2017年には6千人に迫るまで年間報告数が急増してきた、性感染症の梅毒。急増以前は、その患者の多くは男性だった。しかし、増加が始まった11年以降は女性、それも若い女性に広がってきた。梅毒に合併しやすいといわれるHIVにも注意が必要になってきた。梅毒が若い女性に増えてきた背景やHIVとの関係について、性感染症の専門医に聞いた。
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「全国の梅毒報告数の約3分の1を占める東京都の場合、報告数が最も多いのは30代の男性です。30代以上は男性のほうが明らかに多いのですが、20代では女性のほうが上回っています。2011年には11人だったのが、17年には305人にまで増えています」
東京都内で診療している、プライベートケアクリニック東京・院長の尾上泰彦医師は、17年のデータを示しながらこのように指摘する。ちなみに、数は少ないが10代でも、男性7人に対して女性は24人で上回っている。こうした「若い女性」を中心にした梅毒患者急増の背景を尾上医師は次のようにみている。
「かつては、感染経路が男性同性間の性交渉がほとんどとみられ、限られた人たちの間の感染症であり、報告数はほぼ一定でした。そこに、誰でも可能性がある加わったことで報告数が急増してきました。なぜ異性間性交渉、そして若い女性に広がったのか。正確な疫学調査は不可能ですが、今のところ、オーラルセックスなどの性行動の多様化、SNSなどの普及により複数の人と性交渉する人の増加、日本の風俗店を利用する梅毒流行国からの観光客の増加など、いくつかの要因が重なった結果との見方が多いようです」
若い女性の梅毒で危惧されるのが、妊婦が感染した場合の胎児への影響である。流産や死産のほか、赤ちゃんの目や耳、肝臓などに障害が出る先天梅毒になる恐れもあるからだ。尾上医師によると、梅毒に感染した母親から胎児への感染リスクは60〜80%、妊婦が無治療の場合には、40%の子が死産または出生後まもなく死亡する可能性があるとされている。12年の全国の報告数は妊婦梅毒3人、先天梅毒4人だったが、16年にはそれぞれ33人、14人にまで増加している。
梅毒の増加に伴い尾上医師が警戒しているのは、妊婦梅毒・先天梅毒のほかにはHIVである。
「何らかの性感染症にかかっているケースでは、性的な接触が頻回にあることが多く、ほかの性感染症にもかかっている可能性が高いといえます。梅毒の場合、梅毒トレポネーマによるしこりや発疹などの皮膚症状で皮膚のバリア機能が損なわれて、ほかの性感染症にもかかりやすい状態であり、男性の同性間性交渉による患者が多いHIVを合併することが多いとみられています」
HIVはかつては「死の病」として恐れられたが、現在は強力な抗HIV療法が普及しており、毎日、抗HIV薬を服用すれば、ほぼ100%進行を抑えられ、HIVではない人とほぼ同程度の寿命が得られるようになっている。いわば、生活習慣病と同じような慢性病の一つになってきた。これらの梅毒周辺の感染症を確実に防ぐために、尾上医師は「不特定多数との性的接触をしない」「コンドームの適正な使用」などとともに、疑わしいときは積極的に検査を受けることをすすめる。
「梅毒は、感染の機会から約3(〜6)週間後が検査の目安になります。HIVは感染の機会から2カ月以降に検査を受けるのが原則ですが、2週間以降で可能な検査もあります。まず、保健所や医療機関などに相談するとよいでしょう」
引用元:
「梅毒」が若い女性に増加 妊婦が感染すると胎児にも影響し40%の子が死亡も(アエラドット 朝日新聞出版)