化が進んでいることもあり、出産年齢は多くの人々が気になる議題だろう。イギリスの国家統計局によれば、初産の平均年齢は28.8歳で、54%の赤ちゃんはお母さんが30歳、もしくはそれ以上の年齢で生まれているという。30歳以上の出産割合が1996年では41%、2006年では48%だったことを踏まえれば、年々増加傾向にあることがわかる。

これらの事実があるにもかかわらず、30代後半で妊娠・子育てをする女性に対していまだにさまざまな誤解が続いている。UK版『ハーパーズ バザー』はこれらの神話を解明するべく、ナショナル・チルドレン・トラスト(NCT 出産育児に関するチャリティ団体)とホスピタルコーポレーション・オブ・アメリカ(HCA 世界最大規模の病院経営会社)の専門家に真相を確認。プロフェッショナルの言葉は次のとおり。

神話1:30代後半に妊娠しようとすると、時間がかかる?

真相:「NICE(英国国立医療技術評価機構)は、40歳未満の女性が避妊をせずに定期的に性交した場合、80%のカップルが1年以内の妊娠を実現していると述べています」とNCTのシニア・ポリシー・アドバイザー、エリザベス・ダフ氏は明言。「この割合は女性が40歳に近づくと、わずかに減少します」

神話2: 妊孕性(にんようせい)が低下するため、30代後半で母親になることは稀である?

真相:「30代後半の女性の妊娠は、実際、一般的にあり得ることです」とNCTのダフ氏。「英国のナショナル・ヘルス・サービス(NHS)の統計によれば、2016-2017に誕生した赤ちゃんの内、17.7%の母親は35〜39歳です」

HCAが経営するリスター・ファティリティ・クリニックの生殖医療の専門家ジェームズ・ニコポウロス医師も、若い時よりも若干時間はかかるかもしれないとした上で、「30代後半で妊娠することは決して珍しいことではありません」と述べている。

神話3:30代後半に妊娠すると、流産する危険性が高まる?

真相:これは事実で、流産の危険性はやや高くなってしまうという。慈善団体Tommy’sによれば、30歳未満の女性では10人に1人が流産してしまうのに対し、35〜39歳の女性では5人に1人が流産してしまうという。

同団体は、4人に1人の女性が生涯の中で流産を経験するとしているが、NHSによれば、(流産した)ほとんどの女性にとって、その経験は一度だけのことで、後に再び妊娠し無事に出産しているという。

神話4:35歳以上で妊娠するのは、体外受精がほとんど?

真相:これは事実ではない。先述の通り、40歳未満であれば80%のカップルは1年以内に自然に妊娠している。ヒトの受精及び胚研究に関する認可庁の最新のデータによれば、2016年に体外受精を行った患者の42%が35歳未満で、35〜37歳が35.23%、38〜39歳と40〜42歳がどちらも14%、43〜44歳が4%。平均35.5歳という結果だった。 

ニコポウロス医師は、自然妊娠が難しいと感じているカップルに対し、30代後半になれば不妊治療の成功率が下がってしまうため、なるべく早く検査と治療を検討すべきだと助言している。

神話5: “老いた”母と見なされてしまう?

真相:サセックス公爵夫人が“高齢の母”に分類されることに関して多くの議論がなされている。明らかに否定的な意味が含まれているため、医師たちの間ではこのような言葉は使われていないと、ニコポウロス医師はコメント。NHSは30代で子供を持つことの可否を述べてはおらず、これは数十年前の考え方だったとみられている。

「妊娠できる可能性が急落し始めてしまう絶対的な“崖の端”などありません」と、ニコポウロス医師。「このことはすべての年齢において、女性の健康と幸福感を考慮して議論されるべきです」

神話6:妊娠中及び出産時に合併症を引き起こす可能性が高くなる?

真相:ダフ氏によれば、30代後半で初めて妊娠する場合、妊娠中及び出産時の合併症のリスクはわずかに増加するという。「糖尿病、子癇前症、高血圧症、流産、そしてダウン症の子供が生まれる可能性が高くなります。しかしながら、30代後半であってもほとんどの女性が元気で健康な赤ちゃんを安全な方法で出産しています」

結局のところ、女性が妊娠・出産する際のリスクは、年齢を重ねるほどその可能性がやや高くなることは事実だが、“一般的”と言えるレベルではない。

毎年、英国で何千もの女性の妊娠と出産、また若くして母になった人たちをサポートしているダフ氏は、「ある程度年を重ねてから親になる人たちにはさまざまな理由があり、財政面や家庭環境が安定するまで待つ人たちもいます。そして30代後半の女性の多くが、元気で健康な赤ちゃんを無事に出産しているのです」と語る。

若いうちに結婚をせず、人生経験を積んでから家族を持つことを考える女性がますます増えている現在。35歳を超えてから初めての出産を経験する母親たちに対し、時に性差別を含むネガティブな意見を言うことは、もう終わりにするべき。その考え方が、時代遅れなのだから。


引用元:
高齢出産にまつわる6つの疑問を大解剖(ハーパーズ バザー・オンライン)