オスのマウス2匹の精子の遺伝情報を元に、子どものマウスを誕生させることに、中国科学院のチームが成功した。自然界にはメスだけで子孫を残す例は多いが、オスだけの例は無い。近い将来のヒトへの応用は難しいが、発生の仕組みの解明につながる一方、生命倫理の面から議論を呼ぶ可能性がある。11日付の米科学誌「セル・ステムセル」(電子版)に掲載された。

 オスに関係なく子どもを作ることは昆虫や魚類などで知られる。しかし哺乳類では自然な生殖にはオス(精子)とメス(卵子)が欠かせない。精子も卵子も性に関わる一部を除いて、基本的に同じ遺伝子がそろっているが、精子や卵子ができる過程で、働き方が変わり、両方がそろわないと発育が進まない。

 研究チームは、オスのマウスの精子からES細胞(胚〈はい〉性幹細胞)を作り、狙った遺伝子を改変できるゲノム編集を使って7カ所の遺伝子を取り除き、卵子に似せるよう細工した。

 そしてほかのオスからとった精子とともに、メスの遺伝情報の入った核を取り除いた卵子のもとになる細胞に注入し、「代理母」となるマウスのメスに移植した。すると、オス2匹の遺伝情報しか持たない子が誕生した。ただ48時間で死んでしまったという。


引用元:
オスだけで子どものマウス誕生 ゲノム編集で中国科学院(朝日新聞)