今回のテーマは「自分の栄養状態を知る」。全身の健康状態やコンディション、仕事のパフォーマンス、そして将来の妊娠にも大きな影響を及ぼすのが、栄養不足や偏り。改善のためにはまず、現状を知ることが大切です。近年、どの栄養素をどれだけ取れているか、自分の栄養状態を客観的にチェックできる方法が登場しています。

不調や疲れ、肌トラブル……。女性に多い慢性的な悩みの原因として、栄養不足や偏りの問題が指摘されている。国民健康・栄養調査でも、若い女性のビタミン、ミネラル不足やたんぱく質の摂取量の減少などが浮き彫りになっている。

 偏食や無理なダイエットは栄養状態の悪化を招き、美容や健康面のトラブルにつながり、仕事のパフォーマンスを落とすことも。それだけでなく、将来赤ちゃんが欲しいと思っている人にとっては妊娠や胎児の発育にも影響を及ぼしかねない。

 「でも私は大丈夫。しっかり野菜サラダを食べているし、健康にいいといわれる納豆やヨーグルトやスムージーなども意識して食べている!」。健康を意識して、いいといわれる食品を積極的に食べている女性は多い。でも、量も含めて、本当にあなたの栄養バランスに偏りはないだろうか?

 そこで、今の「自分の栄養状態を知る」方法を探してみた。現状を正しく認識することで、自分の食事の偏りや癖も分かってくる。例として試しやすい順に、栄養チェック3つの方法を挙げる。

●食事記録から栄養チェック

 まずは、スマホアプリを使って食べたものから栄養状態を推定する方法。具体的には、アプリに料理名を入力したり、食べたものの写真をアップしたりすることで、カロリーや栄養素の推定値が自動的に算出、グラフ表示されて、アドバイスが受けられる。

 会員数が250万人を超える日本最大の食事管理アプリ「あすけん」は、ダイエットに定評があるが、実は今の栄養状態を知ることができるサービス。「やせ」に分類されるBMI18.5を下回る目標体重は設定できないようにするなど「『痩せればいい』ではなく、必要な栄養素がバランスよく取れることを前提にプログラムを設計しています」と話すのは、あすけんの管理栄養士・道江美貴子さん。

 無料版アプリの場合、食べたメニュー名を登録するだけで、一日の終わりに一日に取ったカロリーや栄養価の過不足がグラフ化される。その結果に基づいて、栄養バランスを整えるためのお薦めの食事内容や食材などのアドバイスがもらえる。メニュー名の登録は複数の候補からワンクリックで選択できる。

 推定値とはいえ、登録内容から栄養価を算定するこのシステムの精度は高く、1品1品栄養士が計算して出した数値と比べて遜色がないという研究結果もある(データ:Nutrients 2017, 9, 1058; doi:10.3390/nu9101058)。

 月額300円(税込)のプレミアム会員になると、食事の画像解析機能が使え、食事写真を撮るだけで何を食べたか登録できる。また、1日単位ではなく食事ごとに栄養状態が分かり、アドバイスももらえる。「昼に食べ過ぎたから、夜は控えめにしよう」など、1日の中で食事内容を調整できるのがメリットだ。スタンダードな「基本コース」と、特に糖質の取り過ぎが気になる人向けの「ゆる糖質制限コース」があり、目的に合わせて選択できる。無料版、有料版とも体重や体脂肪、月経の記録もでき、グラフで推移が分かる。

◆アプリで分かる項目(基本コース)
 エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、カルシウム、鉄、ビタミンA、E、B1、B2、C、食物繊維、飽和脂肪酸、塩分。※葉酸、ビタミンD、亜鉛は含まれていない。

●体験しました!(基本コース、有料版)

・有料版ではスマホで撮ったメニューを自動判別、そのまま登録できる。自動判別のメニュー結果が違っている場合は手動でメニュー名を修正する。

・一食ごとに、エネルギーと13の栄養素についてグラフ表示され、過不足が一目で分かる。

・一食ごとに栄養評価と、次の食事で何に気を付けたらいいか、どんなものを食べたらいいかなどのアドバイスが表示されるので、おやつで不足分の栄養補給をしたり、夕食に1品足したりと、すぐに行動に結び付けられた。

●妊活・妊娠に特化した無料の栄養チェックアプリも!

 葉酸、カルシウム、鉄、マグネシウム、ビタミンD、Cという、妊娠出産に重要とされる6つの栄養素をカバーした無料アプリが登場している。妊活・妊娠便利ツール「エレビット 栄養バランスチェック」は、食事をスマホで撮影、画像登録するだけで、その食事から取れた栄養の過不足がレーダーチャートの形で示され、バランスが一目で分かる。会員登録は不要。

URL:https://www.elevit.jp/tools/select.php

●自宅尿検査で栄養チェック

 尿を送ることで体に吸収された栄養素を推定する検査も登場している。

 「どんなに食べ物に気を付けても、体質などによって栄養の吸収代謝や貯蔵能力には個人差があります。より実態に近い栄養状態、つまり体内で何の栄養素がどれだけ使われたかを知る方法として、食べる=入口ではなく『出口』に着目しました」と話すのは、2017年に世界初となる、自宅でできる尿検査キット「VitaNote(ビタノート)」を発売したユカシカドの広報担当、石田幸輔さん。

 「VitaNote」は滋賀県立大学との共同研究で開発。食事として体内に入った栄養素が消化吸収される過程で代謝された成分が、尿から排出される。VitaNoteは代謝物などから体内に吸収された栄養素の種類や量を推算する。方法は簡単で、一般の健康診断と同じ要領で、朝一番の尿を採って郵送するだけ。針を刺すこともなく、医療機関に行く必要もない。

 検査項目はたんぱく質、水溶性ビタミン7種、ミネラル6種、酸化ストレス度の計15種類※。年齢や体格等のプロフィールを考慮し、最新の「日本人の食事摂取基準」と照らし合わせて過不足を判定する。結果は改善アドバイスとともにWEB上のユーザ専用ページに表示される。

 持病があっても妊娠中でもOK。「対象年齢が1歳からなので、家族全員で使ったり、成長期の子どもの栄養把握に使っていたりするお母さんもいます」(石田さん)。アドバイスを参考に食事を変えたら3カ月〜半年で栄養状態が良くなったという利用者からの声も多い。一定期間ごとに改善状況をチェックできる定期購入システムもある。

◆検査で分かる項目
 たんぱく質、ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、モリブデン、酸化ストレス度の15項目。
※脂溶性ビタミン(A、D、E、K)、鉄、亜鉛は含まれていない。

・VitaNote 7500円(税抜)。ネット通販をはじめ、一部ドラッグストア、スポーツジムなどでも販売。複数回割引のコースもある

・ネットで注文すると届くキットには、採尿専用の容器や封筒が入っている。キットに記載された検査IDを、ネットでユーザ登録し、マイページを作成。身長、体重、生活習慣に関する簡単な質問に答える。所要時間5分程度。朝一番の尿を採り、専用容器に入れて郵送。3週間ほどで、マイページに検査結果が表示された。

・バランスチャートや栄養素別の摂取量グラフ、アドバイスがマイページで見られる。グラフが円に近くなるのが理想。希望者には不足栄養素をパッキングしたテーラーメイドサプリの提供(7500円・税抜/45包)も。

●血液検査で分かる栄養チェック

 3つ目の栄養チェック法は、医療機関で血液を分析することで栄養状態を判定する検査だ。

 血液は体の細胞に酸素と栄養素を運んでいる。だからその内容を調べれば、腸から吸収された栄養の状態が分かる。米国ではオーソモレキュラー(分子整合栄養学)と呼ばれ、医療への応用が進んでいるが、日本でも近年、こうした考えに基づいて、実際に血液の中に含まれる成分から栄養状態を読み取る検査を行うクリニックが増えてきている。

 ナチュラルアート クリニック(東京都千代田区)では、三大栄養素と各種ビタミン、ミネラル※の過不足を少量の採血(15cc〜)で判定し、栄養アドバイスを行っている。「血液中にはさまざまな酵素や代謝物が含まれている。これらの相関関係やバランスから栄養状態を読み解く」と院長の御川安仁さん。「単純に、血液中に溶けている栄養素を調べるだけではない」という。

 検査結果には、過去数カ月程度の栄養状態が反映されるという。「食べてはいても消化吸収が不十分とか、体内で効率よく使われていないなどの、慢性的な栄養問題も分かる」(御川さん)。貧血や自律神経のバランス、疲労の度合い、アレルギーについての情報も得られる。

 20〜30代女性が受診する場合、倦怠(けんたい)感や抑うつ、不眠など心身の不調が理由として目立つが、妊活目的の人もいるという。「不調があって受診しても他院ではこれといった異常値や病気が見つからず、途方に暮れて来る方が多い。血液を分子整合栄養学的に解析して初めて、栄養に問題があると分かるケースがほとんど」(御川さん)。

 同クリニックでは検査結果をもとに、基本的には食生活をはじめとする生活習慣を軸に改善策を立てる。深刻な栄養不足の場合はサプリも検討されるが、食事に気を付ければ多くの場合1〜3カ月程度で栄養バランスが整い、症状も改善に向かうという。

◆「最小セット」の検査で分かる項目
 血糖値、たんぱく質、脂質・コレステロール関連、ビタミンB6、B3(いずれも間接値)、ビタミン12、葉酸、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、鉄、貯蔵鉄(フェリチン)など。
※最小セットには、ビタミンDは含まれていない。「標準セット」では項目数が増える。

・医師の診察後、調べる項目数に応じ15cc〜40cc程度の採血が行われる。

・結果は1週間程度で分かり、再診時に医師から直接説明を受ける。生活面で気を付けるポイント、意識して取るべき栄養素の優先順位などのアドバイスがもらえた。遠方などで来院が難しい場合、同院では応相談で看護師による遠隔採血訪問や、医師の解説を付けた郵送対応も行っている。

・最小セットの検査項目は66。数値そのままだけで判断するのではなく、各数値の相関から、医師が栄養状態を読み解いて解説してくれる。

◆費用など
 栄養検査は自由診療で、ナチュラルアート クリニックの場合、検査費1万4000円(最小セット)、3万5000円(標準セット)。これ以外に、初診登録料3000円、診察料5000円(15分ごと)がかかる。費用はすべて税抜。

血液による栄養検査を行っている医療機関は、HPなどで「栄養療法」「オーソモレキュラー」をうたっているところを目安に問い合わせを。

文/渡邉真由美 取材協力/あすけん、ユカシカド、ナチュラルアート クリニック(東京・四ツ谷)

■ヘルシー・マザリング・プロジェクトとは
将来、赤ちゃんが欲しいと思っている人に、「転ばぬ先の杖」として知っておいてほしい大切な情報を伝え、若い女性の栄養問題など、現状の問題点を解決する方法を提案していくプロジェクトです。


引用元:
栄養は足りている?「私は大丈夫」思い込みをチェック 「今の栄養状態」が分かるチェック法(日経ウーマンオンライン)