スマートフォンやタブレット端末で使える電子母子健康手帳の普及が進んでいる。予防接種や定期検診のタイミングを通知してくれたり、健康診断のデータなど発育状況を家族で共有できたりと、紙の手帳にはない便利な機能で、子育て支援につながっている。データ保護の観点からも利点があり、導入する自治体が増えている。(玉崎栄次)

予防接種日程を通知

 「予防接種が頻繁にあるので、管理に手間がかかっていたが、通知を受けるととても楽になった」

 1月に女児を出産した女性会社員(39)=神奈川県鎌倉市=はスマホで電子母子手帳を利用している。今月、育児休業から復職したばかりだ。アプリは鎌倉市と連携しており、保育園入園の申込期間などを通知してくれるため、入園を狙う「保活」にも役立ったという。

 女性が利用しているのは、健康情報サイトなどを運営するエムティーアイが開発した母子手帳アプリ「母子モ」。出産予定日や出生日を入力すると、予防接種や定期検診が事前に通知され、受け忘れを防げる。またアルバム機能もあり、成長を写真で記録し、夫婦や家族で共有できる。

自然災害に強み

 電子母子手帳は、紙の手帳を補完する道具だ。

 例えば現在、風疹が流行しているが、自身が子供の頃に予防接種を受けたかどうか確認しようとしても、親も記憶が定かでなく、母子手帳もなくなっているというケースは珍しくない。予防接種などの記録が電子化されていると、データはサーバー上に保管されているため、端末があれば確認することもできる。

 同社電子母子手帳サービス部長の帆足(ほあし)和広さんは「自然災害などで紙の手帳を紛失しても、情報を呼び出すこともできる。その点に注目する自治体も多い」と説明する。「母子モ」はこれまでに全国の150市区町村(11月9日時点)が導入を決めている。

 帆足さんは「母子手帳の電子化により、子育て世帯の育児負担を減らすことができれば、地域の医師や保健師らの多忙感軽減にもつなげられる。その分を、より育児に課題を抱えている世帯に振り向けることもできるようになる」と語る。

疫学調査に貢献

 NTTドコモが開発した「母子健康手帳アプリ」も利用が広がっている。9日時点で70市区町村が導入。今年度中に計150自治体に増やしたい考えだ。

 このアプリも、自治体が発行する紙の手帳との併用で健診結果や予防接種、成長グラフ、写真などを記録。妊娠から出産、成人までの成長を管理できる。

 こうしたアプリの普及で母子手帳の情報が電子化されることで、今後、活用の幅がより広がる可能性がある。

 同社ヘルスケアビジネス担当課長の西口孝広さんは、「個人情報の慎重な取り扱いが前提となる」と留意点を挙げた上で、「個々のデータを蓄積し、それを疫学的に分析することで、子供の成長に応じたより適切なヘルスケアの態勢を整えることにつなげられる」と指摘している。

 子供が病院にかかる際、国は母子健康手帳の提示を推奨しているが、常に見せる母親は約4割にとどまることが、製薬会社「ファイザー」の調査で分かった。手帳を提示する母親ほど子供に予防接種を受けさせる傾向が強いことが判明した。

 調査は、1歳から5歳の子供を持つ母親1万726人を対象に実施。母子健康手帳を「いつも見せている」と回答した母親は44・1%だった。常に見せていない母親の91・9%が「病院で見せてほしいといわれないから」と答えている。

 さらに、2歳から5歳の子供を持ち、ワクチンの接種スケジュールを守れているとした母親に、代表的なワクチンの1つである肺炎球菌ワクチンの追加接種を受けさせたかを聞いた。手帳を見せている母親の追加接種実施率94%。一方、手帳を見せていない母親は86%と比較的低かった。

引用元:
普及進む「電子母子手帳」 スマホで育児負担を軽減(産経新聞)