初産を迎える妊産婦が産婦人科医から小児科医を紹介され、育児相談やワクチン接種の指導などを無料で受けられる北九州市の単独事業の利用者が、制度開始の2016年10月から今年7月末までで約1200人となった。市子育て支援課は「産婦人科医から適切に事業の紹介が行われるようになり、利用者が増えている」としている。

 「赤ちゃんが泣いて困っていませんか。無理に頑張らず、少し距離を置いて観察することも大事です」。今月上旬、よしだ小児科医院(小倉北区)の吉田雄司院長は生後1カ月超の乳児を連れた会社員、古藤賢さん(27)と妻悠可さん(27)にこう語りかけていた。

 古藤さん夫婦は、吉田医師の評判も聞きつけ、出産した産婦人科から紹介状を出してもらい相談に訪れた。

 吉田院長は、湿疹が出ている現状や寝かし方、ミルクの適量、ワクチンの効率的な接種方法などについて30分ほど説明。緊急時に電話で相談を受け付けられることも伝えると、夫婦は「今後はかかりつけ医になってもらいたい」と話し、病院を後にした。

同事業はペリネイタルビジット(出産前後小児保健指導)と呼ばれ、市内で暮らす妊娠28週から産後2カ月の妊産婦が対象。出産前後に信頼できる小児科医をつなぎ、安心して市内で子育てしてもらう狙いだ。

 登録する24の産婦人科から、小児科医(登録数57)の紹介を受ける。06年に小倉小児科医会などが先行して始め、16年から公的事業に移った。政令市でも実施しているところは少なく、本年度の予算額は1千万円。

 国立成育医療研究センターなどが、15、16年の妊産婦の死亡理由で、自殺が最多だったと発表したばかり。産後うつなどが主な原因とみられ、市子育て支援課は「悩みを抱えないようにこの事業を活用してほしい」と強調する。

 濱口産婦人科クリニック(小倉北区)の濱口欣也院長は「米国では、出生前から小児科医を決めるのは一般的。ほかの子育て支援事業との連携をさらに充実させたい」と話している。

引用元:
子育て支援 産科医が小児科医を紹介 初産妊産婦に好評 (西日本新聞)