地方の病院で医師不足が深刻化する中、子育て中の女性医師らが、急な残業や出張、買い物の時に託児や送迎を頼める宮崎県医師会の保育支援サービスが好評だ。担い手は地域の子育て経験者たち。女性医師は出産、育児と研修などの時期が重なることが多く、離職せざるを得ないケースも少なくない。県医師会は女性医師が職場に長く定着できる環境づくりが医師不足解消の鍵を握るとみて、サービスの充実を図る。

対象は生後6カ月〜12歳の子どもがいる宮崎市内の女性医師。支援する「保育サポーター」は子育て経験豊富な高齢者が多い。利用料は一時預かりが1時間当たり600〜800円、宿泊は1泊1万円で全額がサポーターの収入となる。支援態勢が整った東京女子医科大を参考に2015年12月に県医師会が事業を開始。運営はNPO法人みやざき子ども文化センターに委託し、男性医師からの相談も受け付けている。
「取り組みが広がれば、女性医師が地方で働きやすくなるのでは」

 外科医の夫と同市内で開業した内科医の中島紫織さん(44)は初年度から利用し、小5の長男(10)と保育園児の次男(4)、三男(2)を登録している。最新の治療技術や知識を学ぶ勉強会は勤務後の夜間。専門医資格を維持するため東京などである学会に出席しなければならないことも多い。中島さんは「夫も忙しいので非常に助かる。こうした取り組みが広がれば、女性医師が地方で働きやすくなるのでは」と話す。

 登録した医師は初年度が18人で18年度は45人。利用件数は初年度6件、17年度で93件と右肩上がり。利用経験がない女性医師からも「いざというときに誰かが助けてくれると思うだけで安心して働ける」という声が寄せられているという。

 保育サポーターには市内や近郊の約25人が登録。昨年登録した同市佐土原町の宮尾光二さん(71)と妻とみ枝さん(68)は3人の子を育てた。5歳の孫は米国に住んでおり「孫にはなかなか会えないけど宮崎の子どもさんたちから元気をもらって楽しんでいます」と笑う。5年前に光二さんは舌がん、とみ枝さんは子宮体がんとそれぞれ診断され手術を受けた。「医療、お医者さんの大切さが身に染みて分かった」と話す。

 日本の医師全体に占める女性の割合は16年末で21・1%。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均は44・8%(15年時点)で、データのある国で日本は最下位。宮崎県の女性医師の割合は16年末で18・0%にとどまるが、20代は40・4%、30代では33・3%、40代で22・7%となっている。県医師会の荒木早苗常任理事は「女性医師も男性医師も仕事と子育てが両立できるような仕組みを充実させることで医療の担い手を確保し、地域医療を充実させたい」と話している。

引用元:
ママ医者支えるサービス好評 地域の高齢者らが託児、送迎…医師不足解消の鍵に(西日本新聞)