光市虹ヶ浜の梅田病院に勤務する現役の助産師・長安幸子さん(下松市)が、14日で90歳を迎える。出産の現場に立ち会うようになって約60年。取り上げた赤ちゃんは2万人近くに上る。長安さんは「元気な産声を聞けることが幸せ。体が動くうちは、若い人たちと一緒に仕事を続けていきたい」と笑顔で話す。




 白衣の天使に憧れ、18歳の時に看護師となって、2年後、助産師の資格を取得した。市内の診療所や開業医などで勤務し、1959年から産婦人科、小児科がある梅田病院で働き、お産に立ち会ってきた。

 62歳までは、妊婦がいつ陣痛がきても駆けつけられるように病院の寮で暮らした。親子3代にわたって、長安さんにお産の世話を受けた人もいるという。現在も名誉師長として週4日の勤務を続けている。

 同病院の吉村文子師長(39)は、新人の頃から長安さんに指導を受け、今でも公私問わず相談に乗ってもらう。「長安さんの『大丈夫いね』は魔法の言葉。子育てや仕事の不安が和らぎ、多くの人を勇気づけている」と語る。

 助産師の仕事は、出産時に赤ちゃんを取り上げるほかにも、不安を抱える妊婦や新米ママに親身になって寄り添ったり、母乳の出にくい母親のケアをしたりと多岐にわたる。長安さんがマッサージを施すと母乳が出るようになった場面を、吉村師長は何度も見てきた。「長安さんの母子への愛情の深さが好影響を及ぼすのでしょう」と推察する。

 最近はお産に立ち会うよりも、長年の経験を生かして育児相談や母乳マッサージに関わる機会が多くなった長安さん。「体力的には若い人のようにはいかない」と苦笑いするが、自身も健康体操を行うなど体に気をつけている。

 元気の源は「母親からお乳をもらう赤ちゃんのほほ笑ましい姿を見ること」。まだまだ現役。これからも笑顔を心がけ、母子を支え続ける。


引用元:
90歳助産師まだまだ現役(読売新聞)