今夏(2018年夏)には、例年に比べて風疹の届け出数が増加している。特に30−50歳代の男性で多く、任意の予防接種を受けることが期待される。また、妊婦が風疹に感染した場合、児に先天性風疹症候群(白内障、難聴、心疾患など)が出現する恐れがあるため、感染防止に努める必要がある―。

 厚生労働省は8月14日に、通知「風しんの届出数の増加に伴う注意喚起について(協力依頼)」を発出し、こうした点に留意するよう関係者に呼びかけました(厚労省のサイトはこちら)。また、日本産科婦人科医会も、この通知を受け緊急警告を発しています(医会のサイトはこちら)。

30−50代の男性で感染者が増加、予防接種の検討を

 風疹は、▼発熱▼発疹▼リンパ節腫脹—を特徴とするウイルス性発疹症です。くしゃみ、咳、唾液のしぶきなどの飛まつによって感染するほか、インフルエンザのように接触によっても感染します、感染から14−21日の潜伏期間を経て、▼発熱▼耳介後部、後頭部などの首の後ろのリンパ節腫脹▼全身の発疹(淡紅色の小紅斑や小丘疹を呈する)▼眼球結膜の充血—などの初期症状が現れます(ただし15−30%の患者では症状が現れないこともある)。

 こうした症状が出そろった時期に、最も感染力が強くなりますが、その前後(発疹出現の1週間前から、症状が消えるまで)でも感染が起こり、また症状が現れなくても感染力を持っています。

今夏(2018年夏)には風疹の届け出が例年より多く、「関東地方で多い」「30−50歳代の男性で多い」という特徴があります。

厚労省は、さらなる感染拡大を防ぐために、次の3点を呼びかけています。

(1)発熱・発疹を呈する患者を診察した際は、▼最近の海外渡航歴・国内旅行歴を聴取する▼風疹の罹患歴・予防接種歴を確認する―など、風疹感染を意識した診療を行う
(2)30−50歳代の男性のうち、「明らかに風疹に罹患したことがある」「風疹の予防接種を受けたことがある」「風疹に対する抗体が陽性である」と確認できた人以外には、任意で予防接種を受けることを検討してもらう
(3)妊婦への感染を防止するため、特に▼妊婦の夫、子ども、その他の同居家族▼10歳代後半から40代の女性(特に妊娠希望者、妊娠可能性の高い者)のうち、「明らかに風疹に罹患したことがある」「風疹の予防接種を受けたことがある」「風疹に対する抗体が陽性である」と確認できた人以外には、任意で予防接種を受けることを検討してもらう

  
日本産科婦人科医会でも、妊婦が風疹に感染した場合、児に先天性風疹症候群(白内障、難聴、心疾患など)が出現する恐れがあるため、まずかかりつけ医に相談の上、次のような感染防止策をとるよう警告しています。

▽周囲の風疹罹患者からうつされないように注意する

▽速やかに風疹の抗体検査を受け、免疫の有無を確認する(成人女性、夫、パートナー等を対象とした風疹抗体検査の費用助成事業があるため、自治体に確認してください)

▽妊娠中は風疹を含むワクチンの接種を受けることができない。したがって風疹に対する抗体価が陰性、あるいは低い場合には、「人混みを避ける」とともに、家族や職場の同僚など周囲の人に罹患歴・予防接種歴を確認してもらう(風疹罹患歴がなく、1歳以上で2回の予防接種記録がない人が周囲にいた場合は、急ぎ【麻疹風疹=MR】ワクチンの接種を受けてもらうよう依頼する

▽職場での風疹患者発生時の情報共有をしてもらう(成人の多くは軽微な症状の場合、継続して出勤している)

▽産業医、保健師等など職場の健康管理者は、風疹の疑いのある職員を診た場合には、出勤を控え、風疹患者と妊婦とが決して接触しないよう厳重な管理、注意周知を行う


引用元:
風疹大流行の兆し、妊婦への感染防止のため周囲の関係者は予防接種の検討を―厚労省、日本産科婦人科医会(メディ・ウォッチ)