現在、妊娠を心待ちにしている夫婦の10〜15%ほどが不妊症といわれています。それらの不妊の半数以上が、男性側に原因がある(男性不妊)という報告もあります。今回、中国の研究者たちが一般男性の精液の質とうつ病、運動量の関係を調べたところ、うつ病のある男性や、全く運動せずに暮らしている男性は、精子の濃度や精子の総数が低下していることが分かりました。

■大学生587人を調査

 近年、世界的に精液中の精子の数の減少が指摘されていますが、原因は明らかではありません。中国人民解放軍第三軍医大学のPeng Zou氏らは、以前行った研究で、男性の行動面、心理面と精液の質の低下の間に関係があること、また、日常的な運動が精液の量と精子の形態に好ましい影響を及ぼすことを示しています。しかし、うつ病や運動量と精液の質との関係については、議論が続いていました。

 そこでZou氏らは、中国の重慶に住む18歳以上の男子大学生587人を対象に、精液の質とうつ病、運動量の関係を調べることにしました。

 参加者たちは、年齢や出生地、病歴、生活習慣(喫煙、飲酒、お茶やコーヒーなどの摂取量、1日に座っている時間など)などの調査に加え、抑うつ状態の程度を自己評価する調査(自己評価式抑うつ尺度;SDS)、身体活動に関する調査、精液検査、血液検査を受けました。

 SDSは20項目からなり、25〜100のスコア範囲のうち、53以上であれば臨床的なうつの可能性がある「うつ病グループ」としました。身体活動に関する調査では、過去半年間に定期的に運動していたかどうかを尋ね、「はい」と回答した人には、1週間の運動の頻度と、1回当たりの平均時間を尋ねて、1週間当たりの総運動時間を算出。1週間の総運動時間が0分だった人々を「運動なしグループ」、それ以外を「運動ありグループ」としました。

 精液検査では、精液の容積、精子の濃度、総精子数、精子運動率、精子正常形態率を調べました。血液検査では、生殖に関係するホルモン(テストステロン、エストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、プロラクチン)の量を測定しました。

■うつ病グループでは精子の総数と濃度が約2割少ない

 うつ病グループに分類された男性は63人(10.7%)でした。うつ病グループは、非うつ病グループに比べ不活発な人の割合が高くなっていました。うつ病グループの精子の濃度は、非うつ病グループよりも低く、平均値はそれぞれ66.9 ×106個/mLと72.6 ×106個/mLでした。精子の総数も241.6 ×106個と257.0 ×106個で、統計学的に意味のある(有意な)差が認められました。

 運動なしグループに分類された男性は99人(16.9%)でした。運動なしグループのSDSスコアは、運動ありグループより高くなっていました。運動なしグループの精子の総数は204.4 ×106個と、運動ありグループの265.8 ×106個に比べ、有意に少なくなっていました。

 精液の質に影響を及ぼす可能性のあるさまざまな要因を考慮して分析した結果、うつ病グループでは、非うつ病グループに比べ、精子の濃度が18.9%低く、精子の総数は21.8%少なく、運動なしグループの精子の総数は、運動ありグループに比べ23%少なくなっていました。

 なお、著者らは、うつ病と運動不足のそれぞれが精液の質低下に関係しているだけでなく、それら両方の因子を持つ男性の精液の質が最も低いことも明らかにしています。一方で、うつ病、運動量と、生殖にかかわるホルモンの濃度の間には意味のある関係は見られませんでした。



引用元:
うつ病や運動不足の男性 精子の数が減少(日本経済新聞)